最近ダラ観したDVDやらBlu-rayやら

■ジュピター (監督:ラリー・ウォシャウスキー、アンディー・ウォシャウスキー 2015年アメリカ映画)

これなあ、プロダクション・デザインの段階では結構悪くなかったんだと思うけど映像化した段階で徹底的に安っぽくなっちゃったんだろうなあ。『クラウド・アトラス』も相当作り物臭さが濃厚で辟易したが、監督のウォシャウスキー姉弟はこの辺のセンスが全く枯渇したとしか思えないな。少なくとも現代VFXの知識に乏しいんじゃないのか。お話もヤングアダルト路線の陳腐なもので、そしてなにより登場人物の顔がみんな下品。

プリデスティネーション (監督:マイケル・スピエリッグ 2014年オーストラリア映画)

タイムパラドックスSFとして思いつけるアイディアを徹底的に出し尽くしました!といっていいぐらいに練り込みまくった驚愕のタイムパラドックスSF。R.A.ハインラインの原作短編『輪廻の蛇』は1958年執筆という実に60年近く前の作品だが、作品として優れているとはいえ、これを今映画化しようとした製作者側の英断にも頭が下がる。完成度からもうかがえるように、これもひとえに原作に対する愛情や敬意があるからなんだと思う。

■ザ・デッド:インディア (監督: ハワード・J・フォード、ジョン・フォード 2013年イギリス映画)

今度はインドでゾンビだぜ!という『ゾンビ大陸アフリカン』続編作品。でもアフリカもインドも「荒野にゾンビ」という絵づらは変わんなくて、最初「あれ?間違って1作目また借りちゃった?」などと思ってしまった。内容も「まったり徒然ゾンビ紀行」という部分は一緒で、これ2作目作る意味があったのか?とも思ったが、実を言うとこの徒然ぶりは意外と悪くない。また、前作が軍人が主人公だったのが今作は一般人という部分で展開の違いはある。

ワイルド・スピード SKY MISSION (監督:ジェームズ・ワン 2015年アメリカ映画)

まあ、もともと大味なシリーズなんだが、派手になればなるほどその大味さもさらに際立つ、という内容のお話でした。なんといいますか、赤看板の居酒屋チェーン店で1000円で発泡酒飲み放題!冷凍食品食い放題!とか出されても、いや別に腹いっぱいとかいらないしその倍出してもいいからちゃんとしたもの飲み食いさせてよ、といった気分だな。

博士と彼女のセオリー (監督:ジェームズ・マーシュ 2014年イギリス映画)

スティーブン・ホーキング博士の半生を描く!と言うことで、難病を発症しつつも不撓不屈の精神で最新宇宙理論を生み出していく、という展開はほうほう言いながら観ていたのだが、途中からどうにも赤裸々な夫婦のシモを巡る生臭い話になってゆき、「なんじゃこりゃ!?」と思ってたらこの作品、博士の離婚した元嫁の本が原作なのね…。まあそれがリアリズムっていわれたらその通りなんだが、そうじゃなくて博士の知性のひらめきの根本にあるものとかそういうのを観たかったんだけどな。宇宙理論的なイメージ映像も挟まれることは挟まれるが、雰囲気止まりで物足りないんだよな。

■ナイトミュージアム/エジプト王の秘密 (監督:ショーン・レヴィ 2014年アメリカ映画)

『ナイトミュージアム』の続編かあ、と思ったら、これってシリーズ3作目だったんだね…2作目観たっけ…。どちらにしろ舞台をアメリカのスミソニアン博物館から大英博物館に移した、というのが非常に成功していて楽しむことができた。まあ毒にも薬にもならないファミリームービーなんだが、こういうのもたまにはいいではないか。

メイズ・ランナー (監督:ウェス・ボール 2014年アメリカ映画)

ヤングアダルト作品原作だけあって10代の男の子だけが中心の世界が描かれてて、ああ、この迷宮の中の居留地って10代の閉塞感とモラトリアムを描いたものなんだね、と分析した段階で全てが終わってしまう物語ではある。しかし血気盛んな男の子だけで何年間も閉鎖的なコロニーに住むのって性処理はどうなってたんだろうか…とシモのほうばかり考えてしまった。

■殺し屋チャーリーと6人の悪党 (監督:クリフ・ステンダース 2014年アメリカ/オーストラリア映画)

殺し屋チャーリーと6人の悪党 [DVD]

殺し屋チャーリーと6人の悪党 [DVD]

サイモン・ペッグ主演のブラック・コメディ風味なクライム・ストーリー。そこそこ練られた脚本とはいえ、やはりサイモン・ペッグが出ていなければ興味はわかなかっただろうし、サイモン・ペッグが出ていなければそんなに楽しむことはなかっただろうな…と思わせるレベルではある。

龍三と七人の子分たち (監督:北野武 2014年日本映画)

龍三と七人の子分たち』観たがすいませんちょっとナメてました。俳優とシナリオが素晴らしい。ギャグが殆どすべらない。老人が主人公のドラマはヨーロッパ映画にすら思える。暴力だけが見せ場ではない北野映画として、これはひょっとしたら最高傑作かもしれない。この作品はアメリカやヨーロッパでリメイクしても違和感がない。過去の栄光にすがる老人たちが一花咲かせる物語として成熟しさらに老成した社会ならではのペーソスを生み出せる。ただしアメリカなら最後はウェットになるだろうしヨーロッパならもっとスラップスティックになるだろう。そしてペーソスだけで押し通すのかと思わせた。クライマックスで北野映画らしくとんでもなく狂ってくれる。この意表の付き方がいい、そしてまたもや笑わせるのだ。クライマックスのあのカーチェイスは、ひょっとしたら日本映画最高のカーチェイスかもしれない。

トゥルー・ロマンス (監督:トニー・スコット 1993年アメリカ映画)

監督トニー・スコットで脚本クエンティン・タランティーノのこの作品、実は今まで観ていなかったのである。きっと主演のクリスチャン・スレーターの猿顔が嫌いだったからだと思う。しかし今現在こうして観てみても実にこの頃のタランティーノらしいシナリオで楽しむことができた。極度に残虐かつ極度に躁的で誰も彼も何も考えてないという。主人公が娼館に殴り込みかけるシーンでは「こいつの『タクシードライバー』のトラビスじゃんかよ」と思ってしまった。どん底にいる筈の連中が軽やかに生きている様が(何も考えてないからだが)素晴らしい。