- 作者: コニー・ウィリス,大森望
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2006/12/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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さてこの短編集、中の3作が100ページ前後の中篇であることから全収録作が4作と非常に少ない。内容はと言うと『犬は勘定に入れません』で感じた冗漫さをそのまま引き継いだような作品が多く、今一つ乗り切れませんでした。表題作を除く3作はスラップスティック・コメディなんですが、どうやらオレはこの人の毒の無いコメディ・センスが苦手なのかも。
最初の短編《女王様でも》は女性の生理を扱いながらもフェミニズム的な作品かというとそうでもない。でもこれ未来世界の造語でお話が進んでゆくから、テーマを知らないと半分まで読んでも何の話か全然判んないんじゃないかなあ。
《タイムアウト》はタイムマシン研究に駆り出された研究員達のドタバタなんだけれど、タイムマシンというキーワードが無ければ単に中年男女の浮気心がムフフなだけの物語でしかないんじゃないのか?研究員達の周りで病気が流行ってドタバタするのは『ドゥームズデイ・ブック』あたりと似通っちゃっている気が。
《スパイス・ポグロム》は人口過密のスペースコロニーに住む人類とそこに滞在中の異星人とのディスコミュニケーションを描いた中篇。テーマは判るんだけれどこんなに長くなくてもいいじゃない?混み合った住空間での住民達のイライラが読んでいるほうにも伝わってきていっしょにイライラしてしまい気分が悪かった。『航路』ではコメディとシリアスさが巧い具合にブレンドされメリハリのある物語として完成されていたけれど、コメディ一辺倒のウィリスはどうにもユルイ気がするなあ。あちらではこういうのがウケるのかしらん。人類と異星人の言語学的な齟齬のアイディアは面白かった。
タイトル作《最後のウィネベーゴ》の”ウィネベーゴ”とはアメリカ最後のRV車(キャンピングカー)の名前であり、消滅したネィティブ・アメリカンの部族の名前でもあるらしい。この短編集の中では唯一シリアス調の作品なんですが、これも物語を半分まで読んでも何の話なのか一向に判らない。一見日常的な情景描写の中に秘密警察に似た”協会”なる組織の暗躍が描かれ緊張感を生みますが、読み進めてみるとこの物語、ネタバレになるから書かないけどそもそも設定がおかしくないか?動物がテーマになっていて泣かせに入ってますが、作品の世界観に納得できずリアリティを感じないまま読み終わりました。SF的小道具も古臭くて今読むと白けるんだよなあ。相当賞取ってるみたいなんですがどうなんでしょうこれ。
う〜ん、コニー・ウィリス、出会ったときはよかったが次第に相性の悪さがわかってくる、みたいな作家だなあ…。