- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2005/01/19
- メディア: DVD
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VFXは「エイリアン4」「ジャンヌ・ダルク」「アメリ」を世に送り出したというヨーロッパ最大のVFX工房デュラン・スタジオ。この名前は今後要チェックです。ヨーロッパ的なくすんだ色彩はアメリカのILM、LOTRのWATAには真似出来ない微妙な色合いを醸し出しています。
ストーリーは多少観念的だ。2095年のニューヨーク。廃虚とハイテクの混在した高層ビル群。この時代、ナノテク医療と遺伝子操作・臓器移植を扱う巨大医療企業が世界を牛耳っている。ここに突然「世界の造物主たる神々」の住むピラミッドが空に出現、時を同じくしてセントラルパークには外宇宙と繋がる「侵入口」と呼ばれる異次元空間が現われる。そしてニューヨークでは猟奇殺人事件が連続していた。物語はそれら全ての鍵となる《青い涙を流す謎の女》ジル、静止軌道を漂う冷凍刑務所から地上に舞い戻った反体制運動家ニコポル、7日の命を言い渡された造物主たる神・ホルスを中心に語られていく。…どうですか。物凄くエキセントリックな物語だと思いませんか。
しかしストーリー自体は分かり難いのです。異様な世界が何も説明されぬまま目の前に提出されるのですから。しかしですよ。何もかも説明の行き届いた異世界など、異世界ではないではないですか。そして、言葉で説明されない事はビジュアルで想像すればいいんです。芳醇な想像力で描き出されたこの世界を理解するには、言葉ではなく、描かれる様々なビジュアルイメージを頭の中で紡いで行けばいいのです。要はビジュアルなものに関する感受性の問題です。理路整然と説明された「言葉」がないと世界が理解できない、二言目にはストーリーが、ストーリーが、と言ってる批評は映画美術を見る目が欠けた評論でしかないと思う。そもそも映画というものが《物語》に《映像》が隷属しなければならないなんて誰が決めたんでしょう?《映像》は《物語》の説明の為にだけ存在しているなんて、随分つまらない映画の受け取り方だと思いますが。《物語》不要の《映像》があってもいいではないですか。
ですからこの映画をこれから観る方はその映像のディテールに酔い痴れて下さい。説明なんて観た後に思いつけばいいんです。そもそも謎に満ちた世界だからこそ興味が沸き、その世界を覗き見る事に興奮するのではないですか。この映画は幾つもの事柄が謎のまま終わります。でもだからこそ2度3度とこの映画を観たくなります。この世界に浸っていたくなります。近年見たSF映画では屈指のビジュアル・クォリティを持つ映画であるとオレは確信します。