■Glass / Aparde
”最近聴いたエレクトロニック・ミュージック”の覚書をブログにぽつぽつ更新しているが、全体的に見渡してみるとオレがよく聴くのは静かで綺麗目、あるいはメランコリックで、ダウンテンポ気味の音が多いなあという気がする。いわゆるリスニング向けというのになるのか。フロア向けの音も聴くけれども、割合としては多くない。多分エレクトロニック・ミュージックに興奮ではなくリラックスやリフレッシュを求めているんだろう。まあオレも結構なジジイなので、和みたい・寛ぎたいってことなんですな。いや、いろいろ疲れてるんですよ……。
そんな癒されたいジジイであるオレが最近外で・あるいは部屋でよく聴いているのがドイツのApradeによるこの1stアルバム『Glass』。緩やかなダウンビートに浮遊感たっぷりのシンセと抒情的なピアノが被さり、とても元気の無い切なげな歌声で全体を〆る、という実にオレ仕様のリスニング向けアルバムとなっている。ホラー映画の1場面みたいなジャケットも鬱っぽくていい。というか、オレはこのぐらいの静かでささやかな音が最も好きなんだろうと思う。あんまりささやか過ぎて聴きはじめたと思ったらいつの間にか終わっている。強い主張が無い音とも言えるが、だからこそふわふわと空気中に漂わせておける。そんな部分が心安らぐ。いや、いろいろ疲れてるんですよ……。 《試聴》
■Ambient Black Magic / Rainforest Spiritual Enslavement
ああ、雨だ。雨が降っている。Rainforest Spiritual Enslavementのアルバム『Ambient Black Magic』は、どこまでも、ひたすら、雨が降りしきっている。CD2枚組のこのアルバムのCD1は34分に渡るアンビエント・ダブ・テクノ『Jungle Is A Shapeshifter』1曲のみ。この曲の中心となる幽玄なドローン/ダブ音響の背後で、しとど降る雨の音が34分のほぼ全編に渡り延々と鳴り止むことなく響き続けているのだ。「熱帯雨林の精神的な奴隷化」というユニット名、黒々とした木の枝の陰に身を潜める大蛇が描かれたアルバム・ジャケット、これらからも、人気のない鬱蒼としたジャングルにどこまでも降りしきる雨、といったイメージが補強され、さらにその音は低音がドロドロと響き渡り続けるドローン/ダブであり、それらから、得体の知れない秘境に入り込んでしまったかのような錯覚すら憶えさせる音となっているのだ。そしてその音を聴くにつれ、自分がたった一人緑の魔境に取り残されたかのような不安感を感じるのと同時に、数多の生命が息吹く大自然に包まれそれと一体化したような安心感、といったアンビバレントな感覚に捕らわれる。こういった感情を呼び覚ます音の没入感が非常に優れた作品なのだ。そしてCD2の1曲目『Beyond The Yellow-Spotted Bamboo』ではさらに17分間に渡り激しい雨に包まれることとなるのだ。《試聴》
- アーティスト: Rainforest Spiritual Enslavement
- 出版社/メーカー: Hospital Productions
- 発売日: 2017/10/13
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
■A so We Gwarn / Dego & Kaidi
- アーティスト: ディーゴ・アンド・カイディ,DEGO & KAIDI
- 出版社/メーカー: MUSIC 4 YOUR LEGS IMPORT / SOUND SIGNATURE
- 発売日: 2017/10/25
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
Theo Parrishのレーベルからリリースされた4HEROのDEGOと相棒KAIDIによるアルバム。ジャズ、ソウル、ハウス、ヒップホップ、アフロミュージックといったジャンルを横断しながらグルーヴ感たっぷりのクラブ・ミュージックを展開する。どの曲もクオリティが高くブラック・ミュージック・ファンにもお勧めできる。 《試聴》
■SKRS Prince Blimey Dub Reconstruction / Red Snapper
SKRS Prince Blimey Dub Reconstruction
- アーティスト: Red Snapper
- 出版社/メーカー: Warp Records
- 発売日: 2017/10/27
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
変態エクスペリエンス・ダブ・ミキサーSeekers Internationalが人力アブストラクト・バンド Red Snapperの『Prince Blimey』をひたすらバイオレントにミックス。全2曲のミニ・アルバムだがどちらの曲も18分前後、トータル36分間に渡りカオティックでエクスペリメンタルなジャズ・ファンクが鳴り響きまくる! 《試聴》
■Bafana Bafana / Professor Rhythm
南アフリカのミュージシャンProfessor Rhythmが95年にカセットでリリースしたレア音源のリイシュー。アフリカーンな陽気さで演奏されるチープながらどこか味わいの深いシンセ・ポップだが、そこここにユーロ・ニューウェーヴの匂いがするのが面白い。 《試聴》
■All About / Bert H
ドラムンベースには一時物凄くはまった時期があって、あれはLTJ Bukemがブレイクした頃だったと思うが、当時はもう、他のエレクトロニック・ミュージックなんかまるで聴かずにD&Bばかりひたすら聴いていたのだ。それもいつしか熱が冷め、今度はまるで聴かないばかりか、あの性急なリズムがうとましくすら思うようになってしまったのだから人間勝手なものである。このアルバム『All About』はモスクワ在住の新人D&Bプロデューサー、Bert Hによる1stアルバムだが、これは久々に気に入った。なによりロマンチックなメロディがいい。そもそもD&Bはその独特のリズムと併せメロディのロマンチックさ、そしてスペイシーな音の広がりが気に入っていたのだが、Bert HはUKで始まったこのジャンルを遠く離れた東欧から強烈な愛情でもって自らのものにしたのだろう。数多あるD&Bサウンドと何がどう違うのかは上手く説明できないが、D&Bの現場から離れている者だからこそこだわることのできるD&Bらしさがここにある。 《試聴》
■Reworked By Detroiters / Funkadelic
伝説のファンク・バンド、ファンカデリックの名曲の数々をMoodymann、Underground Resistance、Claude Youngらデトロイト・テクノ/ハウスの精鋭DJがこぞってリミックスした2枚組。オレはファンカデリック自体はさらっと聞き流した程度なのでどの位音が変わったのか判断できないが、 テクノ/ハウス寄りのミックスというよりはファンカデリックに敬意を表したファンクの持ち味を崩さないミックスになってるんではないかと思う。 《試聴》
■Fabric 95: Roman Flugel / Roman Flugel/V.A.
DJMixシリーズの老舗Fabricの95番はドイツ出身のベテランアーティストRoman Flugelが手掛ける全22曲のミニマル/ディープ・ハウス・ミックス。 《試聴》
■NOMC15 / New Order
NOMC15 [帯解説・歌詞対訳 / 国内盤 / 2CD] (TRCP224/225)
- アーティスト: Nerw Order,ニュー・オーダー
- 出版社/メーカー: MUTE / Traffic
- 発売日: 2017/12/01
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
ニューオーダーが2015年11月にイギリス・ブリクストン・アカデミーで行ったコンサートの模様を収録したライブ・アルバム2枚組全18曲。最新アルバム『ミュージック・コンプリート』からの曲を中心に数々の名曲・代表曲を披露、もちろんジョイ・ディビジョンのあの曲も炸裂します。全体的に淡々とした印象。
■Blade Runner 2049 (Original Motion Picture Soundtrack) / Hans Zimmer & Benjamin Wallfisch
Blade Runner 2049 (Original Motion Picture Soundtrack)
- アーティスト: Hans Zimmer & Benjamin Wallfisch
- 出版社/メーカー: Epic
- 発売日: 2017/10/05
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
映画『ブレードランナー2049』のサントラ2枚組。ドロドロと響き渡るハンス・ジマーのインダストリアル・ドローン・ミュージックが圧巻だが、同時に映画で使用されたフランク・シナトラやエルビス・プレスリーの曲も収録されていて、未来と過去が同居した奇妙なアンバランス感が面白い。