『ボーはおそれている』など最近ダラ観した配信あれこれ

『ボーはおそれている』

ボーはおそれている (監督:アリ・アスター 2023年アメリカ映画)

ホアキン・フェニックス主演、『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』のアリ・アスター監督による映画『ポーはおそれている』は頭の弱い主人公が頭が弱い所以で徹底的に悲惨な目に遭う不愉快な不条理映画だ。現実に対し何一つまともに対応できない無能力者である(と勝手に思い込んでいる)ことによる無力感と自己卑下、自己否定、不幸な出生や母親の愛情の欠如により自分の人生は決定付けられていたとする悲観的な運命論、それらが混ぜこぜにされたひたすら性格の暗い映画だということができるだろう。しかもこんな内容で3時間近くもある部分に観客と一蓮托生を目論む悪意さえ感じる。ただし撮影も映像もとことん美しく、アニメーションの使い方も美的感覚に溢れており、さらにホアキン・フェニックスのダメ人間演技がとても素晴らしい。ここまでちゃんとした映像を作り込めるんだからこんな下らない自己憐憫映画なんか撮ってないでもっと堂々とした映画を撮ればいいのに。

ジャックポット!(Amazon Prime Video)(監督:ポール・フェイグ 2024年アメリカ映画)

ジャックポット!

ジャックポット!

  • オークワフィナ
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宝くじ当選者を殺せば当選金が手に入るという残酷ルールが導入された近未来。主人公は宝くじに当選したばかりに街中の人間から命を狙われる!というアマプラのコメディ映画。監督は『SPY/スパイ』、2016年公開の女性主人公版『ゴーストバスターズ』のポール・フェイグという事でちょっと期待したんだが、実のところ演出が雑、設定がザル、ギャグは寒、というしょーもない駄作だった。ただしオークワフィナとシム・リウという『シャン・チー』コンビの復活は嬉しいし(ただしシム・リウは悪役)、共演のジョン・シナがなにしろ最高だし、こんな賑やかな出演陣のおかげで割と飽きずに観られた。誰にも勧めないけどな!

恋するプリテンダー (監督:ウィル・グラック 2023年アメリカ映画)

険悪な仲の男女が家族の結婚式で周囲を安心させるために嫌々ラブラブカップルを演じるというラブコメ映画だが、なにしろ強引で無理矢理過ぎる展開に辟易した。揺れる心というよりも支離滅裂なだけの主人公カップル、書割みたいに薄っぺらい脇役、どこのお花畑学生が書いたんだと思っちゃうような無内容のシナリオ。あと救助隊をタクシー代わりに使ってんじゃねえ!まあ還暦過ぎたジジイの観る映画じゃなかったな。

キラー・ナマケモノ (監督:マシュー・グッドヒュー 2023年アメリカ映画)

キラー・ナマケモノ

キラー・ナマケモノ

  • リサ・アンバラバナール
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あのスローモーな動物ナマケモノが突如殺人鬼と化し、女子寮の女子大生たちを次々と嬲り殺してゆく、というトンデモホラー。ナマケモノのくせにネコ科の肉食獣のように敏速に動き回り神出鬼没に殺戮を繰り返してゆくという段階で既にお馬鹿さん映画決定なのだが、B級なりにきちんと作られていて感心した。女子寮のスクールカーストというプロットも悪くない。欲を言うともっと血飛沫が欲しかった。 

ロックウッド除霊探偵局 (Netflixドラマ)(監督:ジョー・コーニッシュ 2023年イギリス製作)

突如人間に危害を加え始めた亡霊たちを駆除するため、霊感の強い少年少女たちで結成された除霊探偵局が設置された近未来のロンドンを描くファンタジーホラードラマ。全8話。監督ジョー・コーニッシュによる映画『クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士』が結構楽しめたので、同監督によるドラマということで観てみた。いわゆるヤングアダルト向けの作りになっており、不気味な霊障の描写と併せ除霊探偵局の少年少女たちが協力や対立を繰り返しながら次第に結束してゆくドラマが見所となる。なによりよかったのはイギリス製作らしいどんよりじめじめとした暗さと、あんまり覇気のない登場人物の性格で、地味っちゃあ地味なんだが落ち着いた雰囲気を醸し出している部分が好印象だった。