エイリアン:ロムルス (監督:フェデ・アルバレス 2024年アメリカ映画)
SFホラー映画の金字塔「エイリアン」シリーズ最新作。物語は1作目『エイリアン』と2作目『エイリアン2』の中間の時期に起こった事件が描かれ、宇宙植民地生まれの若者たちがエイリアンの恐怖と対峙することになる。出演は『プリシラ』のケイリー・スピーニー、『ライ・レーン』のデビッド・ジョンソン、『もうひとりのゾーイ』のアーチー・ルノー、『マダム・ウェブ』のイザベラ・メルセドといった若手俳優で占められている。製作はリドリー・スコット。『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレスが監督を務めた。
《STORY》人生の行き場を失った6人の若者たちは、廃墟と化した宇宙ステーション「ロムルス」を発見し、生きる希望を求めて探索を開始する。しかしそこで彼らを待ち受けていたのは、人間に寄生して異常な速さで進化する恐怖の生命体・エイリアンだった。その血液はすべての物質を溶かすほど強力な酸性であるため、攻撃することはできない。逃げ場のない宇宙空間で、次々と襲い来るエイリアンに翻弄され極限状態に追い詰められていく6人だったが……。
最高に面白かった。そして最高に怖かった。後半などは怖さのあまり映画館の座席をがっしり掴んでのけぞり気味に怯えていたほどだ。その完成度の高さは、もはや無印以外のシリーズ全作が霞んでしまったと言っていい。『エイリアン2〜4』は良くも悪くも「リプリーの物語」に固執し過ぎていたし、『プロメテウス』『コヴェナント』は結局番外編だったが、登場人物を刷新しつつ1作目の続きを描いたこの作品は、「『エイリアン』とは”恐怖”を描く作品だ」ということを思い出させてくれた。
『エイリアン』とは単純に言うなら「宇宙お化け屋敷」なのだと思う。漆黒の宇宙空間でいかに驚かせ怖がらせるのかに特化した映画であり、そこにエイリアンや宇宙船の造形など美しくもまたおぞましい美術を盛り込んだのが『エイリアン』なのだと思う。その点『エイリアン2〜4』『プロメテウス』『コヴェナント』は、ユニークな作家性や強烈なアクション、素晴らしい美術を披露する作品群だとは思うが、「恐怖」のただ一点においては無印『エイリアン』を踏襲しきれていなかったのではないか。
翻ってこの『ロムルス』を優れた作品したのは、無印『エイリアン』の恐怖をもう一度しっかり描いたということなのだ。つまり「原点回帰」ということだ。この『ロムルス』はシリーズ全作へのオマージュを散りばめながら、1作目の恐怖をきっちり継承しアップデートしていた。これこそが本来『エイリアン2』と呼ぶべき作品だろう。実のところ新しい事は何もやっていないし、お話も「若者たちがとことんエイリアンに追い掛け回され殺されまくる」という以外何もないのだが、このシンプルさに立ち返った部分がこの作品の勝利だろう。
もちろん、これまで公開された無印『エイリアン』以外の作品が不必要だったと言いたいわけではない。あれらの作品があったからこそ、一周回った部分でこの『ロムルス』を生み出すことができたからだ。実際、もし無印『エイリアン』の後にこの『ロムルス』が公開されても「二番煎じ」と呼ばれただけだろう。様々な「エイリアン」シリーズを経た後で原点回帰してみせたからこそ新鮮に目に映ったのだろう。どちらにしろ陳腐化しつつあったシリーズに強烈なカンフル剤となった『ロムルス』は、シリーズを新たに蘇らせる起爆剤となっていたと思う。若手俳優は誰もがよかったし、アンドロイドの扱いもシリーズいちよく掘り下げられていた。