熱く暗く痛くしつこいハードアクション映画『モンキーマン』を観た

モンキーマン (監督:デヴ・パテル 2024年アメリカ・カナダ・シンガポール・インド合作)

インドの架空の都市を舞台に、かつて母を殺し村を焼いた男への壮大な復讐劇を描いたスーパーハードアクション映画、それがこの『モンキーマン』だ。『スラムドッグ$ミリオネア』、『LION ライオン 25年目のただいま』、『グリーン・ナイト』のデヴ・パテルが監督・主演を務め、「ジョン・ウィック」シリーズの製作スタッフが参加、さらに『ゲット・アウト』、『NOPE/ノープ』のジョーダン・ピールがプロデュース。共演は『第9地区』のシャルト・コプリー、『ミリオンダラー・アーム』のピトバッシュ。

《STORY》幼い頃に故郷の村を焼かれ、母も殺されて孤児となったキッド。どん底の人生を歩んできた彼は、現在は闇のファイトクラブで猿のマスクを被って「モンキーマン」と名乗り、殴られ屋として生計を立てていた。そんなある日、キッドはかつて自分から全てを奪った者たちのアジトに潜入する方法を見つける。長年にわたって押し殺してきた怒りをついに爆発させた彼は、復讐の化身「モンキーマン」となって壮絶な戦いに身を投じていく。

モンキーマン : 作品情報 - 映画.com

監督と主演を務めたデヴ・パテルは、映画『アジョシ』、『オールドボーイ』、『ザ・レイド』から着想を得、そこに自らのルーツであるインドの風味を効かせた復讐アクションを撮りたかったのだという。暗く生々しい暴力、憤怒と流血に塗れた復讐劇は確かにこれら作品と共通しており、それは十分に成功している。インドを舞台としているが製作はアメリカ・カナダ・シンガポール・インドの合作となっており、インド産アクション映画に顕著な「無敵のスーパーヒーローが無重力殺法を駆使してスローモーション多用のアクションを展開」といった定型演出には決して堕していない。主人公は屈強ではあるが傷付き血を流し痛みを感じ、ボロボロになりながら戦い続けるその姿にカタルシスを感じさせるのだ。

非常に優れていると感じさせたのは、物語の舞台はインドではあるが、これがタイでもインドネシアでも韓国でも十分通用してしまう、根源的な情念や格差、暴力への渇望を描いている部分だ。また逆に、様々なアクション映画をベースにして構築された物語は、インド独特の混沌とした街並みや汚濁に塗れた社会、大いなる歴史を誇る宗教観に包み込まれることで、この作品ならではのカラーを持ち込むことに成功している。即ち根源的な物語性をインドというカラーで染めることで独自の物語としているのだ。強烈なエモーションに満ちた物語であると同時に暴力映画として高い完成度を誇っており、このジャンルのお好きな方の目にきっと叶う作品であるだろう。

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