呪呪呪/死者をあやつるもの (監督:キム・ヨンワン 2021年韓国・イギリス映画)
呪術で蘇った死人の群れが人間たちを襲う!という韓国産ホラー映画『呪呪呪/死者をあやつるもの』です。そしてこの死人の群れは、ある復讐のためにゾンビ化させられたものだったんですね。主演は『ソウォン 願い』のオム・ジウォンと『パラサイト 半地下の家族』のチョン・ジソ。監督にマ・ドンソク主演映画『ファイティン!』のキム・ヨンワン。原作に『新感染 ファイナル・エクスプレス』、『新感染半島 ファイナル・ステージ』のヨン・サンホ。
【物語】閑静な住宅街で起きた凄惨な事件。被害者の傍らで横たわる容疑者らしき死体は死後3カ月経過していた……。チョン刑事(チョン・ムンソン)率いる捜査隊が怪事件を追うが、事態は混迷を極めていく。ジャーナリストのイム・ジニ(オム・ジウォン)は事件を暴こうと調べをすすめると、背後にとある企業の陰謀が関係していることを突き止めた。しかし、強大な“呪い”によって蘇がえったゾンビの集団が「3つの殺人」を果たすために、姿を現し襲いかかってくる。 ジニは旧知の呪術師ソジン(チョン・ジソ)に願いを託し、呪術でゾンビと彼らをあやつる黒幕に立ち向かう!
最初に書いておくとこの『呪呪呪』、2020年製作の韓国ドラマ『謗法~運命を変える方法~』の続編的な位置付けとなる映画らしいんですね。自分は観てなかったので粗筋を調べると「漢字の名前、写真、所持品で人を呪い殺せる能力を持つ10代の謗法師ベク・ソジンと、正義感溢れるベテラン記者イム・ジニが、国内最大IT企業フォレストの悪事と戦うストーリー*1」となっていて、登場人物がきちんとかぶっています。ですからドラマだったことを知らないで見ると人物や組織の背景に説明がなかったり描写が唐突だったり感じるかもしれません。とはいえそれも最初だけで、そこを乗り越えたら十分楽しんで観ることができましたよ。
蘇った死人=ゾンビと言えばホラー映画でもお馴染みのジャンルですが、蘇った理由として挙げられるのは宇宙線や科学実験、ウィルスや寄生虫など様々です。香港映画『霊幻導士』で登場するキョンシーは妖怪扱いですね。そしてこの『呪呪呪』では呪いによるものとされますが、もともとゾンビと言えばブードゥー教の呪いによる「生ける死体」のことですから「呪術で蘇った死人」というのはある意味原点なのかも。こうしてゾンビ映画と呪術ホラーの両方を楽しめるのかこの『呪呪呪』なんですね。
『呪呪呪』におけるゾンビはある復讐のために蘇らされたもので、復讐の対象者のみを襲うように操られています。ですからゾンビが手当たり次第に人間を襲って大パニック!というゾンビ映画とはちょっと違います。そしてこのゾンビがまた破格!「走るゾンビ」はお馴染みでしょうが『呪呪呪』のゾンビはアスリートの如きスプリント走行を見せつけます!操られてますから一糸乱れぬ動きがまた独特!それだけじゃない!ゾンビ映画史上初(?)の「ゾンビの運転する車とのカーチェイス」なんていうとんでもないシーンまで登場!?そしてゾンビは階段を降りない!階段から飛び降りる!?こういった「ゾンビ新機軸」が楽しい映画なんですよ。
物語ではゾンビを操る呪術師が登場しますが、これに対抗すべく登場するのは少女呪術師ソジン!このソジン、なにやらいろんな過去を持っているようなんですが、それはドラマで語られているらしくて、映画では結構唐突に登場して唐突に強力な呪術を使います。この辺りは(オレも含め)初見の方には分かり難い描写になっていますが、「なんだか知らないけど強い!」という事だけを知っておけば問題ないでしょう!また主人公となるイム・ジニはネット放送会社の記者で、彼女や仲間たちが今回のゾンビ騒動を常にカメラを回してネット放送している部分に現代性を感じました。
一方、復讐の対象となるのはある巨大企業の3人の重役たちなんですね。当然何かやらかしたから復讐されるのですが、この辺りの巨大企業の闇、巨大企業への不信感は韓国映画では結構取り沙汰されるもので、以前観た韓国映画『非常宣言』も同様のアウトラインを持つ作品でした。韓国では現実においても官僚や巨大企業があれやこれやとやらかし社会問題化していますから、そういった部分が反映されているのでしょうね。こんな具合に韓国に生きる者の心情が垣間見える部分でも面白い作品でした。