俺たちゃ生涯悪ガキだぜ!/映画『バッドボーイズ フォー・ライフ』

バッドボーイズ フォー・ライフ (監督:アディル・エル・アルビ/ビラル・ファラー 2020年アメリカ映画)

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【乱暴な映画】を観たかったのである。【乱暴な映画】、それは乱暴な連中が主人公となり乱暴な敵を相手に、銃乱射しいの!カーチェイスしいの!あっちこっちでドッカンドッカン大爆発しいの!といった乱暴の限りを尽くす、乱暴極まりない映画の事である……って説明なんかしなくても字面のまんまじゃないか。そして今回オレの観た【乱暴な映画】、それがこの『バッドボーイズ フォー・ライフ』なのである。タイトルは「俺たちゃ生涯悪ガキだぜ!(大意)」ってな意味で、4人のフォークシンガーが作った日本のレコード会社とは何の関係もないのである。

とはいえ実はオレ、この『バッドボーイズ』シリーズを全く観ていなかった。痛恨の一撃!である。しかし調べると1作目2作目ともネトフリに入ってるじゃないか。流石あるといいねがあるお店ネトフリである(まあ実は無いもんも相当ある)。というわけで早速観てみたわけだが、1作目『バッドボーイズ』(1995)はなんとあのマイケル・ベイの監督デビュー作だ!デビュー作だけあってベイやんの演出が初々しい!ちょっと時代を感じる部分はあるしバディものとしても可もなく不可もない出来だが、黒人警官二人が主人公ってのは当時新しかったのかな(特に調べてない)。

そして2作目『バッドボーイズ2バッド』(2003) 、これが凄い!どうかしてるんじゃないのかってぐらいギラギラの映像でこれでもかってぐらい銃撃と破壊をしまくっており、まさにベイやん節全開!なんだが特にこの時のベイやんちょっと神懸かってないか?!なんかこーちょっとドラッギーなものすら感じるある種のヤヴァさを覚える、悪趣味なブラックジョークがこれでもかと満載なのにもベイやんの余裕ぶっこき振りが伺える、これもうベイやんの最高傑作ってことでいいんじゃないのか!?(ちなみに”裏”最高傑作は『13時間 ベンガジの秘密の兵士』だと信じて疑わない)

という訳で3作目『バッドボーイズ フォー・ライフ』となるわけだ。監督はベイやんから交代してベルギー出身のアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラーという人たちらしい。全然知らん人たちだが期待して観てみよう。物語の主人公は言わずもがな、ヤサ男のマイク(ウィル・スミス)とドジなマーカス(マーティン・ローレンス)のハチャメチャマイアミ市警コンビだ。しかし前作から17年も経ってるぐらいなのでマイクはいいオッサンだしマーカスなんか孫が生まれてお爺ちゃんだ。もうタイトルみたく「オレたちゃ悪ガキ!」なんて言ってられん年だが、いかなオッサンになろうとも悪ガキの気風は忘れないぜ!ってことなんだろう。オレもほぼ老人と言っていいオッサンだがロックンロールな気概は決して忘れたくないぜ!昨日の晩飯何喰ったかはもう忘れたがな!

さてそんなオッサンになった二人が事件に巻き込まれる、巻き込まれないとお話にならないから巻き込まれるのだが、今回はなにやらマイクと過去の因縁を持つメキシコのご婦人とその息子が地獄の如き殺戮を開始するという塩梅だ。早速辺りは血の海銃弾の雨あられ、警察は事件解決のためにエリート捜査官で組織されたAMMOなる部隊を投入するが、「若造なんかに任せちゃおけねえ!」とばかりにマイクはそれにいっちょ噛み、一方マーカスはというと「俺もう乱暴狼藉の仕事は嫌だあ」とすっかり腰が引けている始末、さてさて事件解決は果たせるのか、そしてメキシコのご婦人とマイクとの間にあった「過去の因縁」とはなんなのか、今回も派手派手にキメてやるぜ!という『バッドボーイズ フォー・ライフ』という訳なのである。

感想を言うなら十分楽しめた、オレの求める【乱暴な映画】のエッセンスが詰まりまくった作品だった、やっぱ映画は銃器ドンパチ、カーチェイスガンガン、爆破と破壊がドッカンドッカンだよな、そしてやっぱり最後はヒーローが勝つんだよ、スッキリ爽快天網恢恢、映画館を出る時は当然肩いからせながらだよな!以上感想終わり!……でもいいのだが、それではあまりにしょーもないのでもう少し何か書こう。

今回ベイやんとの監督交代は完成度に殆ど影響しておらず、アディル&ビラル監督はベイやんのアクション・テイストを巧く踏襲しつつも独自のカラーをきっちり出していて、新風を吹き込んだという意味でこれはアリだと思った。独自のカラー、というのは主人公マイク&マーカスの内面や生活により踏み込んだという部分だろうか。ある意味ベイやんの描くマイク&マーカスは判で押したようなキャラと判で押したようなバディっぷりを見せていたが、それは逆にベイやん流アクションにより重きを置くためだったとも言えるんだよな。そもそもベイやん人間に興味無さそうだし。

しかしアディル&ビラル監督描くマイク&マーカスはよりウェットな人間性を兼ね備えていて、特にマイクが過去の因縁に煩悶する部分などは非常にキャラクターに陰影を与えていたし、一方マーカスの所帯じみたドタバタはより泥臭く人間臭いもののように感じた。さらに敵役である謎のメキシコ人親子にも、ドロドロした怨念と狂気が十分に付加されて、単にイキッたサイコパス犯罪者扱いじゃない訳なのだ。そういった部分において、今作は全2作のギラギラした眩しいような明るさとは別の、人間的な暗い情念やなけなしの人情を感じさせるような作品に出来上がっていたと思うな。

併せて、今回はマイク&マーカス二人の他にエリート若造チームが加わることで、よりお話とアクションに幅を持たせることに成功しているんだよね。マイク&マーカスと若造チームとの反発や協力のドラマを見せることにより、オッサン二人が老体に鞭打って若ぶってるだけのお話にしていないんだ。チームのメンツもそれぞれキャラが立ってて、オレはそれぞれに好きだったな。そしてこの大所帯化したメンツで続編をまた作ることも可能になったと思うな。そしたらなんだか『ワイスピ』みたいなシリーズ作品になっちゃったりしてね!

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