悪逆非道の東インド会社に立ち向かえ!/映画『Thugs of Hindostan』

■Thugs of Hindostan (監督:ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ 2018年インド映画)

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■悪逆非道の東インド会社に立ち向かえ!

「インドの民よ!暴虐極まる東インド会社に立ち向かえ!」とばかりに憂国の志士たちが戦いを繰り広げる歴史エンターティンメント大作『Thugs of Hindostan』です。

この作品、配役がなにしろ豪華で、『家族の四季 愛すれど遠く離れて』『華麗なるギャッツビー』でも知られるインド映画の大スター・アミターブ・バッチャン、『きっと、うまくいく』『PK』『ダンガル』のアーミル・カーン、『命ある限り』『チェイス!』のカトリーナ・カイフ、『ダンガル』のファーティマ―・サナー・シャイフが出演、監督が『チェイス!』のヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ、制作費はインド映画史上2番目となる31億円の巨費を費やして製作されたという話題たっぷりの作品なんですね(ちなみに制作費1位はシャンカール監督『2.0』の51億円)。

《物語》18世紀末、インドは東インド会社の暴虐に喘いでいた。ミラ王国の王と王妃は東インド会社の武官クライブ(ロイド・オーウェン)の陰謀により殺害され、その娘ザフィーラー(ファーティマー・サナー・シャイフ)は忠臣アーザード(アミターブ・バッチャン)の助けによりからくも生き残る。数年後、強奪団を組織したアーザードとザフィーラーは東インド会社を相手に略奪を繰り返し、彼らを悩ますようになる。脅威を感じたクライブはコソ泥のフィランギー(アーミル・カーン)を雇い、アーザードの組織に潜入させる。しかしフィランギーはアーザードの変革への想いに次第に心を動かしてゆくのだった。

■『Thugs of Hindostan』の4人の主要キャラクターを大紹介!

さてこの『Thugs of Hindostan』、歴史スペクタクルというコスチューム・プレイ作品なので、キャラクターのビジュアルをご覧になってもらったほうが魅力が伝わるかと思いますので、ここで主演の4人を紹介してみます。

◆二刀流の剣豪・忠臣アーザード(アミターブ・バッチャン

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インドでは「ビッグ・B」として知られるアミターブ・バッチャン、さすが数々のインド映画大ヒット作に出演してきただけあって貫禄充分、奪われた王国のただ一人の生き残りである王女を守るため、忠義を尽くしまくる老爺を演じ、すわ戦いともなると二振りの刀を翻してちぎっては投げちぎっては投げの大立ち回り、圧倒的な強さを見せ付けてくれます!その姿は『バーフバリ』の忠臣カッタッパをも髣髴させます!

◆敵か味方か?謎のコソ泥・フィランギー(アーミル・カーン

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なんですか誰ですかこの怪しさ百万倍アピールの妙な男は!?実はなんとこの人、『きっと、うまくいく』のアーミル・カーンなんですよ。『チェイス!』のムキムキマンや『ダンガル』のでっぷり太ったお父さん役などを見ると判るように、常に役柄に合わせてカメレオンのように変身する俳優さんだったんですね。まるで往時のロバート・デ・ニーロを思わせますが、このビジュアルだと『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップ的な胡散臭さを漂わせていますね。物語でも「敵か味方か?」というどっち付かずの立場の男を演じ、とことん怪しくヘロヘロと立ち回っています!

◆復讐に燃える悲劇の王女・ザフィーラー(ファーティマー・サナー・シャイフ)

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1997年から活動している若手女優さんなんですが、映画『ダンガル』で女子レスリング選手として戦う長女ギーター役だった方、と言ったら判るかもしれません。この『Thugs of Hindostan』では父母を殺され王国を奪われた悲劇の王女を果敢に演じ、復讐に燃える目で東インド会社の雑魚どもをばったばったと倒してゆく頼もしさを見せ付けてくれます!ちなみにメイン・ウェポンは弓矢、なんと『バーフバリ』も真っ青の3本一気射出の技も繰り出して、その強力さはその辺のヘナチョコ男の比ではありません!

◆心優しき華麗なる踊り子・スライヤー(カトリーナ・カイフ

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インチキ野郎フィランギーの影となり日なたとなり、「全くしょうがないわねえこの宿六は」と何かと世話を焼く美人ダンサー・スライヤー、彼女を演じるのがそのゴージャスさで人気を誇るインド女優・カトリーナ・カイフとなります。正直この作品ではそれほど活躍する場所が与えられず、「なんで出てきたの?」と思わせてしまいます。しかしひとたびダンス・シーンともなる圧倒的なパフォーマンスを披露し、物語においても要所要所で存在感をアピールしますが、これはひとえにカトリーナの底力あってのことでしょう。もっと物語に大きなかかわりを持つシーンが観たかったなあ!

■娯楽に徹し安心して観られる歴史エンターティンメント 

さてこの『Thugs of Hindostan』、「大スターたちの共演」「派手な歴史エンターティンメント作」「敵は東インド会社」「虐げられたインド民の復讐」「ばらばらだった仲間たちの団結」と、非常に見所のポイントを押さえて製作された作品であると言う事ができます。そしてこの作品、「4人の主要キャラクター」でもちらっと触れましたが、どこか『バーフバリ』の大ヒットに対抗心を燃やして作られた作品のようにも思えるんですね。

巨額の費用を掛け、派手なアクションで空前の大ヒットを飛ばした『チェイス!』の監督ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤを採用し、あたかも『バーフバリ』の向こうを張った歴史大作に仕上げようとしたようなこの『Thugs of Hindostan』、確かにアクションは充分に楽しめ、次から次に巻き起こる戦いと危機一髪の様子は観ていて決して飽きさせません。そういった部分で御代分きっちり回収できる娯楽作であり、安心して観ていられるのですが、物語の深み、といった点ではいま一つの部分があります。

忠臣アーザードの質実剛健振りは言うこと無しなんですが、「敵か味方か?」なフィランギーに関しては、なにしろアーミルだし結局アーザードの仲間になるんだろ?とすぐ思えてしまいサスペンスに繋がりません。ザフィーラーもタフな女キャラで押し通すのかな、と思わせながらフィランギーとロマンスがあるの?ないの?なんなの?という曖昧な描写。スライヤーに関しては物語に上手く居場所を見つけることに苦労していて、「とりあえずここ、出しときます!」とでもいうようなぞんざいな扱い。敵との戦いにおいても「え、なんでそこで敵逃がしちゃうの?」といったスッキリしないシーンがあったり、なんかこーシナリオの練り込み不足が随所に見られるんですね。

そんな部分で、アクションばっちり!視覚効果ばっちり!スターの魅力たっぷり!派手さも抜群!であるのと同時に、心にズシッとくるドラマ性は感じない!というとても惜しいし勿体無い作品です。まあハリウッド映画ならそんな作品ゴマンとあるけどね!決して悪い作品ではないので、観ようかどうか迷われている方には是非観て欲しいし、観て損は無い作品だと思うんですけどね。そういった意味では気楽に観られるライトな楽しみ方を求めると吉でしょう。

なんでも本国では予想よりもヒットしなかったので中国上映版ではアーミルが主役であるような(中国では『ダンガル』が空前のヒットを飛ばし人気俳優となっている)大幅な短縮と編集を施したバージョンが上映されたようなんですが、そっちのバージョンはどんななんだろうなあ。

 

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