老後はインドで暮らしたい!〜映画『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』

マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章 (監督:ジョン・マッデン 2015年イギリス映画)


老後。考えると頭の痛い話であります。貯金。年金。健康。住居。介護。オレも50を過ぎ、差し迫った問題となってきております。そもそも「50過ぎてから「差し迫っている」とか言うのなんてアンタ遅いよ!?」という声もあるかと思いますが、まあその程度にイージーモードな人生を生きてきてしまった人間の戯言とお察しください。

しかしこんな老後を日本で暮らすには、将来の日本を考えたらあまりに世知辛い。リタイア後に海外移住なんて手もありますが、自分の懐具合を考えたらそれも夢みたいな話。でも夢見るだけならタダですから、じゃあもしも老後に海外で暮らすなら、どんな国がいいかな、と妄想してみるわけです。「そういえばオレ、インド映画好きだよな…インド…インドで老後を過ごすってのはどうなんだ?」そう、そんな、「老後をインドで暮らす事を決めた老人たちの物語」、それがこの『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』なんですな(やっと繋がった)。

『第二章』というぐらいですから続編です。1作目のタイトルは『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(2012)。この作品については拙ブログ記事「インドより愛をこめて、またはマリーゴールド・ホテルで死ぬのは奴らだ〜映画『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ」として紹介していますが、いやあ今読んでみるふざけたことばっかり書いてて全然内容紹介になってないなあ…。まあ煎じ詰めて書きますと、第2の人生を満喫しようとイギリスからインドの「マリーゴールド・ホテル」にやってきた熟年男女の物語なんですね。しかしこの「マリーゴールド・ホテル」、リゾートホテルと謳っておきながら実は単なるぼろホテルで、その中でインド人支配人と老イギリス人たちがおかしなドラマを繰り広げてゆき、最後にほろっとさせるというコメディなんですよ。

監督は『恋におちたシェイクスピア』『コレリ大尉のマンドリン』のジョン・マッデン。インドが舞台となりますが決してインド映画ではなくイギリス製作の映画なんですな。出演者も『007』シリーズのM役で有名なジュディ・デンチ、『ハリーポッター』『天使にラブ・ソングを…』シリーズのマギー・スミス、その他そうそうたる老人俳優で占められていて、全年齢を合わせると優に1000歳ぐらいになりそうですが(そんなわきゃない)、その中で今回初登場のリチャード・ギアがなによりも見所でしょうか。いやーリチャード・ギア、さすがにイイ男です。彼が画面に出た途端映画の雰囲気が変わったぐらいですからね。

それとインド勢では『スラムドッグ$ミリオネア』のデーヴ・パテール、さらに女優のテナ・デサイー、リレット・デュベイが出演しております。インド映画的なキャリアでいうとテナさんは『Cocktail』(2012)にカメオ出演、リレットさんは『Housefull』(2010)、『Kal Ho Naa Ho』(2003)などに出演があるようです。映画はジャイプルウダイプルでロケされ、あとムンバイがちょっと出てきます。

前作ではインドにやってきた老イギリス人たちの人生に焦点が当てられていましたが、今作の物語は老人たちのその後の生活、そして年を経てなお活発な恋の行方と併せ、ホテルの支配人ソニー(デーヴ・パテール)によるホテル新物件に関するゴタゴタが描かれてゆき、クライマックスに彼の許嫁スナイナ(テナ・デサイー)との結婚シーンが用意されています。インド映画の華といえば歌と踊りですが、今作はインド映画じゃありませんがそれに敬意を表したのか、結婚式で華々しく盛り上がってゆくところがインド映画ファン的には楽しめるんじゃないでしょうか。もちろんインドの街並みが全編に渡って描かれているところも目を惹くでしょう。サウンドトラックもインド映画ぽくって、その辺も心をくすぐられますね。そして登場人物それぞれの、老いることへの哀歓が、物語をしみじみとしたものにしています。

反面、今作ではホテル支配人ソニーの暴走ぶりにちょっとイラッとさせられるかもしれません。まあインド人だからこんなもんなのかなあ…。また、多数の登場人物のそれぞれのエピソードがちょっとずつ物語られるため、多少とっ散らかった印象があります。ただしこれ、観ていたオレが前作の内容だいたい忘れていたもんですから(だって前作公開4年前ですよ…)、物語の流れが掴み難かっただけかもなあ…。それと登場人物たちの興味の中心が恋愛ばかりというのは、いわゆる「群像恋愛ドラマ」の流れを踏襲したものなんでしょうが、もっと落ち着いてくれてもよかったんじゃないかなあ。

それにしても実際、老後にインドに移住して暮らすってどうなんでしょうねえ。この物語は元宗主国であるイギリス人の視点から描かれるわけですから、微妙に植民地主義的な部分を感じるし(それに当然フィクションだし)、同じインドに永住するにしても日本人にとって参考になるかどうかは難しいところですね(なにしろフィクションだし)。というわけで次作は「納豆と味噌汁を食いたい!あと毎日熱い風呂に入れて風呂上り後はキンキンに冷えたビールと枝豆が欲しい!もちろん水はタダでしかも安全じゃなきゃ許せない!カレーはバーモント以外拒否!それと近所にエッチなお店ない?」とわがままを言う日本人の登場する『マリーゴールド・ホテル サムライニッポン篇』を期待したいと思います(ってかそんなヤツなんでインドに行くんだ)(ハッ…オレ!?)。


The Second Best Exotic Marigold Hotel

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