■Dabangg 2 (監督:アルバーズ・カーン 2012年インド映画)
タレサン口髭のウルトラ・スーパー・コップが帰ってきた!?そう、この『Dabangg 2』、タイトル通り現在日本で大好評上映中の『ダバング 大胆不敵』の続編なんですね。『ダバング 大胆不敵』は2010年にインド公開され大ヒット、そしてその続編が2012年に製作され、またもや♪だばんだばん…と歌って踊ってついでに悪モンぶちのめして大々ヒット、という作品なんです。
お話のほうはいたってシンプル。「怖いもの無し刑事("デカ"とお読みください)」ことチュルブル・"ロビンフッド"・パンデーさん(サルマーン・カーン)が大都会に引っ越し、そこでまたもや悪い奴らをけちょんけちょんに懲らしめちゃう、といったもの。例によってチュルブルさんはタレサンを襟元にひっかけ、ダバング・ダンスではベルトをふるふる揺らし、仕事中もくっちゃくっちゃなんか食ってます。けれどもいざ戦い!ともなると鬼神と化して(ついでにシャツも脱げて)ワルモノどもをバッタバッタとなぎ倒しちゃうんですな!
チュルブル家は円満になりました。ツンデレの嫁さんラジュー(ソーナークシー・シンハー)は御懐妊中、要所要所で旦那とのラブラブぶりを見せつけちゃってくれます。チュルブルさんの弟マッキー(アルバーズ・カーン)は相変わらずニートでバカ、前作ではそれでもチュルブルさんに反旗を翻しておりましたが、今回は単なるユルキャラ扱いです(シクシク…)。義父のプラジャーパティさん(ヴィノード・カンナー)はというとすっかり好々爺と化しており、チュルブルさんに女声のイタ電かけられてドキドキしたりしてるのが可愛いです(そしてチュルブルさん役のサルマーン・カーンがその後映画『Bodyguard』でイタ電掛けられる役になる、という所に運命のイタズラを感じます)。
チュルブルさんもすっかり丸くなりました。前作でのチュルブルさんは「正義漢でありながら倫理や道義は簡単に無視するアンビバレンツな男」として描かれており、それがチェルブルさんのキャラクターと物語を複雑なものにしていました。しかしこの2作目では前作にあったアンビバレンツが消滅し、彼の抱えるルサンチマンも存在しなくなったのです。親との葛藤が解消されたばかりか、汚職じみたこともしておらず、確かに悪者から賄賂は頂戴しても、その金を寄付に回したりするんですね。前作の「黒光りしたチョイ悪オヤジ」は今作では単なる「気は優しくて力持ち」な「いい人」になってるんですよね。
こうして人間関係とキャラクターから重苦しいバイアスが抜けてしまったこの2作目、じゃあつまらなくなったのかというとそうではなくて、逆にシンプルにアクションにフォーカスした娯楽作品として物語られ、これにより素直に楽しめるものとなっているんですよ。前作にあった臓腑をえぐるような悲劇や憤怒が物語を牽引することは無いにせよ、その分リラックスして観られる安心感があるんですね。前作で完成されたキャラクターを上手く活かし、その魅力を前面に押し出すことでフランチャイズに成功しているんですね。この辺の「キリキリした緊張感を持つ1作目」と「ほっこりした人間関係で和ませる2作目」の関係って、ちょっとメル・ギブソンの『リーサル・ウェポン』シリーズを思い出しました。
一方ワルモノの皆さんは前作と比べるとちょっと迫力不足かもしれません。前作のワルモノの皆さんはチュルブルとその家族を危機に陥れ、とことんきりきり舞いさせていましたが、今作のワルモノの皆さんはなんだかチュルブルさんに一方的にきりきり舞いさせられっぱなしです。しかしもし今作でワルモノのインフレーションを起こさせると、またしてもチュルブルさんの家族に惨禍を起こすシナリオになってしまうでしょうから、「ほっこり家族バンザイ」を物語の中心に持ってきた今作ではそぐわないと判断したのでしょう。ちなみに今回の悪役のボス、悪徳政治家のタークルを演じるプラカーシュ・ラージ、サルマーン・カーン主演の『Wanted』や同工のスーパー警官映画『Singham』でもワルモノを演じておりましたな。
こんな具合に安定と安心の完成度、『Dabangg 2』は『ダバング 大胆不敵』がお気に入りな方なら絶対楽しめますし、むしろ『ダバング 大胆不敵』を観ていて『Dabangg 2』を観ていない人は実はいないんじゃないかと思わせる様な楽しい作品でしたね。『ダバング 大胆不敵』を観て気に入った方、輸入DVDだけでなくiTunes Movieでも視聴できますのでよろしければどうぞ。