■全てを奪われた男:剣闘奴隷スパルタカス
ローマ軍の裏切りにより俘虜にされ剣闘奴隷として売り飛ばされた男、その名はスパルタカス。既に彼の生まれた村は焼かれ、同胞たちは惨たらしい死を遂げ、最愛の妻も奴隷として何処かへと連れ去られてしまった。全てを奪われ、明日をも知れぬ剣闘士として生きざるを得なくなったスパルタカスの胸にあるのは、妻の安否、そしてにっくきローマ人への復讐。憎悪と憤怒に身を焦がすスパルタカスの、壮絶なドラマが今始まる…ッ!!「ローマ人は皆殺しだァアァァッ!!」
■ドラマ『スパルタカス』の「ここがヤヴァい!」
1.残虐描写がヤヴァい!
アメリカのケーブルテレビドラマ、『スパルタカス』が凄い!熱い!ヤヴァすぎる!「全米で最も過激なドラマ」と呼ばれるこの作品まずその残虐描写がヤヴァい。剣闘シーンでは肉体がキャベツみたいにザクザク切り刻まれ、ありとあらゆる殺し方殺され方が描かれ、バケツでぶち撒いたかのように血が飛び散り、手足も首もポンポン宙を舞い、はらわたまでも大盤振る舞い、その残酷さは凡百のホラー映画を遥かに凌駕する過激さだ。
2.エロ描写がヤヴァい!
次にエロ描写がヤヴァい。ことあるごとに全裸の男女が画面を闊歩し、とにかくお約束のようにセックスシーンが乱舞する。売春、乱交、同性愛、奴隷に命じる強制セックス、見世物としてのセックスショー、とにかくやりたい放題のエロシーンが次から次へと画面に躍る。ヘアなんてまだ普通、なんと男性器まで当たり前のように画面に写されるのだ。そしてこれらの描写によりアメリカではTVMA(17歳以上の大人向き)といういわば成人指定のレーティングを受けているドラマでもあるのだ。
3.ドロドロの人間関係がヤヴァい!
そして陰謀・策略・謀殺渦巻くドロドロの人間関係描写がヤヴァい。こっちのほうはスパルタカスを買った剣闘興行師、バティアトゥスという男を中心にして描かれてゆくのだが、このバティアトゥスというのが恐ろしく嫉妬深い男であると同時に凄まじい上昇志向を持つ男なのだ。まず同業者を次々と蹴落としてゆく、それも二枚舌を使った騙まし討ちから暴漢を装った暗殺までありとあらゆる汚い手を使う。さらにローマのお偉いさんに取り入って権力を手に入れようと、奴隷たちの性や命を家畜のように差し出す、にもかかわらず相手にしてくれないお偉いさんに激高し、拉致監禁した挙句に虐殺までしてしまうのだ。
そのバティアトゥスの妻、ルクレティアの毒婦ぶりはバティアトゥスに輪をかけて陰惨で、夫や奴隷を手玉に取り自らの飽くなき暗い欲望を満たそうとする。この夫婦の極悪非道な行動がドラマ『スパルタカス』のもうひとつの見所となる。しかもこの夫婦、心底ラブラブだというのが始末に悪い。さらにスパルタカスの仇的でもあるローマ軍副将グラベルの妻、イリティアは美しい容貌とは裏腹に信用ならない女狐であり、スパルタカスのみならずバティアトゥス夫妻でさえ窮地に追い込もうとするのだ。このドラマでは奴隷たち以外はまともな人間が殆ど出てこないぐらいだ。
■自由への渇望に彩られた極上のエンターティメント
このようにドラマ『スパルタカス』は過激な残虐描写やセックス描写、えげつない人間関係を描くことで大いに目を惹く物語であることは確かだ。しかしこの物語がこういったあざといセンセーショナリズムだけで成り立っている安易な見世物映画だと思われるのは大間違いだ。
このドラマの残虐さ、それはこの時代において、人の命など虫けら程度のものであった、ということだ。このドラマの淫猥さ、それはこの時代の人々が、我々の知るようなモラルの中で生きているわけでは決してない、ということだ。虫けらのような生、モラル無き社会、即ちこの『スパルタカス』で描かれるのは、我々の知る道理が全く通用しない、常闇の如き無情の世界だ、ということなのだ。その最低最悪の世界の中で、生き延びたいと願い愛したいと願うそのことが、闇の中で煌めく閃光のように、観る者に強烈な印象を与え、感情を大きく揺さぶるのだ。
おぞましい陰謀の張り巡らされた地獄のような闘技場で、奴隷戦士スパルタカスは、命を賭け、妻の奪還と、自由と、復讐を胸に誓い、血に塗れた戦いを繰り広げ続ける。殺戮とエロティシズムの徹底的な扇情の彼方に、何もかもを失った男の自由への渇望がマグマのように噴き上がる。その中で仲間の奴隷剣士たちとの反目、友情、結託、そしてその仲間たちの死、さらに彼らが織り成す様々な愛と別れのドラマもが描かれ、物語を盛り上げてゆく。その彼らの熱く暗く強烈な思いが、このドラマを一時たりとも目の離せない極上のエンターティメントとして完成させている。数々の「ヤヴァい」映像とストーリー、予想をことごとく裏切る展開が「TVでここまで出来るのか!?」と驚愕するほどの過激さとクオリティで観るものに迫ってくる。それをドラマという長丁場で描ききったこの物語は、ある意味映画すら越えた映像体験となっていることは間違いない。この『スパルタカス』の前ではリドリー・スコットの『グラディエーター』もキューブリック映画『スパルタカス』ももはや霞んで見えるほどなのだ。
■第三時奴隷戦争の物語
ドラマの元となっているのは紀元前73年に共和政ローマのイタリア半島で起きたスパルタカスの反乱、「第三時奴隷戦争」と名づけられた史実である。脚色はもちろんあるだろうが、史実にあるキャラクターと展開が盛り込まれている。スパルタカス率いる反乱軍は最終的に9万とも12万とも言われる軍勢に膨れ上がり、その最後の戦いにおいて6万のローマ軍兵士と激突したのだという。史実においてスパルタカスの軍は全滅したが、その戦いがまだ見ぬ『スパルタカスIII』でどのように再現されているのかが楽しみでしょうがない。
このドラマは『スパイダーマン』シリーズのサム・ライミが製作総指揮を務め、2010年に第1シーズン『スパルタカス(Spartacus: Blood & Sand)』、2011年に前日譚『スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ(Spartacus: Gods Of The Arena)』、2012年に第2シーズン『スパルタカスII(Spartacus:Vengeance)』、2013年に第3シーズンであり最終章である『スパルタカスIII(Spartacus: War of the Damned)』が放送されている。そのうち日本では第2シーズンまでがDVD・Blu-rayでリリースされている。途中スパルタカス役であるアンディ・ホイットフィールドの急死により主役俳優の交代があったが、暴力と死と愛欲にまみれたドラマは少しの翳りも見せない。なおご覧になるときは放送公開順に「I」「序章」「II」とご覧になっていただきたい。「序章」は「I」の背景説明とネタバレが含まれ、さらに「II」の伏線となっているからだ。
○『スパルタカス(Spartacus: Blood & Sand)』予告編
○『スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ(Spartacus: Gods Of The Arena)』予告編
○『スパルタカスII(Spartacus:Vengeance)』予告編
○『スパルタカスIII(Spartacus: War of the Damned)』予告編
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