■キリング・フロアー / リー・チャイルド
ジャック・リーチャー。元軍人。仕事も家族も、友人さえも持たずただ一人放浪する男。伝説のギター奏者の面影を求めて訪れたジョージアの田舎町で身に覚えのない殺人容疑をかけられ、刑務所で殺されかかった彼は、自分を狙う何者かの意志を察知する。刊行と同時に全米マスコミの絶賛を浴びたアクション巨編。(上巻)
殺されたのはもう何年も会っていない、財務省で通貨偽造を調査していた実の兄だった。おれがこの手で犯人を挙げる、誰がなんといおうと―。容疑が晴れ釈放されたリーチャーは女性巡査ロスコーと共に事件を追い、町を覆い尽くすある巨大な陰謀を明らかにしていく。アンソニー賞最優秀処女長編賞受賞作。(下巻)
トム・クルーズ主演のクライム・アクション映画『アウトロー』が大変面白かったので、『アウトロー』の原作者リー・チャイルドによるジャック・リーチャー・シリーズの作品をどれか読んでみようかと思ったわけなのでありますよ。そこで選んだのがジャック・リーチャー初登場のシリーズ第1作目『キリング・フロアー』であります。
主人公ジャック・リーチャーはアメリカの各地を旅する流れ者です。流れ者、と書くとそれこそ「アウトロー」のような感じなんですが、実は彼は退役軍人で、今は一人の自由人として、何にも縛られない毎日を送っている、ということなんです。軍隊時代のリーチャーは憲兵として軍人相手の警察官のような特殊な任務に就いていました。そのような任務に就いてたからなのでしょうか、彼はシャーロック・ホームズのごとき研ぎ澄まされた知性と分析力を持ち、さらにランボーのごとき抜群の戦闘能力と殺傷能力を持った、いわば「文武両道」なキャラクターとして創出されています。賢いだけでも体力自慢だけでもない、この二つ合わさった部分が彼のキャラクターとしての面白さなんですね。
さてリーチャーは、ある日ぶらりと降り立った田舎町で、突然殺人犯として警察に逮捕されることから物語が始まります。もちろん誤認逮捕でありますが、なぜか警察内部では彼を犯人として仕立て上げようとする不穏な画策が巡らされています。なんとか留置所から出る事が出来たリーチャーでしたが、彼はこの町で巨大な陰謀が進行中であり、しかも関係無いはずの自分自身も、ある止むおえぬ事情から、どっぷりとこの事件に関わってしまっていることを知るのです。そして次々と目を覆うような残虐な殺人が行われ、さらにこの陰謀それ自体が、アメリカ全てを混乱に陥れる様な恐るべきものである事が徐々に明らかになっていくんですね。
お話それ自体は、ダシール・ハメットの描く『血の収穫』を思わせる様な、"アメリカの片田舎にある、悪に染まった町とその支配者"を追いつめてゆく、という物語の構造を成しており、それはさらにさかのぼれば、アメリカの西部劇などにも繋がっているのではないかと思います。その中で一匹狼のヒーローが、数少ない仲間を頼りにしながら、満身創痍になりつつも難事件を解決してゆく、というプロットは王道の冒険小説のもので、そこにジャック・リーチャーという文武両道の主人公を配している部分が新鮮であり、まさにシリーズのオープニングとして申し分のない出来となっているでしょう。面白いのは、こういったアメリカの片田舎を舞台にした西部劇を思わせる様な物語を、英国人作家が描いている、という部分なんですね。また機会があったらシリーズの別作品を読みたくさせる好作品でした。
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