■ジャックとジル (監督:デニス・デューガン 2011年アメリカ映画)
気のいいあんちゃん風コメディアン、アダム・サンドラーの映画って結構好きで、本国じゃあ大人気だけど日本ではDVDスルーされがちなこのサンドラー映画、どうやらオレ殆ど観ているみたいなんですね。サンドラーの何が好きってその気取らないところですかね。下ネタばっかり言ってるし、ぬぼっとしてるけど実は気の優しい大男、アダム・サンドラーってなんだかそういうキャラが多いような気がしますが実際も案外そういう人なのかもしれません。あといつもGAPあたりの適当な服着てたりとか、あんまりシェイプアップしてなさそな寸胴ボディとか、この適度なユルさがいいんですよね。映画のほうもユルユルになる一歩手前の適度にユルい作品が多くて、劇場よりも自宅でビール飲みながらこっちもユルユルになって観るがいいんですよ。だから実の所、DVDスルーでもよかったりするんですよね。そんな中この『ジャックとジル』は珍しく劇場公開されたサンドラー映画です。監督はサンドラー映画ばっかり撮っているといっても過言ではないデニス・デューガン、きっとサンドラーとは息もぴったりなんでしょうね。お話はアダム・サンドラーが双子の兄妹を一人二役で演じたコメディーなんですが、女装姿のサンドラーがなかなか汚い上に下品で、楽しい作品に仕上がっています。やり手ビジネスマンの兄はお騒がせキャラの妹にほとほと手を焼いており、なるべくなら関わり合いになりたくない、と思っています。このしょうもない妹のキャラに最初は笑わせられますが、実は彼女、家族と過ごしたいと願っている寂しがり屋だったりするんです。そんな彼女に観ているうち段々と同情してきてしまうんですね。さらにこの映画を盛り上げているのがアル・パチーノの本人役での出演!なんとアル・パチーノ、下品で汚い女サンドラーに一目惚れ、あの手この手でアタックをしかけてくるんですね。パチーノ、女の趣味悪い…。パチーノが出るのは知ってましたがカメオ出演程度だと思ってたら出ずっぱり、彼の怪演でなおさらお話がしっちゃかめっちゃかになってしまうんですね。そんなドタバタですが最後はサンドラー映画らしく「家族っていいな!」とばかりにしっかり締める、やはり安心のサンドラー印映画でした。
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■素敵な人生の終わり方 (監督:ジャド・アパトー 2009年アメリカ映画)
一方同じサンドラー映画で『素敵な人生の終わり方』ですが、こちらはDVDスルー作品になってしまいました。監督はジャド・アパトー、『40歳の童貞男』あたりが有名かもしれませんが、アダム・サンドラーをはじめウィル・フェレル、セス・ローゲン主演のコメディ映画を数多く撮っているアメリカンコメディの有名監督ということが出来るでしょう。お話は難病で余命幾ばくも無いこと知らされた大物コメディアンのジョージ(アダム・サンドラー)が自分のコメディアン人生を振り返りながら、若手コメディアンを発掘して桧舞台に立たせようとしたり、別れたかつての恋人に再び会って自分がどれだけ愛していたか、別れたことを悔やんでいたか告げようとする物語なんですね。いうなれば好き勝手やってきた自分自身の人生への罪滅ぼしということなんですが、このお話って、難病こそ患ってないものの、すっかり有名コメディ俳優になってしまったアダム・サンドラーそのものなんですよね。そして映画の主人公と同じように「俺って今までなにをやってきたんだろうなあ」とちょっとおセンチに自分の人生を振り返ってみた、それがこの映画だということができるでしょう。だからお話の感触は従来のサンドラー映画と比べると若干ブルーだしシリアスなんですが、難病ものだからといって決してお涙頂戴にはならず、むしろ自分の死を達観しつつ、自分の仕事や自分の人生にけじめをつけることを決めた男のお話になっているんですよ。この映画、脇を固める俳優がなかなかよくて、ジョージが見込んだ若手コメディアンにセス・ローゲン、他にも『マネーボール』のジョナ・ヒル、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のジェイソン・シュワルツマン、『ハンナ』のエリック・バナなど錚々たる面々なんですね。お笑いの第一人者であるジョージが普段の生活では孤独で不機嫌な性格で、そんな彼が若手コメディアンの面倒を見ようとする場面はオレの中ではなぜかビートたけしが被さってしまいました。そんなジョージのドラマと平行して、お笑いの世界で生きていこうとする若手コメディアンたちの友情や裏切りのドラマも描かれ、そういった部分で物語に膨らみがあってなかなか見せるんですね。そして後半はかつての恋人とよりをもどそうとするジョージの悪戦苦闘の様子が描かれてゆきます。ただこの映画、上映時間が2時間30分と結構な長さなんですよ。ジャンルがコメディのみにしぼられているわけではないし、そういった部分で日本の劇場じゃちょっとかけられないものになってしまったんでしょうね。確かにじっくり描かれた物語は決して悪くはないんですが、観ていてちょっと長いよなーとやっぱり感じてしまうのが残念でしたね。
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