Drexciyaを聴いていた

■Journey of the Deep Sea Dweller I,II

Journey of the Deep Sea Dweller I

Journey of the Deep Sea Dweller I

Journey Of The Deep Sea Dweller II

Journey Of The Deep Sea Dweller II

Drexciya。Gerald DonaldとJames Stinsonにより1992年に結成されたこのテクノ・デュオは、偏執的なまでに"水"というテーマに拘り、その出自を「アメリカへ向かうアフリカからの奴隷船の途上で落とされた妊婦の直接の子孫であり、海底世界に住みながら高度なテクノロジーを獲得した人種」とうそぶくなど特異なキャラクターを演出していた。独自性の強いその音世界は世界中に沢山のフォロワーを生み出していたが、2002年にデュオの片割れJames Stinsonの急死によりその活動は停止された。しかし今回、彼らのレア・トラックをコンパイルしたアルバムが2作リリースされ、彼らの未だ根強い人気を物語っている。
しかしそんなDrexciya、実は自分はこれまで1枚だけ、アルバム「Harnessed the Storm」を聴いていたきりで、そしてそのよさがいまひとつ分からず、熱心な聴き手ではなかったことは白状せねばなるまい。しかしつい最近、DJMixアルバム「Tresor Records 20th Anniversary」を聴いていたところ、そこに収録されていた数曲のDrexciyaの曲にすっかり魅了され、「これは一度きちんとDrexciya体験をせねばまずいのではないか」と思い立ち、先に紹介したレア・トラック・コンピ「Journey of the Deep Sea Dweller」のI、IIを購入、その異様な音世界に興奮冷めやらないまま、まだ手元になかったアルバム「NEPTUNE’S LAIR」と「Grava 4」もすぐさま手に入れ(ITMSで買える)、それ以来暫くDrexciya漬けの毎日が続いている。
しかしDrexciyaの音は、昔初めて聴いたときと同じく、それほどとっつきのいいものではない感じはまだする。ELE-KINGのWebページで野田努氏が「いわゆるDJフレンドリーな音楽ではない。DJには媚びていない......と言ったほうがドレクシアに関して言えば正確だ*1」と書いているように、キャッチーではないし、フロア向けのとことん乗りのいい(だけの)ものでもない。ただ、アルバムを聴き続けると、その音世界の中に、何か不穏な空気が内包されていることを気付かされるのだ。Drexciyaの不穏さ、そして不気味さというのは、そのSFともホラーともつかない創作的な出自から垣間見える、頑なにアグレッシヴな態度に由来しているのだろう。そしてそのアグレッシヴさというのは、それこそ海底で岩棚にへばりつく貝のような、頑固な非譲歩の賜物なのだろう。Drexciyaは拳を振り上げることも、宇宙の果てに逃避することもしない。ただただそこに居続けて、気持ちを不安にさせる電子音を発し続けていたのだ。
そしてDrexciyaの音の面白さは、その修飾の無いダイレクトなエレクトロ音に集約されるだろう。非譲歩の頑固さがそのまま音として結晶化…というより岩石化したような無愛想な音。決して踊らせてそれで終わりではないざらざらとした澱のような淀みのような音。高揚も酩酊もなく覚醒してゆく音。Drexciyaのこの音は唯一無二…とまでは言わないが、それでも自分がよく聴くエレクトロ・ミュージックの中では珍しい種類の音であり、それと同時に「この音色はいったいなんなのだろう?」と常に考えさせてくれる音であり、そういった部分で興味の尽きないアーティストであり続けているのだ。

■NEPTUNE’S LAIR

NEPTUNE’S LAIR

NEPTUNE’S LAIR

■Harnessed the Storm

Harnessed The Storm

Harnessed The Storm

■Grava 4

Grava 4

Grava 4