ハップとレナード・シリーズの掉尾を飾る作品〜『テキサスの懲りない面々』

■テキサスの懲りない面々 / ジョー・R・ランズデール

テキサスの懲りない面々 (角川文庫)

テキサスの懲りない面々 (角川文庫)

落ちこぼれ白人ハップ・コリンズは、鳥肉工場の見張り番として日銭を稼ぐ毎日。ある日、暴漢に襲われた娘を助けると、彼女はなんと鳥肉工場のオーナーの娘と判明。礼として大金と休暇を与えられたハップは、悪友レナードを誘いカリブ海クルーズへと繰り出した。だが、そんな幸運が続くはずもない。船に乗り遅れてメキシコに取り残された二人は、悪徳警官たちの襲撃に遭い、老漁師とその娘のトラブルに巻き込まれ、マフィアに目を付けられる羽目に…。最大のピンチにテキサスの仲間たちが大集結、かつてないスケールでおくるシリーズ最新作。

2001年に本国で出版されたこの『テキサスの懲りない面々』は"ハッブとレナード"シリーズの最新刊であると同時にどうやら最後になるらしい作品のようだ。作者からシリーズの終局宣言が出されたかどうかは知らないのだが、とりあえずこれ以降"ハッブとレナード"シリーズは書かれていない。
内容のほうもこれまでハチャメチャにすっ飛ばして書かれていた二人の様子がどうに大人しめに書かれているのだ。物語展開はこれまでの焼き直しのような匂いがするし、構成もどうも行き当たりばったりのように感じるし、なんといっても主人公のハップがなんだか感傷的でグズグズ言ってばかりで生彩に欠けるのだ。これは前作で暴れすぎ、悪人とはいえ大勢の人間をぶっ殺してしまったことへの反省が込められているのだが、どうも作者自身もちょっとやりすぎた、と感じていたのかもしれない。ラストもなにか唐突な気がする。
この全体的な雰囲気から、作者が既にこのシリーズに引導を渡すつもりでこの作品を書いたような気がしてならないのだ。ランズデールはこの作品の前後の時期に作風が変化したという話もあり、こういったパルプ・フィクション的なノワールを書くことに飽きただけなのかもしれない。それに、主人公ハップがいつまでも落ちこぼれ白人であり続けたまま物語が続いてゆく、というのもある意味酷な話でもあるし、ここらで潮時かな、と思ったのだろう。そして物語は前作までに登場した仲間たちも勢揃いで大団円を迎える。あーでも、やっぱりもっとこのシリーズ、読みたかったな。