あれこれCATVドラマ観た〜『ハップとレナード』『ゲーム・オブ・スローンズ 第六章』『死霊のはらわた リターンズ』

■ハップとレナード〜危険な2人〜


ジョー・ランズデールの長編小説「ハップとレナード」シリーズといえばオレの最高にお気に入りのクライム・ノベル・シリーズだ。80年代のアメリカ南部を舞台に、草臥れまくった白人中年男ハップと黒人ゲイ・レナードのコンビ(ただし二人はあくまでただの友人)が、南部独特のドロドロしたおぞましい事件に巻き込まれる、というのがあらかたの内容となる。原作小説はあらかた読んでいて、オレのブログで「ハップとレナードシリーズまとめ - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ」としてまとめてあるから興味の湧いた方はドウゾ。
さてその「ハップとレナード」シリーズがドラマ化されたというからオレは居ても立ってもいられなくなったのである。しかもDVDやBlu-rayの発売ではなく、Amazonオリジナル作品であり、Amazonビデオのみで視聴可能なのだ。そんななので思い切ってAmazonプライムに加入し、遂にこの『ハップとレナード〜危険な2人〜』を観ることが出来たという訳である。しかもこの物語、シリーズで唯一翻訳書籍化されていない第1作『Savage Season』のドラマ化というではないか(実はここに全訳がある)。これはさらに楽しみだ。
物語は仕事(しょぼいバラ農園)を失い八方ふさがりになっていたダメ男ハップの元にかつての妻(なんでだか超グラマー)が現れ、危険な仕事を依頼する、というもの。ハップはうんざりしまくっているレナードの助けを借り、その仕事を請け負うが、その果てには裏切りと死の罠が待ち構えていたのだ。冒頭こそなにやら怪しげに始まるお話だが、これが後半、血で血を洗う冷徹かつ残虐な展開へとどんどんなだれ込んでゆくのが素晴らしくいい。ハップとレナードが関わったのは60年代ヒッピーカルチャーの末裔みたいな連中で、こいつらのダメさ加減がまた味わい深い。そう、この物語にはハップとレナードを含め負け犬しか出て来ないのだ。そこがまたいい。負け犬同士で潰し合い、そこにさらに理解不能の狂人が登場する。これはもはや地獄の有様だ。
とはいえ、この物語はクライム・ストーリーを語るだけで終わっていない。ハップと元妻との悲しい過去、さらにハップとレナードが出会うきっかけとなった子供時代の悲しい事件も描かれ、物語に大きな膨らみをもたらす。ハップとレナードは単なる負け犬ではない。彼らは、現実が悲しすぎるものだから、あえて負け犬であることを選んだのだ。そんな深いドラマ性が胸に響く逸品だった。続編もあるというから、いよいよシリーズ全篇が映像化されるのか。あの至高の超バイオレンス作『罪深き誘惑のマンボ』もか!?うわあ、これは物凄く楽しみだぞ!

ハップとレナード〜危険な2人〜(字幕版)
ハップとレナード〜危険な2人〜(吹替版)

ゲーム・オブ・スローンズ 第六章: 冬の狂風


ジョージ・R・R・マーティンファンタジー小説氷と炎の歌』シリーズを原作としたテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』も遂に第6章である。物語は中世ヨーロッパを模した世界を舞台とした剣と魔法とドラゴンの登場するファンタジーであるが、入り乱れまくった人間関係、常に小競り合いを続ける一触即発の王国派閥、そして北方から押し寄せると言われる人外の軍団の恐怖を描いたひたすら重厚な物語なのだ。そしてまたこれが観ていてどんよりしてしまう鬱展開が毎話これでもかと連打されるのである。まあこれが病みつきになる原因でもあるが。
それにしても第1章が放映された2011年から足掛け6年、第6章までで全60話、いやあ、長い長い……。しかもあまりに登場人物が多く舞台となる国々も多岐に渡り、その中で敵か味方かも判別しない陰謀術数が乱れ飛ぶので、はっきり言ってオレは物語全てを把握できていない。毎回「これは誰?ここはどこ?こいつとこいつに何の因縁があるの?」と頭に「???」をいっぱい浮かべて観ているザマなのである。
ただ基本的な大筋と言うのはあって、それは瓦解した北方王国の再建と北から来る人外の軍団との戦いの予兆であり、さらに南方に追放されたかつての覇王の娘がドラゴンを駈って王都奪還を目指す物語である。今回の第6章では第1章で描かれた様々な破綻と怨恨とがようやくぐるりと回ってこの物語がどこを目指そうとしているのか明確な輪郭を現してきたのである。それは北の氷原からやってくる者たちを表わす「氷」と、南からやってくるドラゴンの「炎」がいよいよ対峙する様になったことの予感だ。それはきっと王都を蹂躙するのだろうが、同時に北と南とが最終的に融和するであろう予兆でもある。だからこその原作タイトル『氷と炎の歌』なのだろう。
ホントここまで来るのが実に長かった。本国では第8章をもって終章とすることがアナウンスされているが、確かにこの流れだとあと2章をたっぷり使って終焉を迎えるであろうことが見えてきた。いやあ、今までも盛り上がってたけど(どんよりと)、これからのラストスパートも相当盛り上がりそうだなあ。

死霊のはらわた リターンズ


あのアッシュが帰ってきた!?というホラー・コメディ、『死霊のはらわた リターンズ』である。そう、かつてサム・ライミ監督により製作された伝説のグヂャグヂャドロドロ&大バカ・スプラッター・ホラー映画『死霊のはらわた』3部作の続編が、TVドラマになって戻ってきたという訳である。当然主人公はブルース・キャンベル演じるアッシュ、片手にチェーンソーを装着したニクイ奴である。そもそもこの設定で大バカである。
アッシュは30年前、きったない山小屋で『死者の書』なる悪霊召喚術の本に呪われ、まあなんというか夥しい死体を築いてきた中で生き残った男なのである。そんなアッシュが所持していた『死者の書』の呪文をうっかり詠んでしまったばっかりに、この世界に再び悪霊が召喚されてまたぞろ町は血の海死体の山さ!というのが本作になる。それにしても「うっかり」って。要するに全部アッシュのせいなのである。しかし本人はすっかりヒーロー気取りで(バカだから)、「悪霊は俺が退治する!」とはりきってるのである。やっぱりバカである。
このドラマではそんなアッシュのバカ振りと、彼と対決する悪霊のグヂャグヂャドロドロの造形、そして「これTVでやっていいのか」と思わせてしまう大量の血!血!血!が見所となるのだ。だから物語というよりもどんだけバケモノが出て人体が破壊されて床中血塗れになるのかだけをひたすら楽しむドラマとなっているのだ。そしてさらに、バカなのである。即ち、この『死霊のはらわた リターンズ』では、「楽しいことしか起こらない」のである。ああなんと素晴らしい作品であろう。続編も放送されるそうなんで超楽しみ。