■フィリップ、きみを愛してる! (監督 グレン・フィカーラ 、ジョン・レクア 2009年フランス・アメリカ映画)
実を言うとゲイが主人公の映画というのが結構好きである。オレ自身にその気があるのかどうかは別として、彼らのエキセントリックさとその困難で鮮烈な生き方に妙に共感してしまうのだ。だからジム・キャリーとユアン・マクレガーがゲイ役で主演しアハハウフフと絡み合う映画があると聞いて是非観なければなるまいと公開初日初回に劇場へ足を運んだが、決してゲイ映画という枠に留まらない天才詐欺師の数奇な運命を描いた実に破天荒な佳作であった。しかもこれ、ひたすらメチャクチャでアナーキーなお話なのに実話であるということがなにしろ凄い!!
粗筋はこんな感じ:主人公スティーヴン・ラッセル(ジム・キャリー)は妻子ある平凡な家庭を営む男であったが、ある事故をきっかけに自分に正直に生きることを決意する。それは…自分がゲイであるということ!カミングアウトしたスティーブンは目覚めたかのようにド派手なゲイライフを満喫し豪遊三昧であったが、先立つものを得るためにあちらこちらで詐欺を繰り返す。当然警察のお縄になりムショに送られたスティーブンは、そこでシャイでキュートなフィリップ・モリス(ユアン・マクレガー)と出会ってしまう。ムショで愛を育む二人はやがて出所するが、愛するフィリップのためにスティーヴンは再び詐欺を繰り返すようになる…というオハナシ。
顔つきも動作もひたすらくどいジム・キャリーが怪しい生え際をテカらせながら「ゲイ最高!」とばかりに無意味にポジティブな人生を謳歌するそのハイテンションぶりにまず圧倒される(ドン引きするとも言えるが)。そしてどんなにムショにブチ込まれようが全く反省の色を見せる事無く詐欺を繰り返し「オレのゲイ道」を生き続けるところがまたスゴイ。それもこれも愛する人の為だから…ってなんて汚れたピュアぶりなんだ!しかもその詐欺師ぶりがただごとではない。学歴詐称して大手企業に潜り込むだけではなくそこで業績まで上げてしまうのだ!そしてクライマックスではなんと映画を観る観客まで騙してしまう!オレもすっかり騙された、というか、こんなことが本当に出来るのか!?と唖然としてしまった。実際のスティーヴン・ラッセルはIQ169あったという話だが、単なる小悪党には収まりきらない正真正銘の天才詐欺師ということができるだろう。
相手役となるフィリップのか弱気なゲイっぷりもまた堪らない。特にムショの移転でスティーヴンと引き離されることになり、「ホモだってイジメられちゃうから決して中庭には出ないの」と言っていた中庭を、スティーヴンの乗ったバスを追って駆け抜ける(しかも内股で)シーンはゲイならずとも涙を抑えることができないであろう!?そんなフィリップを愛するスティーヴンは、愛するが故にフィリップに嘘の自分を演じてしまい、嘘の上に嘘を塗り固めて生きてしまうという人生がまた哀しい。そういった意味ではきちんと愛についての映画でもありうるのだ。一見キワモノっぽい印象をあたえる映画ではあるが、暴走するスティーヴンの愛の強さとその詐欺師の手腕に大いに驚かされる映画として、是非お薦めしたい一作である。
■フィリップ、きみを愛してる! 予告編
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