最近ダラ観したBlu-rayだのDVDだの〜『ロックアウト』『コロンビアーナ』『エージェント・マロリー』

ロックアウト (監督:スティーヴン・セイント・レジャー、ジェームズ・マザー 2012年フランス映画)

リュック・ベッソン製作による「ああ、ベッソンまたやっちゃった…」と思わずにはいられない乱暴SF映画です。この場合乱暴とはザツという意味であります。軌道上に浮かぶ極悪受刑者専用の監獄宇宙ステーション「ヒャッハー!」で叛乱が起こり、たまたま居合わせた大統領の娘がヒャッハー!な皆さんに拉致された!それを救う為、元CIAの問題児である主人公が送り込まれる、というお話なんですが、例によってベッソン一流の大味ぶりが炸裂しております(あ、すいません、宇宙ステーションの名前は嘘です)。っていうかこの筋、なんか「ニューヨーク1997」ぽいっていうか、宇宙監獄を舞台にしたB級映画ってなんかなかったっけ…。しかもこの映画、一応SFの体裁をとっていますが単に舞台が宇宙ステーションってだけの話で、SFである必然性が限りなく皆無であり、実際これが人跡未踏の荒れ地でも南海の孤島でも全然構わない内容なんですよねえ。あとこれだけは言わせてもらいたいんですが、大統領の娘がブス。ただでさえ盛り上がらないお話がこの不細工な大統領令嬢のお蔭でさらに物悲しい効果を上げることに成功しております。まあしかしベッソン映画って、全否定するつもりはなくて、毎回掴みはOK!で、なんとなく期待を持たせられてしまうんですよねえ。まあその後掴んだまんまどっかにいなくなっちゃって「おいおい!?」って気にさせるんですが。力押しだけで十分通じる物語ならこの人はそこそこの仕事が出来るのでしょうが、ディテールの積み重ねやマニアックさや知性の必要なお話は向いてないんだなあ。

コロンビアーナ (監督:オリヴィエ・メガトン 2011年アメリカ/フランス映画)

コロンビアーナ [Blu-ray]

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リュック・ベッソン製作・脚本による「ああ、ベッソン悪い意味でブレがない…」と思わずにいられない乱暴なアクション映画です。当然この場合も乱暴とはザツという意味であります。幼い頃両親を麻薬カルテルにぶっ殺された少女が大人になり、殺し屋となりながら復讐を誓う、といった物語で、まあまあ設定だけなら幾らでも面白くできそうだし、実際冒頭の少女逃亡シーンのスピード感はこの後の展開を期待させるものでしたが、やっぱり本編に入ってから不動のお粗末さがブルドーザーのように物語を席巻してゆくのでありますよ。例によって掴みはOK!のままその後急速に集中力を失ってしまうといういつものベッソン映画であります。留置所を舞台にした最初の暗殺シーンだって「巧妙かつ狡知に長けた完全な犯行」を見せたかったのでしょうが実際は突っ込み所ありまくって見ていて悲しくなるばかりかむしろ見なかったことにして自分の心の優しさを実感したい、とすら思わせるようなインチキさであります。逃亡した少女の頼る叔父さんとの人間関係も幾らでも人間味溢れるものにできたはずなんですけれども、やっぱり設定だけしといてあとは話を膨らませないし、そもそも大人になってからの主人公に人格の欠片も感じさせないのはこれも動機の設定だけしといてあとはロボットみたいにドタバタ暴れさせているだけだということでありましょう。で、最後は敵の邸宅に特攻しかけますが、いやだったら最初からそうしろよ、と思わないでもなかったのでありました。

エージェント・マロリー (監督:スティーブン・ソダーバーグ 2011年アメリカ映画)

スティーヴン・ソダーバーグ監督が女子総合格闘技界のスターとして名を馳せるジーナ・カラーノさんを主演抜擢して制作したアクション映画であります。ジーナさんの役柄は民間軍事企業の雇われ女スパイ、まあ言うなれば諜報活動も出来る傭兵ってことなんですな。ジーナさん演じるこの女スパイが任務遂行中に罠に嵌められ命を狙われ、孤立無援のまま陰謀と戦う、といったお話なんですな。とても役者さんに好かれるソダーバーグ監督、この映画でもユアン・マクレガーマイケル・ダグラスアントニオ・バンデラスなんている豪華メンバーが脇を固めております。ただ映画の出来はといいますと、なんかこう、微妙なんですわ。よくあるアクション映画、スパイ映画を期待して観ているとなんだか肩透かしを食わされる、妙なテンポなんですわ。音楽にしろカットにしろソダーバーグ監督独特の気取りと言いますか格調の高さが邪魔をして、アクション映画なんだけどどうもダイナミックさやフィジカルさに欠けるんですわ。ある意味脱構築化されたアクション映画ということも出来るのかもしれませんが、こういった部分が格闘家ジーナさんの演出にも災いしたのか、「多分本当に物凄く強い人なんだろうなあ」というのは見てて分かるんですが、映画としての見た目のキレに乏しく感じるんですね。ジーナさんの強力さを画面の中に引き出し切れていないように見えるんですよ。そういった部分で惜しい映画でしたね。