ウィル・フェレルの新作コメディは「俺たちタイムトラベラー」な映画だった!?

■マーシャル博士の恐竜ランド (監督:ブラッド・シルバーリング 2009年アメリカ映画)


博士「オレは天才科学者だ。という訳で今回タイムワープ装置を完成させたわけなんだが」
助手「おお!なんと素晴らしい!これで女子の入ってるお風呂も覗き放題ですね!」
博士「ちゃうちゃう。それタイムワープと関係ないから。オレが発明したのは時空を飛び越え異次元世界にも行くことが出来る画期的な装置なんだから」
助手「なんと異次元世界!串かつの店が並び通天閣のそびえるビリケンの町ですな!一回行ってみたかったんですよ!」
博士「それは大阪新世界だっちゅーの。まあある意味あそこも異次元世界と言えない事もないがな」
助手「すると光の壁を飛び越え相対性理論をも凌駕する超絶的な理論により完成された素晴らしい発明ということなんですね!」
博士「分かってんなら最初から言えっつーーんだよこのヴォケエェッ!…で、このタイムワープ装置で最初にどこに行きたいかな?」
助手「ええと…女子の入ってるお風呂!」
博士「いい加減にしなさい!」

俺たちフィギュアスケーター』『俺たちダンクシューター』のウィル・フェレル主演の珍妙SFコメディである。ウィル・フェレル演じるマッドなサイエンティスト・マーシャル博士が、彼の発明したタイムワープ装置により女子大生のホリー(アンナ・フリエル)、荒野の土産物売り屋ウィル(ダニー・R・マクブライド)ともども訳の分からない異世界に放り込まれてしまう、という物語なのである。彼らが辿り着いた異世界は3つの月が昇る文明の崩壊した砂漠の地球、そこで3人はお調子者の類人猿チャカ(ヨーマ・タッコン)をお供にし、しつこいティラノザウルスや巨大吸血蚊、巨大ガニなどに追いかけられながら、宇宙を支配せんと企む爬虫類人間軍団と戦うのだ!マーシャル博士一行は爬虫類人間軍団の野望を打ち砕けるのか!?そして無事に現代の地球に帰ることが出来るのか!?

恐竜、類人猿、破滅した地球、異星人、そんな必然性も統合性も何もない思いつきだけでちりばめられたであろう味噌もクソも一緒なSF世界が既にユルユルなのである。そしてそこでウィル・フェレルが相変わらずのユルユルなギャグを飛ばしまくるというユルユルな映画なのである。なんかもう失敗したRPGのシナリオとか小学生の書いたSF小説を読まされているようなとっ散らかり方だ。この何でもアリな世界観は逆にアクション・ゲームなどでよく見かける世界観かもしれない。それだけハチャメチャなのであり「異世界だしバカ映画なんだからリアリティなんていらないっしょ?」と開き直ってるかのごときシュールな映像と物語展開なんである。これで子供向けというのならまだ諦めも付くがウィル・フェレルらしいシモネタ・ハッパネタは大人しいながらもやっぱり健在で、「ま、ウィル・フェレル映画なんだからユルユルなのもしゃーねーか」と思いつつ生暖かい目で観るユルイ映画であることは否めない。

原作となっているのは70年代に人気を博したテレビのアドベンチャー・ドラマ・シリーズということなのだが、そういった面で見るともともとは子供向けドラマであったものをウィル・フェレル御一行様がアホアホにぶち壊してみました、という映画ということも出来るかもしれない。監督のブラッド・シルバーリングは『キャスパー』や『シティ・オブ・エンジェル』、『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』などを監督しており、それほどメチャクチャな作品を撮っている訳でもないことを考えるとコメディ映画だからってんで逆に緊張し過ぎたか緩くし過ぎたってことなんだろうな。まあウィル・フェレル・ファンのこちらとしては今さらウィル・フェレルのユルユル振りをどうこう言うつもりもないし、こうして無事に日本で劇場公開されたことは何より嬉しかったりする。観る人を選ぶ怪作ではあるが愛嬌があってバカバカしいコメディ映画ってことでオレは納得することにした。

■マーシャル博士の恐竜ランド 予告編