ニヒルな女戦士とパンクなモヒカン頭が血で血を洗う切り株映画はボンクラ映画ファンの桃源郷だった!?

ドゥームズデイ (監督・脚本:ニール・マーシャル 2008年アメリカ映画)

"面白い映画"には多分2種類ある。1つはキャッチーで時代を映すようなテーマとバランスの良いプロダクション・ワーク、才能のある人材によって作られた、観た者誰もが賞賛するような名作だ。そしてもう1つはイビツだったりビンボ臭かったりテーマが狭くてマニアック過ぎたり監督が趣味に走っちゃったりして、万人が評価するとは考え難いものではあるが、しかしその映画に"選ばれた者"にとっては極上の味わいを持ち「オレが観なけりゃ誰が見るんだよ!」と思わせるジャンル作品である。"一般的な名作"は手放しで褒めてもDVD出たら買うか?というとそういうことはなかったりするのだが、"マニアックな名作"は劇場で映画が始まり最初の3分で「DVD出たら絶対買っちゃる!んで舐めるように何度も観まくり作品世界にはまりまくっちゃるでえ!」と確信させる映画なのだ。この映画『ドゥームズデイ』は明らかに後者に属する傑作である。ええとね。メチャクチャおもろかったぞおおおおおおお!!!!

物語は2008年、スコットランドを襲った恐るべき殺人ウィルスの伝染から始まるのである。アホアホ政府は「有効なワクチンもないしメンド臭いからでっかい囲いでこいつらみんな閉じ込めちゃって勝手に死んでもらわね?」という事でスコットランド全土を数百万人の住民もろともゴツイ鉄の塀で覆ってしまうという無茶苦茶な決定を下すのだ。そして27年後の2035年、今度はロンドンで忘れ去られていたはずの殺人ウィルスが発生、「いーじゃんまた封鎖すれば」などとハナクソ官僚が言っている時、「いやなんかスコットランド上空の監視衛星が生きてる人間を撮影してるんっすよ。ワクチンあるかもしんないからヘータイ行かせて探させましょうよ」ということになったのである。今まで放っておいて実に都合の良い話である。そしてそこに派遣されたのはクール&タフな女戦士エデン・シンクレア(ローナ・ミトラ)率いる精鋭部隊。しかし彼らを死の国スコットランドで待っていたのは『北斗の拳』の読み過ぎみたいなパンクなモヒカン軍団だった!?エデンとそのチームはワクチンを手に入れ無事生還することが出来るのかッ!?というお話である。

もうね。誰もが言ってるけど、どこまでも『ニューヨーク1997』であり『マッドマックス2』なのである。冒頭の殺人ウィルスパニックなんかは同じくイギリスが舞台の『28日後…』あたりと被るだろうし、他にも探せばあれこれ出てくるんだろうが、なにしろ『ニューヨーク1997』で『マッドマックス2』なのだ。どこが、とかここが、とか言うレベルではなく、どこまでもこの2作のテイスト満載なのである。オマージュという言い方もあるだろう。しかしパクリというレベルの低いものでは決して無い。完成したこの映画の無類な面白さは、決してパクリなんぞで成立するものではなく、監督自身の比類なき"ボンクラ映画愛"が結実したものだと言っていい。むしろ、オマージュなどという奥歯に物の挟まったような言い方ではなく、"近未来""世紀末的""モヒカンのザコ""クール&ニヒルな主人公"が登場する映画を総称して《ドゥームズデイ・テーマ》と呼んでもいいような気さえする。その答えは無法!廃墟!悪逆非道!バイオレンス!ノーフューチャー!であり、西部劇の昔から連綿と続くボンクラ映画の系譜を正しく継ぐジャンルだという事が出来るはずだ。

だから要するにだ、『北斗の拳』にせよ『バイオレンス・ジャック』にせよオレのボンクラ&中学生の血が燃えるのは皆このジャンルなわけだし、オレはとってもこういうのが大好きだからこれからももっとこのテーマで映画作ってくれりゃあいいんだよ!ってか誰か作りやがれ!そしてこんな映画を撮りやがったニール・マーシャル万歳!途中謎の中世甲冑の世界&馬による追撃みたいな変な展開もあるけどこういうダレ方までカーペンターの真似する所が最高!わめくかうめくしか語彙の無いモヒカンのキチガイども最高!意味も無く馬鹿馬鹿しいまでにあたりかまわず血塗れ切り株だらけの特殊メイク最高!あとクライマックスのカースタント最高!こういう"肉弾を忘れない"姿勢もタランティーノの『デス・プルーフ』を髣髴させて男を上げてるぜニール・マーシャル!前作の『ディセント』はちょっと好きじゃなかったけどこの『ドゥームズデイ』で全部チャラだ!そしてヒロイン役のローナ・ミトラは凡作だった『アンダーワールド:ビギンズ』をその魅力で底上げしていたようにこの映画でもいい味出しまくってたぜ!新たなアクション・ヒロインとなるべーか!?

ドゥームズデイ 予告編


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