それは執事喫茶だった!?

オレの会社の若いヤツ、その髪型から「スダレくん」と呼ばれている I 君なんだが、仕事中の動きを何気なく見ていたら妙に立て膝のポーズが様になっている。羽のように軽やかに膝を折るその佇まいは実に優雅で、胸に強い情熱を秘めつつもどこか愛いの篭った感傷さえ感じさせるではないか。いうなれば脱構築されたドイツ・ロマン主義文学的な立て膝なのである(すいません書いているオレも意味分かりません)。

オレ「ううむ I 君。君の立て膝は妙にキマっているな。ある意味この市内一とも言えるぞ」
I 君「…あの、市内一ってかなり狭くないですか?」
オレ「いやいやそんなことはない。この立て膝のために毎日ヒンズースクワット1000回こなしているのか。さては幼少時からスパルタな親父から立て膝養成ギブスを無理矢理装着させられ、その因業な親父が天の星を指差して「見よ!あれが立て膝の星じゃ!」とか訳の分からない事を言ってるのを聞かされ、そして君の姉がその姿を木の陰から覗き見て涙を流している、とまあそういった情景が幼少時から君の家庭で展開していたと見たがどうだその通りだろ」
I 君「ええと、姉はいないしそもそも言ってる事が分からないんですが…」
オレ「ではなんだその優美な立て膝は!吐け!吐きやがれ!」
I 君「あ、いや、以前こんな仕事やってたことはありますよ」
オレ「なに!?」
I 君「ええとボク、昔執事喫茶に務めてたんですよ」
オレ「ええええええええッ!?」

そう。 I 君はなんと執事喫茶に執事な店員として勤めていたのだという。「じゃあ"お帰りなさいませお嬢様"とか言ってたのか!?」と訊いたら「違います。"お嬢様お帰りなさいませ"が正しいです」などと事も無げに言うではないか。勤め先は勿論筋金入りの腐女子たちが跳梁跋扈する池袋、そう、女オタクの聖地乙女ロードでも知られる(ってかオレあんまりよく知らないんだが)あの池袋である。

確かに I 君、イケメンとかそういうのとはちょっと違うがミョーになよっっとした優男で、後でこっそり事務所にいる女子に訊いたら「可愛い感じがする」というルックスなのである。それにしてもオレの後輩に執事喫茶勤務経験者がいるとは世の中分からないものである。まあ頭はスダレだしパッチンを常に4つも付けてるがな!だいたい執事でお嬢様でスダレでパッチンとはなんなんだよ最近の若い男はッ!男なら角刈りフンドシ!酒は大五郎の4リットルボトル!食いモンはカツ丼!スポーツ観戦は相撲!憧れの職業は自衛隊!読む本は風俗案内誌!とそう決まってるだろうが!みんなどいつもこいつもなよなよなよなよしやがって!などと憤懣遣るかたないこのオレなのであった。