U.S.A.バージョン グラインドハウス

クエンティン・タランティーノ監督作『デス・プルーフ』と、ロバート・ロドリゲス監督作『プラネット・テラー』の”2本立て興行”として企画製作されたのが【グラインドハウス】である。【グラインドハウス】とは「60〜70年代のアメリカに数多く存在した、B級映画ばかり2〜3本立てて上映する劇場の総称」であり、今回の2本の作品はこの時代の低予算映画にオマージュを捧げて製作されたものであるらしい。

ロッキー・ホラー・ショー』にも《SF映画2本立て》なんて曲があるぐらいだが、タランティーノやロドリゲスに限らず、有名監督が映画少年だった過去を回顧する映画を撮った作品には、結構これらB級映画2本立ての劇場がちょろっと出てきているような気がする。特にジョー・ダンテ監督『マチネー/土曜の午後はキッスで始まる』はB級ホラー映画館を舞台にした青春ムービーで、これらの監督が映画監督になろうとしたルーツが垣間見えて面白い。思うんだが、このB級映画2本立て映画館というのは、これらの映画監督にとって、日本に住むオレ等にとっての『少年ジャンプ』的な、一つの魂のふるさとの様なものだったのでは無いだろうか。

こういうオレも東京に上京したての頃は、映画を観る時はロードショーではなく安い2本立名画座に足繁く通っていたものだ。今でこそビデオ・DVDが当たり前にレンタルでき、あまつさえそれを買って所有することは簡単ではあるが、オヂサンの青年時代はそんなものなんか無かったから、情報誌と首っ引きになり、過去の有名映画が上映される映画館を見つけたら、どこであろうと出向いて観に行ったものなのである。有名どころでいうと池袋文芸座、大井武蔵野館、自由が丘武蔵野館あたりに良く通っていたもんだ。池袋文芸座で観た『ロッキー・ホラー・ショー』と『地球の落ちてきた男』の2本立てにおけるロッキーホラーマニアのパフォーマンス、大井武蔵野館で観たロシアのホラー・SF映画特集、自由が丘武蔵野館で観たマルクスブラザース映画特集など、今でも忘れられないプログラムが数多くあった。実を言うとこの頃、オレはただのプータローで、バイトで生活費を稼いではたまの休みを映画を観ることで費やしていた。朝から晩まで、何軒も映画館をハシゴして、それこそ腰が痛くなるほど映画を観まくっていたものだ。あまりいい思い出のない時代ではあるが、あの頃、オレは映画を観ることでなんとか現実をしのいでいたのかもしれない。

今回のこの『USAバージョン グラインドハウス』は、アメリカでの上映形態と同じ2本立てで上映する限定公開である。通常ロードショーではそれぞれバラで公開されることになるが、架空の映画予告編3話(メッチャ面白い!実際に映画化されることになったって本当なのか?「マチューテ」観たい!)を間に挟んだこちらの上映形態のほうが、よりタランティーノ/ロドリゲスのコンセプトを明確に知ることが出来るだろう。というか、日本でもこの2本立て上映形態で公開することを知らず、『デス・プルーフ』の前売りチケットを既に購入していたのであるが、ワッシュさんの日記『男の魂に火をつけろ!』を読んでUSAバージョン上映を知り、前売りチケットをかなぐり捨てて観に行ったオレである。ワッシュさん本当にありがとう。と言う訳で映画紹介前にまたもや意味も無く長くなってしまったオレの文章!それなんで2本の映画紹介はまた明日に続くと言うことで!お楽しみに〜。

ちなみにフェイク予告編は、インディアン顔の悪役で有名なダニー・トレホが主演を張るロバート・ロドリゲス監督の『Machete』、『ホステル』のイーライ・ロスが監督する、感謝祭を舞台にしたなんだかオマヌケな映画『Thanksgiveng』、『ショーン・オブ・ザ・デッド』のエドガー・ライト監督によるやっぱりマヌケそうなホラー『Don't』、『マーダーライド・ショウ』のロブ・ゾンビが監督し、なんとウド・キアニコラス・ケイジが出演している『Werewolf Women of the S.S.』だ!これらは【U.S.A.バージョン グラインドハウス】でしか観られないという話だが、ホントに単独ロードショーではやらないのかな?と言う訳で【U.S.A.バージョン グラインドハウス】を見られない方の為にYouTubeで動画探して見つけたので貼っておきます。ただこれ、出所がアヤシイのですぐ削除されるかもしれないから要注意だ!

■Grindhouse faux trailer:【Machete】


■Grindhouse faux trailers:【Thanksgiveng】【Werewolf Women of the S.S.】【Mexican food(架空の食堂CM)】【Don't】