浴衣出勤

「浴衣出勤ってどうよ?やってみたい?グフフ」
とF係長はスケベ根性丸出しで美少女受付のKちゃんに訊いた。
するとKちゃん、「いいですねえ、みんな可愛いですよう」という返事。
「そうだろなあ、可愛いだろうなあ、Hちゃんなんか特に可愛いだろうなあグフフ」などと言いながら美人受付のHちゃんにさり気無く振るF係長。
「あー、浴衣可愛いかもしれませんねー。」とにこやかに笑いながら屈託無く話を合わせる美人受付のHちゃん。
さすがエロ爺の扱いが手馴れている。
各々の浴衣姿を思い浮かべ、あらぬ妄想にうっとりとするF係長。
そこでKちゃん、「だけどわたし浴衣持ってないんですよう。買ってくれるんなら着・て・も・いいけどなあ」と上目遣いにF係長を見上げる。
すっかり小悪魔予備軍だ。
そこでF係長の薄暗い心の奥底に火が付いた。
「買っちゃる!なんぼでも買っちゃる!着てくれるんなら君ら皆に買っちゃる!」逆上気味に吼えるF係長。
つくづく恥も外聞も無い男である。
「えーほんとですかー。」失笑を堪えながら顔を見合わるKちゃんとHちゃん。
そしてKちゃん、「でもね、女の子だけ、っていうのもなんだから、男の人も浴衣着てくださいよ」と卑しい妄想に鼻息を荒くしているF係長に要求する。
「あー、男ね、はいはい、男もね。」
Kちゃんの一言で桃源郷の如き嫌らしい妄想のなかに会社の男連中の浴衣姿が現れ、急速に萎えながら適当に答えるF係長。
「あ、F係長は別ですよ。」心を見透かしたようにKちゃん。
「F係長は、ブログでよく着ている全身黒タイツがあるじゃないですか。あれ着てきてくださいね。」
そう、F係長は年甲斐も無くしょうもないブログを書いており、その中で何をとち狂ったか自らの全身黒タイツ姿を曝した事があるのである。
「ええええっ!あれっすかあ!」一瞬うろたえるF係長。
しかし。F係長は考えた。
うら若き女子社員達の浴衣姿が見れるなら。見れるなら。
全身黒タイツの一着や二着、着たって構いやしねえ!
「おっしゃあ!」訳の判らないガッツポーズをとるF係長。
既にドン引きしまくっているKちゃんとHちゃん。
もはや守るものも捨てるものも無い彼を、止められるものは誰もいない。


ちなみにF係長4○歳、厄年を終え、嫁が来る気配は全く無い。


(↓全身黒タイツでくつろぐF係長。既に普段着らしい。)