キス・キス/ロアルド・ダール

キス・キス (異色作家短編集)

キス・キス (異色作家短編集)

開高健訳、ということで既におおっとか思いましたがすいません開高健って興味無かったです…。巻頭の『女主人』は短編の名作と言われていますが、この思わせオチは今だとちょっと弱いかもなあ。作品全体がどこか当時のアメリカのミドルクラスが普通に読んでいる雑誌に掲載されていたと思わせるような、中庸で破綻の無い完成度の物が多く、どこか突出した危うさと言うものがあまり感じられないんだよね。ってかロアルド・ダールって『あなたに似た人』ぐらいしか読んだこと無いなあ。作品に多く見られる傾向はありふれた日常にちょっとずつむず痒いような影が差し、それがラスト、暴力的な結末を迎える、というもの。好きだった作品は『牧師の楽しみ』。嘘臭い美術鑑定の話しから、インチキ牧師が”アメリカン・ゴシック”みたいな農家に訪れ…そして暴力的で唐突なラスト!そして『豚』。異様な出生と異様な生い立ちを経た青年が都会へ出て…と言う話しだが、このオチはあまりにもシュール。どこかブラッドペリを思わせるところがオレの琴線に触れたのかも。ブラッドペリ好きでした。そしてラストの『ほしぶどう作戦』。どこまで本当なのか判らない雉の密猟テクニックの怪しさから徐々に盛り上がって行き、緊張感を持続させたまま全てが崩壊するクライマックスへと繋がります。解説は阿高田高。