深大寺来訪 鬼太郎茶屋で「目玉おやじ汁」と遭遇篇

(前回までのあらすじ)またひとつ歳を取り心に哀愁・体に加齢臭を(おい)まとったフモはひとり寺へとセンチメンタルなジャーニーに赴くのであった。そして渋がって蕎麦など食うものの有り難味がわからず「男はやっぱりインドカレーだ!」などと訳の判らない捨て台詞を吐き捨てて店を後にする。もはや人生のポイント・オブ・ノー・リターンに差し掛かった珍獣フモの運命やいかに。

■『鬼太郎茶屋』
と言う訳で『鬼太郎茶屋』である。水木しげるの生み出した妖怪キャラクター『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターグッズショップである。古い家屋を改装した店舗は昔懐かしい駄菓子屋の雰囲気で、あたかも妖怪の出そうな佇まいだし、同時に水木氏在住の調布の自然が、妖怪達の姿と実にマッチしているところが面白い。外の木の枝には妖怪ハウスが!そして店の屋根に妖怪『おとろし』の姿が!
一階が妖怪ショップ『ゲゲゲの森』、妖怪喫茶コーナー、二階には『妖怪ギャラリー』を兼ね備えている。

■『妖怪ギャラリー』
水木氏のこれまでの足跡や鬼太郎マーチャンダイズ商品、日本各地に出没するという妖怪たちのフィギュアが、妖怪日本地図、妖怪道五十三次といったテーマで展示されている。面白かったのは水木氏が世界各地で収集して来た『妖怪民芸品』。中国の奥地やニューギニア、メキシコなどの国で作られた、これぞ妖怪と見まがうばかりの精霊をかたどった民芸品の数々が目を引いた。そして、この民芸品は水木コレクションの極々一部でしかないのである。展示自体はそれ程の数ではないので、もっと見たいと思った。う〜ん、これはもう、鳥取の『水木しげる記念館http://www.sakaiminato.net/mizuki/に行くしかないのか!?そうかそうなのか!?

■妖怪ショップ『ゲゲゲの森』
さて『鬼太郎茶屋』ではそれこそ舐める様な目で鬼太郎グッズを物色し、その執拗な怪しい挙動に店員さん達を「妖怪が妖怪を見に来た」と恐怖とパニックに陥れたオレである。すまん。本当にすまん。そしていい歳して『妖怪シール』『妖怪飛び出す絵はがき』『妖怪フィギュア』『妖怪ドリンク』などを買い求め、お腹いっぱい満足して莞爾として笑みを浮かべるオレであった。さらに会社のコムスメ達のお土産にも『目玉おやじキャンディ』『妖怪クッキー』などを買って、日頃のセクハラのフォローを忘れないのである。誕生日のプレゼントも貰った(カツアゲした)ことだしな。(ってかセクハラのフォローってなんじゃそりゃ)

■妖怪喫茶コーナー
今回は利用しなかったが、『妖怪喫茶コーナー』は全て妖怪のネーミングがされた甘味が出されて面白い。
目玉おやじの栗ぜんざい
・塗り壁みそおでん
一反もめんの刺身こんにゃく
・妖怪抹茶セット
…などなど。「目玉おやじの栗ぜんざい」には目玉おやじ状の白玉が付いてるし、「塗り壁みそおでん」は塗り壁の形をしている、という趣向。

■妖怪ドリンク
それと何よりも『妖怪ドリンク』!この日の深大寺探訪は実はこの『妖怪ドリンク』が目当てだったのである。何しろネーミングが凄い!
『目玉のおやじ汁』…目玉のおやじが茶碗風呂の中に浸かって出したエキス分がたっぷり含まれているのである。勿論目玉だけにDHAも豊富で美容と健康にもよろしいのである。風呂の残り水だからそれは目玉のおやじの垢なんじゃねーのか?とか無用な邪推をしてはいけないのである。(全て嘘です)ゆず果汁4%。

ねずみ男汁』ねずみ男が千年も身にまとっているあのボロ布を煮詰めて濃縮したエキスが配合されているのである。ねずみ男曰く「着てから一回も洗った事はない」。大島のクサヤエキスを凌駕する阿鼻叫喚の惨臭があなたの脳天を直撃する。(全て嘘です)夏みかん&はっさく果汁30%。

『妖怪汁』…妖怪エクトプラズムと、こうもりの羽と、ガマガエルの目玉100個と、イモリの黒焼きと、ナメクジのはらわたと、タランチュラの毒と、脱皮した蛇の皮と、嬰児を屠ったばかりの黒狼の血塗れた犬歯と、泣き叫ぶマンドラゴラと、墓場から掘り起こしたシャレコウベの骨粉と、新月の夜屠殺された雄山羊の脳髄と、ヘルメス・トリスメギストスの墓石の粉と、アレイスター・クロウリーの左の目玉と、聖エウスタキオ記念聖堂に収められているキルヒャーの心臓と、スウェーデンボルグが霊界から持ち出した聖なる羽と、悪魔アスモデウスがエクソシストに残した「とり憑いた人間から出る契約書」を燃やした灰と、加藤保憲のドーマンセーマンが書かれた白手袋と、ラプンツェル症候群の女の胃から取り出したトリチノベゾアールと、中国河南省で発見された喋る人面疽の摘出された顔と、ビサンティン代の遺跡から発掘されたコプト十字架の破片を、薔薇十字の秘法で心霊的に磁化された水で777日間煮込んだ、オカルト100%な飲み物です。(だから全て嘘だってば。)カラマンシー&シークワーサー果汁10%。

■じんだいじ?
さて『鬼太郎茶屋』を後にしたオレはついでだからと深大寺の境内へ。寺だ。おお、寺だ。…すまん、何も感慨がない。本尊を拝んでも拍手一つ打つ気にならない。つくづく無信仰な人間なのである。『鰯の頭も信心から』の諺からいえば、深大寺に奉納された仏の像も鬼太郎茶屋の発泡スチロールの鬼太郎も変わりはないのだ。そして一人の水木しげる原理主義者としては、水木本尊を奉ることのほうに意義を感じるような人間なのである。でも仏教美術の観点からは美しいものであることは認めるのだ。そして寺院で売られていたお守りもひとつのオカルティックなアイテムとして見てしまう。これでさえ水木グッズと何一つ変わらない。「そこに何を見るのか」が問題であり、そのものそれ自体は単なる工業製品なのである。そして深大寺でさえ、単なる宗教的アミューズメント・パークとしてオレは見てしまうのだった。

帰りのバスを待ちながら、深大寺へ参ったおばあちゃん達の会話を聞く。「ジンダイジ、今度いつ来ようかねえ」。…え?ジンダイジ?『深大寺』って「ジンダイジ」って読むの?…このおばあちゃん達の会話を聞くまで、ずっと「シンダイジ」と思っていたオレであった。…やっぱり最後にオチがあんのかよ!

鬼太郎茶屋』:
http://www.youkai.co.jp/chaya.html
http://www.csa.gr.jp/kitarotyaya.htm