最近聴いたエレクトロニック・ミュージック

■Silent Stars / Jimpster

SILENT STARS
最近最も繰り返し聴いているのがJimpsterによるこのアルバム、『Silent Stars』。Jimpsterはこのアルバムで初めて知ったアーチストだが、UKのテックハウス・プロデューサーとして20年以上ものキャリアを持っているのらしい。一言でテックハウスと言っても様々ではあるが、個人的には打ち込み主体で機械的に漂白を掛け過ぎたハウスといったイメージもあり、作業用で聴くならまだしもアルバムとして感銘を受け愛聴する程のアーチストはそれほど思い浮かばない。しかし、このアルバムは違った。十分にメロディアスであり、さらにドラマチックでロマンチックでもあるのだ。サンプリングされた個々の音に対する配慮が実に行き届いており、それがシンフォニックに響き渡る様は非常に有機的な音の結合を感じる。R&Bの熱情とジャズのメランコリーも加味されながら、かといって情感の高さのみに振り切れることなく、マシーンミュージックのクールな美しさも兼ね備えている。これはもう非常に知的な音楽構成を練っているからということなのだろう。特に↓のYouTube動画で貼った曲『The Sun Comes Up』では、バレアリックな落ち着きと長閑さから始まりながら、中盤からうねるようなコーラスがインサートされ荘厳に盛り上がってゆく。こういった技巧の数々が堪能できる非常に優れたアルバムなのだ。これは今回の強力プッシュ盤だ。 《試聴》

Silent Stars

Silent Stars

■Loop-Finding-Jazz-Records / Jan Jelinek

Loop-Finding-Jazz-Records

Loop-Finding-Jazz-Records

Jan Jelinekが2001年にリリースした1stアルバムのリイシュー。このアルバムは古いジャズのアナログ・レコードをサンプリングして構築されたものだというが、これが実に素晴らしい。いわゆるジャズ・サンプリングというとヒップホップあたりでは割とお馴染みの手法なのだろうが、このアルバムでは相当なトリートメントを施しているのか、音源がジャズなのにもかかわらず聴こえてくるのはダウンテンポミニマル・テクノであり、さらに言うならこれはダブ・ミュージック化されたジャズという表現もできる。また十分にアンビエント的な味わいもあり、クールダウンにも最適だ。15年以上たっても全く古びていないばかりか今でも十二分に新しい。それにしてもこんなアルバムの存在を今まで知らなかったとは。名作であり名盤なので是非聴いてください。 《試聴》

■Beyond The Five Senses (reissue) / Aura Fresh


2015年に50枚限定でリリースされたAura Freshのアルバム『Beyond The Five Senses』のリイシュー盤。ダブテクノならではの重低音・反復音を響かせるが、催眠的な他のダブテクノ・アーチスト作品よりもより荒削りでアグレッシブな音に仕上がっている。 《試聴》

■Prescription : Word, Sound & Power / Ron Trent

プレスクリプション:ワード、サウンド & パワー

プレスクリプション:ワード、サウンド & パワー

シカゴ・ディープ・ハウス・シーンのベテランRon Trentが、彼の主宰するレーベルPrescriptionの作品を集めたコンピレーション全24曲。ああこれはお腹いっぱいになれる……。 《試聴》

■Devout / Mr. Mitch

DEVOUT

DEVOUT

ロンドンのグライム・プロデューサー、Mr. Mitchの2ndアルバム。ヴォーカル曲の多いR&Bのテイストさえ感じるベース・ミュージックで、内省的であると同時にドラマチックですらある。 《試聴》

■3 Years Of Faut Section / Various

3 Years Of Faut Section

3 Years Of Faut Section

ポルトガルのFautレーベルが3周年を記念してリリースしたコンピレーション・アルバム。CD3枚組全27曲。内容はなにしろダークでヘヴィーなテクノで、オールドスクールと言えばそれまでだがたまにこの辺の音を聴かないと頭がしゃっきりしなかったりする。 《試聴》

■Hyper Opal Mantis / Kangding Ray

Hyper Opal Mantis

Hyper Opal Mantis

ベルリン在住のアーチストKangding Rayのニューアルバム。ソリッド&ハードな完全フロア仕様の爽快テクノ。元建築家とあってか残響音の処理が独特の空間性を感じさせてくれる。これはカッコイイ。 《試聴》

■April / Bochum Welt

April

April

イタリアで活躍するプロデューサーGianluigi Di CostanzoのユニットBochum Weltによるアルバム。柔らかく暖かいシンセ音が心地よいアンビエント的な側面を持ちながら、時折賑やかなリズムで浮き立たせてくれる表情豊かな作品。 《試聴》