■ABCD - Any Body Can Dance (監督:レモ・デスーザ 2013年インド映画)
この『ABCD - Any Body Can Dance』、「インド初のダンス映画!」って触れ込みの作品なんですよ。あれ?インド映画ってだいたい歌ったり踊ったりしてない?と思われるかもしれませんが、実はコレ、「ダンス・トーナメントを描くことにより初めてダンスそのものをテーマにしたインド映画」ってことなんですね。
自分はインド映画に関してはビギナーですが、最近日本で公開されたインド映画を観ていても、以前からあった「歌と踊りのインド映画」というイメージから、インド映画が抜け出そうとしている、というのはなんとなく感じていました。また、そういった映画を日本に配給する側の、「これまでのイメージにとらわれない新しいインド映画を観て欲しい」という気概も感じるんですね。でも、でも、もうちょっと歌と踊りのインド映画を楽しませてよ!という気持ちもあって、この『ABCD - Any Body Can Dance』の存在を知った時はなんだか嬉しかったですね。ヒンディー語DVDを英語字幕で鑑賞しました。
お話はなにしろシンプル。主人公の名はヴィシュヌ(プラブデーヴァ)、彼はダンス学校JDCの振付師だったのですが、JDCのあこぎな経営方針と対立し、そこを離れてしまうんですね。失意の中にあったヴィシュヌですが、ある日近所のヤンチャな少年少女の身のこなしにひらめくものを感じ、彼らにダンスを教えることを思いつき、ダンススクールDDRを立ち上げます。少年少女たちは最初、対立するチーム同士だったんですが、ヴィシュヌの熱い心に打たれ、さらにダンスをすることの喜びを覚え、次第に打ち解けてゆきます。親たちの反発、少年少女の喧嘩やハメの外し過ぎ、JDCの妨害など、幾度も危機を迎えるDDRでしたが、それを乗り越え、いよいよダンス・コンテスト番組でJDCと対決することになるのです。
ダンス・トーナメントとそれを取り巻く人々を描く映画ですから、なにしろ全編これでもかとばかりダンス・ダンス・ダンスです(村上春樹とは関係ありません)。次から次へと繰り出されるダンス・シーンが、なにしろ圧倒的で、とても楽しめる娯楽作品になっているんですね。いわゆる「ステージで踊るダンス」が主流なので、ボリウッド映画的なエキゾチックさとはまた違うのですが、それでも魅せられましたね。そしてお話は「対立・友情・特訓・失敗・成功」という、こういったテーマの物語によくあるような王道展開で、決して目新しいものは無いにせよ、だからこそ安心して観られるんですよ。
俳優たちも実際のダンサーが演じているらしく、また、主演の振付師ヴィシュヌを演じるプラブデーヴァは、「インドのマイケル・ジャクソン」と異名を持つほどの存在だとか。プラブデーヴァが踊るシーンは1度きりなんですが、確かに他とは違うものを感じました。もう一人、ヴィシュヌの友人を演じるゴーピー(ガネーシュ・アーチャーリヤー)という人がいるんですが、これが失礼ながらとんでもない百貫おデブで、「面白いけど、なんなのこの人?」と思ってたら、なんとこの人まで本職の振付師なんだとか。ある意味一番すごいのはこの人かもしれない…。
この映画を観ていて思い出したのは学園コーラス・ドラマ『グリー』ですね。落ちこぼれとして疎まれていた少年少女たちが、様々な問題を乗り越えながら一致団結し、最後には栄光を手に入れる、というストーリー。でも『ABCD』の少年少女たちは、見てくれこそヤンチャそうなんですが、『グリー』ほどに鬱屈を抱えていなくて、一人一人は屈託が無く、よく見るとなーんだか可愛いんですね。キャラの掘り下げ云々というよりも、こういった分かりやすく親しみやすいキャラである、ということも観易さの一因だったのではないでしょうか。そして、男子は全員腹筋割れてますッ!男なら普通割れてるもんだよね?ってなぐらい割れてますッ!腹筋割れ大好きな方も是非ドウゾ。