ヘヴィメタルでミュージカル!トロマの珍作映画『ヘヴィメタル・ミュージカル』

ヘヴィメタル・ミュージカル (監督:トラヴィス・キャンベル 2011年アメリカ映画)


「バイオレンス!ブラッド!ヘヴィメタル!」という掛け声も勇ましいトロマ映画『ヘヴィメタル・ミュージカル』であります。ヘヴィメタルでミュージカルって面白そうじゃないかとちょっと思ったわけであります。実際の所オレはヘヴィメタルは聴かないんですが、あのメタル的な世界って一周回ってカッコいいもんなんじゃないかと思うとるんですよ。なんかこうオシャレなもんとかセンスいいもんとかスマートなもんとかから遥かにかけ離れている世界ではありますが、逆にオシャレとかセンスとかスマートとかクソみてえなもんだよな!どいつもこいつも皮のかぶったチンコみてえな服着て喜んでんじゃねえよ!みんなまとめて浄化槽に行けや!なーんて思うことも多々ありまして、そういった心象にヘヴィメタルはがっちりフィットするものがあるのでございます。やっぱこう、メタルって、ズルムケな感じじゃん?
しかしこの映画、問題はトロマ作品であるということなんでございます。悪魔の毒々モンスターのトロマなんでございます。カルトとかZ級とか呼ばれる低予算まっしぐらのあのトロマなのでございます。トロマ映画を評するのは難しい。どんなに貶してもそれは褒め言葉に代わってしまうし、逆に褒め過ぎてもチープなもんならなんでもマンセースノッブ気取りと思われるからなのであります。
この『ヘヴィメタル・ミュージカル』も感心したくなるぐらい低予算なのが観ただけでもわかります。画質が汚くて観ていて頭が痛くなります。バストショットのアングルばっかりなので観ていて息苦しくなってきます。俳優がどれもマンマ素人なので観ていて不憫になってきます。お話がわけわかんなくて観ていてうんざりしてきます。全体的にビンボ臭くて観ていて悲しくなります。でもこいつら楽しんで撮ってんだろうなあ、打ち上げとかワイワイ盛り上がるんだろうなあ、くそう羨ましいなあ、なんていう仲間内な気楽さも感じます。要するに良くも悪くもトロマなんですね。
お話は、まああってないようなもんなんですが、説明すると、まず主人公が頭と顔に真っ黒な刺青しているミスター・ブリッグスというマッチョ男です。これをティム・ダックスさんという方が演じておられますが、これはこんな方です。

いやあ怖いですねえ。狂犬のようですね。何やってる方なのかは存じ上げませんが、刺青もモノホンのようです。つるっぱけも含めてメタルでプロレスなズルムケ感がひしひしと伝わってくるナイスなキャラです。で、このダックスさん演じるブリッグス、この人も何やってる方なのかよくわかんないんですが、とりあえず美人警官に岡惚れし、彼女を拉致監禁強姦しちゃうんですよ。まあ怖い。美人警官は救助され、その時ブリッグスは頭に銃弾を受けますがなんと助かっちゃうんです。銃弾が頭の骨の所で止まっちゃってるんですね。さすがバカキャラなだけに頭が固いんですね。で、このバカのブリッグス、拉致監禁したくせして美人警官と自分の間には愛がある!とか訳の分かんないこと言って美人警官を探し回るんですね。そこでまたあちこちで殺戮の嵐が吹きすさぶという訳なんですね。いやしかしひでえ話だなあ。
で、ヘヴィメタル・ミュージカルというぐらいですから所々にメタルなミュージカル・シーンが入ります。これがメタルらしく地獄だ!呪いだ!血だ!とかなんとか言ってるわけです。メタルなブリッグスがメタルを歌い上げるシーンはメタルのことをよく分からないオレでもそこそこかっこよく観られるんです。しかしね、それ以外のキャラがメタルを歌い出すと、どうも堂に入ってないっていうか、歌も下手糞でね、観ていてあんまり面白くないばかりか、なんか笑っちゃうんですよ。物語とか映像とか以前に、音楽さえもうちょっとかっこよく撮ってくれたらよかったのになあ。その辺が惜しいっちゃあ惜しい。まあなにしろトロマなので難易度の高い映画であることも確かで、気軽な気持ちで手を出すと時間無駄にした気分になりますので要注意でもあります。