■フライトナイト 恐怖の夜 (監督:クレイグ・ギレスピー 2011年アメリカ映画)
この『フライトナイト 恐怖の夜』は1985年作の『フライトナイト』のリメイク作品ということですが、オリジナルは観た筈だけど内容すっかり忘れてます。お話は新興住宅地に住む高校生主人公のお隣にヴァンパイアが引っ越してきて毎日が恐怖の夜さ!というものです。このヴァンパイア役をコリン・ファレルを演じているのですが、オレ的にコリン・ファレルという人は「眉毛でイカすヤリチン男」「風俗系ハリウッド俳優」「チャラさだけでスターになりました」といったイメージで、要するにヨゴレなドスケベ男といういわれのない決めつけと偏見の目で見てるんですね。しかし今作ではコリンさんのそんなヨゴレなイメージが如何なく発揮されていて、というか地のまま出ていて(…まだ決めつけている)、「牙より先にチンコが立つ」みたいなイヤラシイヴァンパイア像を大変素晴らしく演じているんですね。一方主人公の少年は学校一の美女を彼女にしちゃった元オタク少年で、彼女は積極的なのに未だコトに及べない小心者な童貞君です。この主人公少年の設定の妙な所は「元オタク」にもかかわらず「学校一の美人の彼女が存在する」のに、彼がそこに至るまでの克己心とか葛藤の存在が綺麗さっぱり抜け落ちている、ということなんですね。まあ映画の主題は主人公の内面を描くことではなく、恐怖あり笑いありアクションあり破壊ありの誰でも気軽に楽しめるエキサイティングなポップコーン・ムービーとしてデフラグされていますので、そういうのをいちいち気にする必要は無いんでしょうが、そうすると今度は主人公の友人のオタク少年というのが気になってくる。そしてそのオタク少年はオタク特有の知ったかぶりが逆に仇を成し冒頭でさっさとヴァンパイアの餌食になってしまう。まあ別にオタクじゃなくてもヴァンパイアの撃退法なんて誰でも知ってるでしょうが、そういった”知識”で戦おうとして彼は屠られる。一方主人公少年は最初ヴァンパイアから隠れまわり逃げ回るだけでしたが、大事な彼女がコリンヴァンパイアにさらわれたのをきっかけに徹底抗戦に挑む。まだ一回もヤッてない彼女をヴァンパイアになんかされた日にゃあもう2度とヤれませんからね。そこで主人公を助けることになるのが稲川淳二似のインチキ臭い自称ヴァンパイアハンターなんですね。この自称ヴァンパイアハンターというのがまたエロエロなオッサンで、ヴァンパイアハンターというよりもズルムケ女体ハンターみたいな奴なんですね。つまりこの映画の構図というのは、「元オタクの童貞少年」が「ズルムケ女体ハンター」の手ほどきで「牙より先にチンコが立つヴァンパイア」を倒し、目出度く彼女とムフフのフ、ということなんですよ。結局、オタクから脱却して美人の彼女を手に入れた、だけではあまりにお手軽すぎるんです。だからそこで彼女を取り戻すために死にもの狂いの戦いを繰り広げることで、童貞少年はやっと初めて彼女を「カノジョ」にすることが出来た、という、ある種物語の逆転構造がここにはあるんですね。やっぱり男は心の底からヤリたい、と思わなければ駄目で、そして思うだけでも駄目で、ヤルために頭を使い体を使いあらゆる手を尽くさなければイケナイ、ということがこの映画の教訓なんですね。そういった、童貞君がいかにしてズルムケへと成長するのかを描いたのがこの『フライトナイト 恐怖の夜』なんですよ。
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