■デビルズ・バックボーン (監督:ギレルモ・デル・トロ 2001年スペイン・メキシコ映画)
『ヘルボーイ』(2004)、『パンズ・ラビリンス』(2006)を手掛け今やすっかり売れっ子監督のギレルモ・デル・トロ、その彼がハリウッド・デビューする直前の2001年に製作したホラー・ミステリーです。
1930年代末、内戦が続いたスペインの片田舎に建つある孤児院が舞台。ここに一人の少年が入所しますが、この孤児院には幽霊が現れるという噂があり…というお話なんですが、ホラー・テイストはあるものの、どちらかというと子供たちの心の交流やそれを取り巻く人々、そして内戦により荒んだ人間達の暗い情念がテーマになっています。だから『デビルズ・バックボーン』という物々しいタイトルとは裏腹に、ホラーの味付けをしつつも内戦当時のスペインにおける人々の心の有様を中心に描いた物語になっているんですね。
内戦中のスペインが舞台ということから『パンズ・ラビリンス』を彷彿させますし、孤児院を巡る幽霊物語だというのはデル・トロが製作しファン・アントニオ・バヨナが監督したホラー・ファンタジー『永遠のこどもたち』を思い出させます。即ちこの『デビルズ・バックボーン』はファンタジー抜きの『パンズ・ラビリンス』の世界で『永遠のこどもたち』のような幽霊話が展開される、ということが出来るかもしれません。そしてこれらの作品と同じように、『デビルズ・バックボーン』では子供たちが残酷な現実に弄ばれ、その中で現世と幽界の狭間を覗き見る様を、豊かな情感で持って描き出しています。
スペインの強烈な太陽とその眩い光は、同時にどこまでも黒々とした影を生み出し、それはそのままこの映画で描き出される生の光に対する死の闇のコントラストに通じるものがあります。デル・トロの生まれたメキシコも、やはり同じように光と闇のコントラストが強烈な風土であると言えるでしょう。彼の作品の多くに存在するこの闇の濃さと深さ、「死/異界」に拘る彼の映画テーマは、こういった背景にあるのではないでしょうか。映画『デビルズ・バックボーン』は、デル・トロ作品としてはいささか地味なものがあるかもしれませんが、彼の作品世界を理解するうえで格好のテキストになる作品だと言えるかもしれません。
●デビルズ・バックボーン 予告編
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