こんな世の中に誰がした!?ムーアの次の敵は資本主義!

キャピタリズム〜マネーは踊る〜 (監督:マイケル・ムーア 2009年アメリカ映画)


「アメリカじゃあ1%の富裕層が95%の庶民たちよりも多くの富を所有してるんですってよ!?まあ怖いわよね奥様!しかしいったいなんでまたこんなことになっちゃたのかしらん!?」というのが今回のマイケル・ムーアの映画、『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』である。資本家はどんどん肥え太ってゆくのに労働者はいつもそのツケを回されてスカンピンだ!責任者出てこ〜い!ということなんだが、まあこういう問題は資本主義社会にはいつも付きまとってて、それに嫌気が差して共産主義社会主義になっちゃってそれがまた失敗したりとかなかなか上手く行くものではない。ただ今回のムーア映画は別に「資本主義そのものが悪だ!」と言ってる訳ではなくて、「昔のアメリカはもうちょっとましだったはずじゃないか?それがいったいぜんたいなんでこんな社会になっちゃったの?」と下手人探しをしてゆく、という寸法になっている。

ムーア映画に偏向があるとかないとか、それは分かってることだし、また、公平に客観的に描かれたドキュメンタリーなら逆に食指が湧くことも無くて、だからムーア映画ってそのアジテーションの仕方というかエンタテインメントとしての映画の面白さを観るべきものなんだろうと思う。そういうオレはたいして政治や経済に詳しいわけでもなく、ムーア映画を観ると素直に「なんてこった!」とか「これってひどいよね!」なーんて単純に思ってしまうタチなんで、この映画の政治的経済的な部分にあれこれ言おうもんならたちどころにボロが出て恥ずかしい思いをすることは目に見えているのでそういうことは書かない…というか書けない。ただ、今までのムーア映画って、「アメリカってヒデエ国だなあ…でも日本の問題ってわけでもないし」と思っちゃうところがあったけど、今回は明日は日本…って雰囲気が存分にして身につまされる部分があった。

だからムーアが以前からバラク・オバマ支持者だって分かっててもオバマの大統領選勝利の報に涙する人々の映像は素直に感じ入ってしまった。いい加減世の中変わって欲しい、って市井の人々の気持ちが伝わってきたからだ。だけどそれに比べて日本の今回の民主党勝利はなんだったんだろう…嫌な話ばかり聞くんだけど…。それと全員解雇を通達された労働者たちがストライキを行い徹底抗戦して勝利するエピソードもなんだか胸が熱くなっちまったな。これは会社に融資を断った金融機関に緊急救済法案で7千億ドルも注ぎ込まれCEOには大層なボーナスまで出てるのになんでこっちにはそれがまわってこないの?という背景があって、労働者の権利は常に正しいってことでもないんだけれど、結構ムゴイ会社でムゴイ仕事していたことがあるものとしてはちょっと感情移入してしまった。映画としてはムーアのアジテーションは随分大人しくなってしまったな、という印象。あれだけ有名になっちゃうと遣り難いところもあるんだろうね。

キャピタリズム〜マネーは踊る〜 予告編