アメコミ必殺仕置き人はいつもとりあえずニガミばしっていた!?

パニッシャー:ウォー・ゾーン (監督:レクシー・アレクサンダー 2008年アメリカ映画)


「極悪人を仕置きするのはこの俺だ!法なんかいらねえ!俺が法律だ!」妻子を殺された恨みを晴らすため、マフィア皆殺しを誓った男パニッシャー!ヤツの通った後には死体しか残らない!殺せ殺せ!殺しまくれパニッシャー!…という映画である。「スパイダーマン」や「X‐メン」のマーベル・コミックが原作となっているが、多少コミックらしい演出もされているものの、基本的にはR-15指定のものごっついバイオレンス・スプラッター・ムービーとして完成している。

もう初っ端から撃ちまくり殺しまくりの大盤振る舞い、頭半分ぶっ飛ばし脳漿撒き散らすのは当たり前、マフィアと名が付けばババアでさえ容赦無くひねり殺し、ピョンピョン跳ねてウゼエやつはRPGで撃墜、特にオープニングの"シャンデリア逆さぶら下がり花びら大回転マシンガン乱射"の華麗さにはヤンヤヤンヤの大拍手、「いよっ!ぱにっしゃあっ!」「たまやぁ〜!かぎやぁ〜!」などと合いの手のひとつも入れたくなるほどであった。

敵役ジグソウの誕生のしかたもいい。パニッシャーさん(以下パニちゃん)にガラス瓶粉砕機に落とされた悪モンのオッサン、そのままガラス瓶と一緒にグルグルと粉砕されそうになるが間一髪で救出、しかしガラスの破片のせいで顔がグジャグジャになり、縫い目も生々しいジグザグの醜い傷跡が残ってしまったから名前が"ジグソウ"。だいたい「ガラスと一緒にグチャグチャ」というシチュエーションがあまりにも素敵過ぎる。で、このジグソウがキチガイの弟と一緒にパニちゃんを無きものにしようと暴れまわるのだ。

しかしパニちゃん、序盤で囮捜査官を誤殺してしまい、「俺はもうパニッシャー失格だあああ」とかウダウダウダウダしてみたり、囮捜査官の残された奥さんと子供の前でウジウジウジウジしてしまったりするのである。自分の家族を殺された恨みで復讐しているわけだから、こういった痛みには弱いのである。パニちゃんのこの辺の感情の陰影は悪くない。でも仲間から「いや、悪モン全滅させてから引退してもいいじゃん?」というアドバイスを受け、「うん、それもそうだな!」とすぐ気を取り直すパニちゃんだ。この切り替えの早さ、案外パニちゃんはポジティブ・シンキングな殺戮者なのかもしれない。

ただ中盤からは"残された奥さんと子供"をジグソウの襲撃から奪還したりまた奪い返されて人質にされたりの展開で、なんだかテンポがもたつくのだ。だいたいパニちゃんの「ここなら安全」なはずの隠れ家があっさり襲われすぎだし、襲ったジグソウもその隠れ家を燃やすなり破壊するなりすればいいものを手付かずにしておくから、パニちゃんまたここでしっかり装備整えちゃうし、シナリオの詰めが甘いんだよなあ。残忍なはずのジグソウ兄弟も、ジョーカーの狂気を狙ったのか後半ちょっとオチャラケ過ぎで、これがあんまり効果が出ていないので「単なる変な人」にしか見えなかったりする。

しかしクライマックスの100人はいようかという敵の刺客が立て篭もったホテルに討ち入りするシーンは頑張っていた。いったい小火器何挺持ってるんだ?って思うぐらいあとからあとから銃を繰り出し、鬼神の如く敵を粉砕してゆく様はまさしくターミネーター状態、タイトル「ウォーゾーン」そのままの活躍ぶりだ!でも最期もやっぱり人質を巡ってもたついた展開をするのが惜しいんだけど…。それにしてもパニちゃんを演じたレイ・スティーヴンソン、どことなくスティーブン・セガールに似ていなくもないルックスで、映画の間中「じつはこれセガール映画なんじゃないのか」などという妙な既視感に襲われていたオレであった。

■Punisher War Zone trailer #2