俺たちダンクシューター (監督:ケント・オルターマン 2008年アメリカ映画)

■「俺たち」シリーズ第3弾!

多分誰も知らない「俺たちニュースキャスター」、大ヒットした「俺たちフィギュアスケーター」に続くウィル・フェレルの「俺たち」シリーズ第3弾、「俺たちダンクシューター」の登場だ!勿論日本でつけたタイトルだから本国ではシリーズでもなんでもないけど、ウィル・フェレルの認知度が上がってくれるならなんでもいいや!
ウィル・フェレルの名は「オースティン・パワーズ」で始めて知ったのだが、その時はさほど印象に残っていなかった。しかし「プロデューサーズ」でナチ好きの脚本家役で出演した時、「なんだこのキチガイじみた男は!?」と俄然注目したというわけである。そして「俺たちフィギュアスケーター」に暑苦しくひたすら下品なアホアホ男として登場し、オレの心に深く名前が刻まれる俳優となったのだ。
しかしこのウィル・フェレル、癖が強いせいか日本未公開作が非常に多く、DVDで出ているものを全て追いかけるのも難しい。その中にはこりゃ確かに日本じゃウケ無いだろうなーと思われるしょーもない映画もあったりするが、反面、「奥様は魔女」や「主人公は僕だった」のようなそこそこの佳作に出演していたりもする。出演作に当たり外れが多いのだ。とは言いつつ、彼の出演作はアメリカでは軒並み大ヒット、出演料もブラッド・ピットロバート・デ・ニーロクラスの金額を貰っているというから世の中分からない。
で、実際ウィル・フェレルの映画を最近多く観るようになったオレだが、こいつのファンかというとちょっと謎だ!だってあの馬面奥目のブサイク顔がそうそう好きになるもんでもない!しかし要注目のハリウッド俳優であることは間違いなく、また、日本公開の少ない貴重なコメディに多く出演していると言うことでこれからも生暖かく見守っていたいと思うわけだ。

■チーム存続の危機!?

さて、映画「俺たちダンクシューター」、前作の「俺フィギ」が徹底的にナンセンスなドタバタに終始していたのに比べ、この「俺ダン」はアホアホな要素はあるにせよ、「俺フィギ」よりは数段きちんとしたドラマ構成がされており、笑わせ泣かせ、最後には胸を熱くさせる、という良質のコメディに仕上がっていた。
物語は、70年代、アメリカのプロバスケットボール・リーグでは現在スタンダードであるNBAに対し、試合よりはエンタメで見せるABAというリーグを舞台にして作られている。最初は映画の上での創作だと思っていたが、このABA、実際に存在していて、映画で描かれていたように、NBAに吸収合併される形で消滅したのらしい。そしてこの吸収合併によるチーム存続の危機に、万年最下位のダメダメチームのオーナー兼コーチ兼選手、ウィル・フェレル演じるジャッキー・ムーンが無い知恵絞りありもしない根性を見せるというのがお話しの主軸となる。なにしろ最下位チームを上位まで勝ち越させなければならないのだ!
しかし試合はグダグダだが、ハーフタイムで演じられるショウが呆れるほど無駄に力が入っていて笑わせる。床に並ばせたチアガールの上をローラーコースタージャンプで飛び越えて見せたりとか、訳のわからない着ぐるみを着て歌と踊りを披露したりとか、挙句の果てにはクマとの一対一の死闘までやっちゃうのだ!しかしその創意工夫を試合に全く生かせられないのがアホアホのアホアホたる所以だ!しかも高得点なら観客全員にパンケーキプレゼントとか、ロングシュートを決めたお客さんには高額の小切手プレゼントとか約束しておいて、いざ実際にそうなったら、プレゼント出すのが惜しくて逃げ出したり誤魔化したりの情けなさ!ってか、チーム生き残りはどうなってるんだ!?

■生き残れるのかアホアホチーム!?

こんなダメダメオーナーにしびれを切らせて選手たちが新コーチとして持ち上げたのが、「ノーカントリー」に出演していたウディ・ハレルソン演じる元NBA選手のエド。このエドだけが妙にシリアスな役回りで、彼の切ない不倫ドラマまでが並行して語られ、物語にちょっとした深みを与えている。
新コーチを得たことでやる気を出したダメダメチームは、見違えるように成績を上げ、そしてNBA編入の条件をあと一歩で満たしそうになるが、さて!?という所で物語はスポ根ドラマとして異様な盛り上がり方を見せるのだ!自分たちはもう負け犬なんかじゃないとばかり男の意地を見せるチームメンバーたち!スポ根ものドラマの定石通りの展開といえばそれまでだが、単なるアホアホ映画に留まることなく、安心して観られ、最後にはきっちり感動を与える良質のエンターティメント・ムービーとして仕上がっていたぞ。これ、ある意味「俺フィギ」よりも万人向きで受け入れられやすい映画になっていたんじゃないのかな。そしてドラマとして見るなら断然面白さは上だったんじゃないかと思うぞ。
映画は70年代の音楽とファッションをふんだんに取り入れており、特にナイル・ロジャースが監修したディスコ・ミュージックの数々は、映画をよりお茶目なものとして盛り立てていたぞ。なにしろナイル・ロジャースウィル・フェレルが共作し、主人公ジャッキー・ムーンの持ち歌として劇中何度も流される「ラブ・ミー・セクシー」のひたすらエロエロな歌詞は、あまりに馬鹿馬鹿しくてすっかり気に入ってしまったぐらいだ!他にもラップ・デュオ・アウトキャストのアンドレ・ベンジャミンが重要な役回りを演じており、そのファンキーなアフロ姿がナイスであった。

■Semi-Pro Official Trailer


■俺たちダンクシューター ポスター集