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イスラエルとパレスチナの問題は、戦争でも紛争でもない。ただイスラエルの一方的な暴力としか思えない。パレスチナ問題をここでおさらいするつもりは無いが、映画の中で語られる「パレスチナは軍隊を持っていない」という部分に、インティファーダと呼ばれる人民蜂起、そしてゲリラ活動や自爆テロに向かわざるを得ないパレスチナの苦悩が見え隠れしているように思う。テロによってしか抵抗する事ができないという恐るべき選択肢の無さの中に彼らはいる。しかしそういった政治的な背景を持った映画であることは勿論なのだが、オレはむしろ、遣り切れない日常の中で息を殺して生きざるを得ない青年達の青春群像を描いた映画として観た。
閉塞感に満ちた日々、そしてその中から生まれる暴発、といった部分は、青春映画の一つの典型であるといってもいい。パレスチナのような過酷な現実は日本や他の文明国には無いかもしれないが、一見平和のように見える国に生きていてさえも、生き難さや遣り切れなさは決して無い訳ではない筈だ。そんな中で暴発寸前の生を生きる者もいるだろう。”自爆テロ”という”国家にとってのひとつの正義”を行使するのも、一種反社会的な”自分だけの正義”を行使するのも、どこか根っこは一緒のように思う。そこにある”世界に圧殺されたくない”という切実さは、実はどちらも変わらないのではないか。行為それ自体はテロリズムであったとしても、行使する若者達は血に飢えた狂人でも狂信者でもない。彼らも、世界のどこかの町に住む名前も無い誰かと一緒に、遣る瀬無い生の中にいる混乱した一つの魂なのだ。
だからこの映画に横溢する殺伐とした救い様の無さは、ただパレスチナのみにある感情ではないのだと思う。少なくともオレはそんな風にこの映画を観た。
■Paradise Now - גן עדן עכשיו - الجنة الآن - Trailer