ゲイは世界を救…わない!?お笑い最終兵器、映画『ブルーノ』!

■ブルーノ (監督:ラリー・チャールズ 2009年アメリカ映画)


「貴様もチンポを吸うんだろ? ホースでゴルフボールを吸い込む口だ!」――ハートマン軍曹byフルメタル・ジャケット
かつて『ボラット/栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』で世界をヒンシュクの渦に巻き込んだサシャ・バロン・コーエンが誰にも頼まれてないのにさらにパワーアップし、世界を怒号と罵倒の暴風域に叩き込むというサイテーチンコ映画、それが『ブルーノ』である。前回インチキカザフスタン人に扮したサシャ・バロン・コーエンの今回の役回りはオーストリア出身のチンコ大好きファッション・リポーター「ブルーノ」。チンコ大好きというからには当然ゲイである。ゲイでありホモでありオカマである。そんなチンコ野郎ブルーノが「アタシ、セレブになりたいのッ!」とアメリカに飛び、さらに中東へアフリカへ、汚いケツをクネクネさせながらそのイカ臭いチンコ臭を撒き散らしてゆくのである。そして「チンコ好きは世界を救う」というスーコーなるクライマックスへと観客を誘うのだ。…ンなもんで世界が救われるワケがネーダローがよ!当然全篇下品でシモでバカでクソでゲロである。サイテーだ。なんてサイテーなんだ。そしてサイコーに面白かった!それにしてなんか先週もこんなチンコ映画観たなあオレ…。なんだよこれじゃあチンコまみれだよオレの人生!

映画はインチキ・リポーター、ブルーノがインチキとは全く知らない人々をだまくらかしてインタビューを敢行、最初は普通のインタビューと思わせておいて次第に不遜で下劣なチンコ・トークをおっぱじめ、真面目に答えようとする皆さんをパニックに陥れた挙句しまいにゃ怒り狂わせるという、どこまでも鬼畜で外道な作りになっているのである。その鬼畜ぶり外道ぶりは最近公開された陵辱映画『隣の家の少女』をも凌駕するのではないだろうか。観てないけど。しかしブルーノがコケにするターゲットはその辺の一般人のみにとどまらない。ファッション業界、ハリウッド・セレブ、TV・映画製作者、ゲイ更生者、軍人、猟友会の皆さん、霊能者、政治家、挙句の果てにイスラエル特殊部隊モサドのエージェントとパレスチナの過激派ハマスのリーダー、さらには自爆テロの元締め「アル・アクサ殉教団」のリーダーのもとにまで押しかけ、イカの臭いを漂わせながらメチャクチャの限りを尽くした暴言と嘲笑をぶちまけるのである。ちょっと待て、お前命賭けすぎだろ!?もはやお笑いの粋を超え、「自爆テロ」の領域じゃねえか!?なんでそこまでやるんだサシャ・バロン・コーエン!?

ブルーノはもちろん空気なんか読まず、というよりも空気に異臭を放ち汚物をぶちまけ、ターゲットを当たるを幸いなぎ倒し、カミソリのようにズタボロにし、不快と不愉快のオンパレードを生み出し、憤怒と怒号を巻き起こし、良識も常識もどこ吹く風、悪逆非道なおちょくりの土石流火砕流で、全てのものを草木も生えないチンコ臭まみれの不毛の大地へ変えようとする。その危険な笑いにオレもひたすら爆笑した。しかし正直、映画を観ていたオレも何度かこいつをぶん殴りたくなった。というのはオレがブルーノの笑いを不快に思ったからではなく、ブルーノの徹底したアナーキーさがオレの持っている小市民的ないじましい良識や常識までぶっ飛ばしそうで怖かったからである。こいつの笑いは凶器だ。お笑いの役割というのはケッタクソ悪い連中を笑い飛ばし、笑い飛ばすことによって観ている者に溜飲を下げさせることがあると思うが、ブルーノの笑いは「ケッタクソ悪い連中を笑い飛ばす自分」という安全圏さえ許しはしない。「じゃあ「ケッタクソ悪い連中を笑い飛ばす」アナタが持ってる良識やら常識とやらはどの程度のものなのよ?」とブルーノのギラギラ輝くホモの目がこっちを見ているのを感じるのだ。サシャ・バロン・コーエンの『ブルーノ』はそんな恐怖さえ感じさせる極北の笑いに満ちたお笑い最終兵器なのである。