気分が荒れていたので「今日は暴飲暴食だ!」ということに決定する。恐るべき短絡である。そもそも「荒れている」→「暴飲暴食」という選択が悲しい。いい大人なのだからもっと前向きなことが出来ないのか。美しい音楽を聴くとかゆっくりお風呂に入るとか豊かな物語に浸るとか動物を飼ったり花を育てたりとか手芸に凝るとか近所の子供たちにお菓子を配るとか町内を掃除するとか神に祈りをささげるとか先祖の霊を供養するとか素敵なガールフレンドの事を考えるとか、なんかプラスな思考などと呼ばれることが出来ないのか。出来ないのかフモよ、え?え?と自らに問いただしてみるも、勿論出来ないのである。んな女々しいことやってたまるか、なのである。
寧ろ喧しい音楽を聴き風呂なんか入らずおぞましい血塗れホラーに沈溺し動物をいじめ花をもぎ取り物を壊し近所のガキは怒鳴り散らし町内にゴミをばら撒き神を冒涜し霊なんぞ鼻で笑いガールフレンドなんざいやしないからドスケベ画像を見てうひゃひゃとか笑ってるんである。殺伐なのである。悪魔のように退廃しているのである。俺たちに明日は無いなのである。ザマアミロである。
ということで暴飲暴食は決行されるのである。晩飯を食った後に、密かに買ってきた菓子パンを1個食う。心は暗い欲望に満ち満ちているのである。背徳の味わいに微かに手が震えるのを感じたが、オレは食うのを止めることは無かった。そして食い終わったオレは唇に付いた油脂をいやらしく嘗めながら、「ククク…食ってやったぜ…体重なんか気にしてたまるかよ!」と卑猥な笑みを浮かべ獣じみたゲップを漏らすのであった。
次は暴飲だ。死ぬほど飲んでやる。冷蔵庫からピッチャーを出し大き目のコップに冷水をたっぷり注ぐ。それをゴクゴクと一気飲みだ!飯を食ったばかりなのでくちていた腹は水を飲んでさらにパンパンだ。しかし、こんなもんでオレの暴飲は止められないのである。そう、誰もオレを止める事なんてできないのだ。さらにもう一杯コップに水を注ぐと、もう入る余地も無いであろう胃に無理やりそれを流し込む。もちろんこれも一気飲みだ!水の冷たさにこめかみがキーンと痛む。しかし、痛みが何だ。オレの心の痛みを超える痛みなぞ存在するものか。痛むがよい、嗚咽するがよい、そして感じるのだ、魂の咆哮を。(なんなんだこの文章)
全ては終わった。忌まわしき邪念に満ちた暴飲暴食は成し遂げられたのである。世を嗤い人を嘲る悪魔の所業はここに貫徹されたのだ。この世に神も仏も無いのだ。ついでに言えばUFOもツチノコもいないのだ。しかしヒバゴンならいるかもしれない。オレのアパートの隣のおばさんがどうもクサい。
そしてオレは暴飲暴食で胃を満たし虚無と背徳で心を満たし、顔に死神のような笑みを浮かべてセックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」を口ずさむのだ。
♪あぁ〜い わぁなぁびぃいぃ〜〜いぇい あぁなぁきぃいぃ〜〜〜
そう、なぜならオレは命知らずの暴飲暴食男、地獄からやってきたストマック・キング、食卓の無政府主義者だからなのである。
ロックンロール。