- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2004/10/22
- メディア: DVD
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ホラー好き以外の方に説明すると、ロメロのゾンビ3部作はそれぞれ『NIGHT OF THE LIVING DEAD(ナイト・オブ・ザ・リビングデッド)』『DAWN OF THE DEAD(ゾンビ)』『DAY OF THE DEAD(死霊のえじき)』と云うタイトルが付けられ、それぞれ夜、朝、昼とゾンビが地球上に次第に蔓延して行き、遂にはこの世界が死者だらけの世界になっていく様を描いている。
定説だけど、モンスター映画のモンスターというのはその時代に生きる人々の、その世相における不安の映し鏡だといわれているんだね。例えば有名なゴジラは、製作された当時の原水爆実験への恐怖を、ゴジラと云う巨大で破壊力に満ちた得体の知れない生物へと仮託してるんだ。このゾンビについても、町山氏のロメロへのインタビューを読めば判る通り、ベトナム戦争の不安、大量消費社会への批評、レーガノミックスへの警鐘、といった具合にそれぞれその存在には意味が込められている。(新作『LAND〜』は9.11以降のアメリカ社会を暗喩したものらしい)
あと「生ける死人」とは、「死人も同然な生き方、死人の様に無批判に生きる大衆」なんじゃないかな。これら蒙昧な有象無象に自己存在を剥奪される恐怖、これがゾンビシリーズの描いているものかもしれない。それと欧米のキリスト教史観から言えば、死者の蘇りが約束され、新たな天国がやってくるという教義に反して、死者の蘇りが地獄を生んでしまう、という逆説的な世界を描いたといってもいい。つまり反キリスト教的な恐怖でもあるのだ。だから欧米人の感じる恐怖はオレ等東洋人には無い恐怖でもあるんだ。さらに人類を頂点とする生物のヒエラルキーが崩れ、食物連鎖の下位に人類が貶められる、という恐怖もここにあるだろう。どちらにしろゾンビというモンスターの、それまでのものと違うところは人類とかいうものの文化、文明それ自体が孕む恐怖だと思う。
さて、ややこしいことはここまでにして、『死霊のえじき《完全版》』だ。実は『死霊のえじき』は既にDVD発売がされていたんだが、(『死霊のえじき《最終版》』)これはオレのようなマニアには大不評だったんですよ。何かって云うと、劇場公開時の残虐シーンが殆どカットされていたんですね。めくるめく血みどろの肉体破壊シーンをもう一度観たくてDVD買ったオレ等の様なホラーマニアにはこのDVDは大ブーイングものの何ものでも無かったですよ。鮮血が無い!殺戮が無い!臓物が無い!それでいったい何がゾンビだっちゅうねん!(ゼイゼイ…)この辺でお分かりになったように、ゾンビマニアには実は文明批評とかはどうでもよかった!血と死と殺戮のカタルシスが観たい!そっちがメインだったのですね!単に血に飢えたケダモノだったんですね!もったいぶってスイマセン!そしてこの《完全版》でもって、やっとその血みどろ残虐シーンが復活し、ファンには大喝采を持って迎えられたというわけです。そんな訳で、今オレのところには『死霊のえじき』のDVDが2本あるということですね。げに恐ろしきはマニア魂…。
というかホラー映画というのはそれ自体が反社会的であったりインモラルである事がまず面白いということなんだろうな。
ところで、前からずっと思ってたんですが、ゾンビって死体なんだから、腐ってドロドロになって無くなるまでどこかに隠れてやり過ごす訳にはいかないのでしょうか。