スタローン主演アクション『大脱出2』は荒唐無稽な謎映画だったッ?!

■大脱出2 (監督:スティーヴン・C・ミラー 2018年中国/アメリカ映画)

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たまに「乱暴な映画」が観たくなるのである。これは「登場人物皆乱暴の限りを尽くすバイオレンス映画」であると同時に、「とりあえず勢いだけで作られた作りが乱暴な映画」のことでもある。平易な言葉を使うと「こまけぇこたぁいいんだよっ!」という映画のことである。「こまけぇこたぁいいんだよっ!」という映画をこちらも「こまけぇこたぁいいんだよっ!」と思いつつ観る。これもまた映画を観る醍醐味の一つなのである。

そんな「乱暴な映画」な気分だったオレの前に登場したのが『大脱出2』である。そう、スティーブ・マックイーンの主演した……いやそれは『大脱走』。これはシルベスター・スタローンアーノルド・シュワルツェネッガーが共演した2013年のアクション映画『大脱出』の続編なのだ。1作目は「自ら刑務所に収監され脱獄することによりセキュリティの盲点を指摘するセキュリティ・コンサルタント」が主人公となる作品だった。映画の出来はスタローンとシュワが老体に鞭打ってるなあ、というのがまず感想に挙がっちゃう作品ではあった。

そして続編である。今作はスタローン続投なるもシュワは出演せず、代わりに今をときめくデイブ・バウティスタが登場する。おおバウティスタ。こないだ観た『イップ・マン外伝 マスターZ 』にも出演していい具合に乱暴極まりないキャラを演じていたな。とはいえスタローン主演の割にはなんの話題も聞かないし誰も話題にしない、なんなのこれ?と思ったがそこでピピンと来た。これはきっと「乱暴な映画」案件なんだな、と。

物語は前作の後ハイレベル警備会社で新人育成に努めるブレスリン(スタローン)が主役となる…...のだが実は前半スタローンは殆ど活躍せず、新人たちの活躍が描かれることになる。そしてその中の一人であるシュー(ホァン・シャオミン)がハイテク産業絡みの友人を護衛中に両名とも拉致監禁されるという事件が起こるのだ。シューの監禁された場所、それは最新科学技術で管理された難攻不落の監獄「ハデス」であった。そしてシューは内側から、ブレスリンは外から、「ハデス」脱獄の為の攻略を練り始めるのだ。

キャストはスタローン、デイブ・バウティスタの他に前作からカーティス・“50セント”・ジャクソンが続投、さらに『イップ・マン葉問』のホァン・シャオミン、『シン・シティ』のジェイミー・キングが参加している。監督は『マローダーズ 襲撃者』『キング・ホステージ』『ファースト・キル』のスティーブン・C・ミラー(あんまりよく知らない)。

という作品なんだが、観ている途中からふつふつと沸いた感想はなにしろ「荒唐無稽」。設定も舞台もシナリオも、どれもこれもリアリティ皆無な上に「なんでこうなんなきゃいけないの?」という疑問符だらけの謎展開なんである。

この作品のおかしなところは枚挙に暇が無い。そもそもこんな最先端過ぎる巨大な監獄を、国家ではなくどこかの国際的大企業が、おそらく莫大な建築費で、しかも秘密裏に建造し運営している意味が全く分からない。もはや映画『バイオハザードIV アフターライフ』の「渋谷駅前スクランブル交差点の地下にあるアンブレラ秘密基地」並みのムチャ振りである。収監されているのは単なる犯罪者ではなく企業の利益に反する者たちということらしく、監獄に幽閉して尋問しているそうなんだが、なんか他にやりようがあんだろ?と思えてしまう。

そしてそれら囚人たちを闘技場で日々格闘させている意味がまるで判らない。同時に、囚人たちがなぜ揃いも揃ってガチムチの血に飢えたような連中ばかりなのか分からない。ハイテク技術者とかどこぞの重役とかがいるわけなんだから、ひ弱なヤツや腹の出たオッサンが多くても不思議じゃない筈じゃないか。それと戦闘に勝つと「和みルーム」でお遊びできるというシステムになってて、そこでお絵かきとかできるんだが、えーっとお絵かきして楽しいですか?

脱獄の方策として料理人を抱きこんで食事に脱獄アイテムを入れさせるとかいうことをやっていたが、ここまでハイテクの施設で給食システムだけは随分とアナログだよなあ?と思ってしまう。後半は案の定囚人たちの暴動となるわけなんだが、「誘拐して殺さず監禁することに意味がある(ということになっているらしい)」施設でこれら囚人たちをバリバリぶっ殺しはじめるという一貫性のなさがこれまたよく分からない。そしてこの物語における真の敵の、その動機というのがあまりにケツの穴が小さすぎて、それでここまでやってしまう意味というのが、やはりひたすら分からない。

そもそも「脱獄絶対不可能の監獄からの脱出」を描いた作品の続編ともなると、そりゃもう前作を上回る「ウルトラスペシャル超脱獄不可能!」にしなきゃならず、そういった部分でインフレーション起こしたばかりに「ありえない」設定になっちゃったのが本作なのだろう。とはいえ、これら「ちょっと考えると分かりそうなもん」である膨大なちぐはぐさは、「こまけぇこたぁいいんだよっ!」と納得づくで観るならば、ある意味少年マンガ的な馬鹿馬鹿しさととりあえずな見た目の賑やかさだけで楽しめないことも無いのである。あとさあ、実のところ前作もスタローン&シュワ出演以外の部分はたいがいな作品ではあったので、その続編にしちゃあ頑張ってたんじゃない?

とりあえずスタローンは出てるし(ゾウガメ並みに動かないけど)、デイブ・バウティスタはいかついし、ホァン・シャオミンの格闘技は強いし楽しいし(しかしなんで詠春拳やってんだ?)、「我らレギオン!」とか言ってる三人組の白塗り野郎どもは笑わせてくれるし、珍作怪作ではあるにせよ、退屈でたまらない作品というわけではないのだ。まあスタローンとバウティスタが出てなけりゃあ普通にビデオスルーになっちゃうであろうマイルドなB級スメルはこってりと漂っているけどな!とりあえず「乱暴な映画」を観たいという当初の予定は充分満たされたからオレは満足だったよ!


映画『大脱出2』予告編

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