GALACTICA/ギャラクティカ 【転:season 3】観た

■故郷から10000光年

米SF・TVドラマシリーズ『ギャラクティカ』のシーズン3、やっと全部観ました。本編だけでDVD10枚、15時間分になりましたよ。

ギャラクティカ』のあらすじはこんな感じ:遙かな未来、12のコロニーに居住していた数十億の人類は機械生命体サイロンの叛乱によりその殆どが命を奪われた。生き残った5万人あまりの人類はスペースシップに乗り伝説に残る約束の地、地球を探す遙かな旅に出る。しかしサイロンの追撃は止まず、その旅は過酷を極めた…というもの。

シーズン3では旅の途中で発見された居住可能な惑星、ニュー・カプリカに移住した人類が突然現れたサイロンにより占領されるところから始まるんですな。サイロンはそこで秘密警察による逮捕、監禁、拷問、処刑を繰り返し、弾圧された人類はレジスタンスを組織、サイロンに対してスパイ活動、破壊工作、そして遂には自爆テロまで遂行します。

…ああもうホントに暗い…。このシーズン3は回を追う毎に暗さを増し、観終わる度に「ドヨーン…」となるというおそろしくキッツい物語展開が続きます。なにしろ自爆テロっすよ。挙げ句の果てに密告やら裏切り者の粛清やら…。このドラマが放送当時のアメリカとイラクの関係を揶揄したものであろうことは伺えますが、このドラマを観たアメリカ人にとっては、自らが自爆テロをするまでに追い詰められる、というシチュエーションはかなりショッキングだったんじゃないでしょうか。そういった意味ではドラマとしての深みは相当のものですが、しかしその反面、SFドラマとしての自由さが奪われてしまっているような気はします。

サイロン、そして"コボルの神"

もう一つは人間と全く変わらない形をした"人間型サイロン"と人間との葛藤というテーマ。サイロンにとってもいわゆる"上位機種"となる彼らは、サイロン兵団の中枢となりそれを指揮していますが、どうもこのサイロンって、最高権力者が不明なんですね。さらにあまりに人間の心を持ちすぎてサイロン側を裏切ったり、自らのアイデンティティに疑問を持ち迷走したりしているんです。さらに彼らにも知らされていない"ファースト・ファイブ"と呼ばれる5種類の人間型サイロンの存在に怯えていたりします。どうもサイロンというのは、単に人類殲滅だけが目的ではないような描かれ方をしているんです。

これに人間・サイロンのハイブリッド・ベイビーが絡んだり、"伝説"とか"コボルの神"とか妙に宗教掛かったお話が語られたり、憎まれ役の"博士"の周りにいつも人間型サイロン女の幻影がまとわりついたりと、謎が多い展開で引っ張るんですが、なんだかもったいぶってるだけにしか見えなくてそれほど真相に興味湧かないんだよなあ。宗教の問題については、アメリカはキリスト教国なので避けて通れない要素なんだとは思うけれども、個人的にはこういったSFドラマに宗教というのはなんだかそぐわない気がするんだけれど。

■戦時下における民主主義

ただ、このドラマの根幹になっているテーマって、《戦時下における民主主義とは何か》ってことなんだと思うんですよね。戦時下において民主主義はどこまで可能であるか、どこまで守らなければならないのか。アメリカなんていつでもよその国と戦時中みたいな国ですから、彼らにとっては身近なテーマなのかもしれません。オレなんかは単純ですから、「危機的な戦時体制なんだから軍事統制で十分なんじゃね。どうせ戦争SFだし」なんて思ったりしますが、このドラマは決してそういう単純さを善しとしない。だからどんなキッツイ状況でも大統領選挙はするし、行政と軍部は衝突しつつも言いたいことはきちんと言い合ってるし、裁判もきちんと行われる。同胞を皆殺しにされ常に攻撃を受け逃亡し続けるという状況なのに、おそろしく健全な民主主義がここでは描かれているんです。

しかし他方、"人間ではない"人間型サイロンには残酷な拷問も処刑もあたりまえなんです。彼らは人間のように話し人間のように考え人間のように物事を感じますが、にも拘らず"人間ではない"から、当然人としては扱われません。ここでは"人間ではない"と決め付けられた存在に対して人はどこまで熾烈になれるのか、ということを描こうとしているのではないかと思います。この辺もイラク戦争の反省や影響が出ているんでしょう。つまりドメスティックな部分では民主主義の理想を謳いながらその外では無法を常識とする矛盾、『ギャラクティカ』の描きたかったものは案外そんなところなのかもしれません。

■そしてシーズン4へ…

ただどうも全体的に盛り込もうとしている要素がきちんと咀嚼されていないような気がします。特にサイロンの描かれ方がどっち付かずなんですよね。こんな「こいつらホントはいったい何がやりたいの?」という敵役も珍しいよなあ。彼らのその本当の目的は最後の最後になって語られるのでしょう。そして次回はいよいよ最終章であるシーズン4へと続くというわけです。

■GALACTICA/ギャラクティカ 【転:season 3】DVD-BOX 1

■GALACTICA/ギャラクティカ 【転:season 3】DVD-BOX 2