『イコライザー』のアントワーン・フークア監督によるSFアクション映画『インフィニット 無限の記憶』

インフィニット 無限の記憶 (監督:アントワーン・フークア 2021年アメリカ映画)

アントワーン・フークア監督と言えば『エンド・オブ・ホワイトハウス』(13)であり『ザ・シューター/極大射程』(06)であり、人によっては『トレーニング・デイ』(01)であったり『マグニフィセント・セブン』(16)であったりもするだろうが、しかし誰もが共通認識として挙げるとすればそれは『イコライザー』(14)であり続編『イコライザー2』(18)ということになるだろうか。要するに「手堅いアクションを撮るイケてる監督」ということでよろしいだろうか。

そんなアントワーン・フークアがSFアクション映画を撮ったのだという。ほう。似つかわしくないような、それはそれでありなのかも、と思えてしまうような。タイトルは『インフィニット 無限の記憶』、フークア監督作品なら劇場公開があったらチェックしていたはずだけどなあ?と思って調べたら、2020年公開予定だったものがコロナ禍により伸び伸びになり、結局サブスク配信に変更されたということなのらしい。最近よくある事ではあるが実に勿体ない。

主演は『トランスフォーマー』シリーズ、『アンチャーテッド』(22)のマーク・”軍曹顔”・ウォールバーグ、『ドクター・ストレンジ』シリーズのキウェテル・イジョフォー、『キングスマン』シリーズのソフィー・クックソン。原作はD・エリック・マイクランズの 『The Reincarnationist Papers』。

《物語》身に覚えのない記憶と不安定な精神状態に10代の頃から悩まされてきたエヴァンは、定職に就くこともできず薬物に頼る日々を送っていた。そんな彼の前に謎の組織の人間が現れ、衝撃的な事実を告げる。世界には記憶を保持したまま輪廻転生を繰り返す人間「インフィニット」が存在し、エヴァンもその1人だというのだ。戸惑いながらも事実を受け入れたエヴァンは、輪廻転生を断ち切るために人類滅亡を企む「ニヒリスト」たちを阻止するべく立ち上がる。

インフィニット 無限の記憶 : 作品情報 - 映画.com

物語はザックリ言うなら「輪廻転生を繰り返し過去の記憶を持つ「インフィニット」が二つの勢力の分かれて歴史を超えた抗争を繰り広げる」お話である。なぜ抗争を繰り広げるのかと言うと片方は「もう輪廻転生イヤ!だから人類ごと滅亡させてお終いにする!」という勢力「ニヒリスト」であり、もう片方がそれを阻止しようとする勢力「ビリーバー」だということだ。二つの勢力はそれぞれに秘密結社を結成し、なにやら怪しげな科学装置を駆使しながら歴史の影で争い合っているのである。

主人公エヴァン(マーク・ウォールバーグ)もその「インフィニット」の一人なのだが、前世の記憶を蘇らすことができず、それにより自分が何でどんな能力を持っているのかも最初は分かっていない。いわゆる「記憶喪失の主人公」の別パターンとも言える。その彼に「ビリーバー」が接触し、「過去の記憶を蘇らせて「ニヒリスト」との戦いに参戦してくれ」と言ってくるのである。

これなんかに似ているなあ、と思ったらまず一つはアンジェリーナ・ジョリー主演の『ウォンテッド』(08)なんだよね。これは「歴史の影で暗躍する超絶的な能力を持った殺し屋集団の抗争」を描いたものだ。もう一つはみんな大好き『マトリックス』(99)。これは「自分の真実の姿を忘れていた主人公が目覚めて機械生命との抗争に終止符を打つ」といったものだ。共通するのは「今まで自分がフツーの人間だと思ってたけど実はスゲエ能力を持つスゲエ組織の一員だということに気付き、世界を救う立役者として活躍しちゃうんだもんね」ということであり、この『インフィニット 無限の記憶』も同行異曲の作品だという事ができる。

解題はこれくらいにしてさて映画の内容はどうだったかと言うと、上記『ウォンテッド』や『マトリックス』の如く、超絶的な身体能力を持った者同士が重力無視の異次元戦法で撃ち合いドツキ合い、奇想天外でド派手なCGIが画面に躍るという実に楽しい出来になっている。ただしシナリオが練り込み不足で、観ていて安易な展開が目立ったり、壮大なテーマの割には重厚感に欠けていたりと、残念な部分が散見するのも確かだ。

そういった部分で、アントワーン・フークアにはSFテーマは少々向いていなかったかな、という気がしないでもない作品だった。なにより、オレはマーク・ウォールバーグは好きな俳優なんだが、この作品に関してはミスキャストだったんじゃないかと思うのだ。とはいえ、なにしろアクションに関してはフークア印のタフでスピーディーなものが観られるので(クライマックスの軍用機とのチェイスのとんでもないアクションには笑った)、気軽な感じで鑑賞すれば悪くない作品だと思えるじゃないかな。