■ハクソー・リッジ (監督:メル・ギブソン 2016年アメリカ・オーストラリア映画)
「第2次世界大戦の沖縄戦で75人の命を救った米軍衛生兵デズモンド・ドスの実話」という触れ込みの映画『ハクソー・リッジ』観たんですけどね、いやあこれがメッチャ面白かったんですわ、なんといっても連合軍vs帝国日本軍の血で血を洗う熾烈極まる戦闘シーンがね。あれは凄かったなあ、やっぱり年に1回は戦争映画作って最新のVFXがどれだけ人が殺し合うシーンを迫真の描写で描くことが出来るかを確かめるべきですね。あと今年は『ダンケルク』がありますね、でもあれノーラン映画だからちょっとどうしようかなあとは思ってるんですけどね。
あ、本当はこの映画、一人の衛生兵の鬼のような尽力の様を描くヒューマン・ドラマなんでしたっけかね、でもまあ、主人公の大活躍が見られるのは139分もありやがる長いお話の後半3分の1ぐらいなんですよ、なにしろこいつの出番は負傷兵がいっぱい出ないと無いわけですから、その為に中盤ガンガンに飛ばして殺戮シーンが描かれるわけなんですけどね、これがあんまり凄まじすぎて、衛生兵が仲間助け出し始めてやっと「あ、こっちが本題だったか」と気付いたぐらいでね。いやもうここまでのとことん肉体破壊を極めた阿鼻叫喚の地獄な戦場描写がとにかくナイス過ぎてヘラヘラ笑いながら観てしまいましたよ。
でもね、主人公が「ボクは人を殺しません(キリッ)」とかやってる前半が、なにしろもうつまんないんですよ、この主人公のドス君というのをアンドリュー・ガーフィールドが演じてるんですが、最初「この方、ちょっと頭の足りない方なのかな?」と思っちゃったぐらいなんですよ。なにしろまあ、不殺の信念というのが強くて、これはキリスト教絡みでもあるんですが、兎に角頑固で融通効かないんですよ、まあそれが信念ってものなんでしょうけどね、頑固過ぎて見ていてイライラしてくるんですよ。
で、人殺さないのに軍隊入っちゃって、周囲も上層部も大弱りですよ。「最初に人殺さないって言ったし自分は衛生兵で役に立ちたい!」みたいなことも言ってましたが、軍隊入ってそれじゃあ通用しませんよ、でもなにしろドス君は銃を持とうとしない、前例だって無いしそりゃあみんな困っちゃうし怒っちゃいますよ。まあ結局は周囲が折れてドス君の希望通りになるんですが、結果オーライとはいえオレが上官だったらこんな我ばっかり通そうとする部下なんて持ちたくないですよ。規律や士気に影響するじゃないですか。
しかし落ち着いて考えてみるなら、専任衛生兵というシステムのない組織にそのシステムを認めさせたドス君というのも思い込みが激しすぎるとはいえ熱情の人でもあるし、また、そういった例外を排除することなく組織の中に組み入れた当時の米軍の柔軟さというのもある意味画期的ではあるなあとは思わされましたね。軍隊なんてヒエラルキーの強固さで言えば最たるもんじゃないですか。それが一兵卒でしかないドス君の要求を最終的に受け入れた訳ですが、そこに至る法の在り方に対する確固たる公明性は、やはりアメリカならではなのかなあと思いましたよ。
とはいえ、やっぱりこの映画の本質はグヂャドロ殺戮シーンにある、とオレは確信してますけどね。いやもう凄惨極まりない戦闘シーンの連続で辺り一面死体だらけなんですよ。オレ、監督のメルさんもホントはこっちを描きたかったんじゃないないか、と勘繰ってるんですけどね、メルさんの前作に『アポカリプト』ってあったじゃないですか、古代マヤ文明の生贄ぶっ殺しまくり映画ね、あれも屍累々でしたが、そういった部分は全く一緒なんですよ、メルさんああいうの好きで好きで堪んないんじゃないかと思いますね、今作も「とりあえずヒューマニズム謳っとけば集客見積もれるし賞も取れそうだし、そこにかこつけて兎に角ぶっ殺しまくる映画作っちゃれや!」と怪気炎上げてたんじゃないですかね、オレはメルさんってそういう人なんじゃないかと思いますけどね。
http://www.youtube.com/watch?v=nQOeAo02v-8:movie:W620
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