プロデューサーズ (監督:スーザン・ストローマン 2005年アメリカ作品)

舞台は1959年のニューヨーク。落ち目のプロデューサーであるマックス(ネイサン・レイン?)は、嫌がる小心者の会計士レオ(マシュー・ブロデリック)を大コケ間違いなしのミュージカルに引き込む。コケればコケる程、出資者からのお金を丸ごと頂け、儲かることに気付いたからだ。かくして大コケ間違いなしの史上最低のミュージカル『ヒットラーの春』製作が開始されるが・・・。

いやあ、素直に楽しかったッス。最初メル・ブルックスが監督だと思っていて、んー、また泥臭いスラップスティック見せられんかなあと危惧していたんですが、実際は舞台のほうの演出も手掛けていたスーザン・ストローマンという方の監督だったんですね。なるほど。ミュージカルとかブロードウエイとかには興味が無いほうなんですが、予告編があまりにも楽しそうだったのと、何よりユマ・サーマン姐さんが出演なさっている、ということで観ようと思ったんですが正解でありました。ヨカッタヨカッタ。


サイテーミュージカル『春の日のヒトラー』が上演されるまでの経緯は、トントントン!と小気味いいテンポで演じられ編集されているんだよね。ナチ狂いの脚本家、ホモホモ演出家集団、恋狂いのスポンサーの婆さまたち、とおかしなキャラがどんどん現れて観ている方もどんどん引き込まれてゆく、この唄と映像と演出のマジックが心地良いのよ。このいい感じの楽しさを持続させながら「どんなふうにサイテーなんだろう?」という期待がどんどん膨らんで行き、ついにその舞台が披露された時の映像的高揚感って言ったらないね。そっからあとが失速しちゃうのが勿体無いんだけれども、『春の日のヒトラー』という奇妙奇天烈かつどうにも楽しいレビューを体験できた時の感動で、この映画の楽しさは既に結実してるんだろうね。


新しさは無いんだろうけど、逆に新鮮に感じるのは何でなんだろうなあ。結局この物語は愛だの苦悩だの人生だのと面倒臭い事はうっちゃって、ひたすら下世話に「有名になりたい!」「世間を騙して金を手に入れたい!」というストレートな欲望がまずありきで、なにしろテーマがそんなコテコテな欲望にあるから、内容は下品なんだけれど、そのへんの判りやすさが物語を親しみやすいものにしているんだろうね。この映画を一言で表すなら、『コテコテ』だ!と言い切ってもいいと思うよ。で、なにしろ『コテコテ』なもんだから全体的にくどいのよ。そのくどさが笑いを生むんだけれど、駄目な人には駄目だろうね。オレは自他共に認める”くどさ120%!”の人間なんで、もう諸手を挙げて大歓迎だし、親近感さえ生まれたけどね。


映画としてみるとモロ舞台な正面据え置きのカメラアングルとか、まあ言うことはいろいろあるのかもしれないけれど、そんな古いミュージカル映画みたいな雰囲気もちょっとノスタルジックな感じがして、これはこれでいいんじゃないかな。大ヒットしたミュージカルを舞台で見ているような気分で観ればいいんだと思うよ。


それにしてもなにしろユマ・サーマン姐さんですな!LOVEですよユマ・サーマン姐さん!『バロン』出演のあたりから「世の中にはなんと美しい方がいらっしゃるのだろう」と心ときめかせていたオレではありますが、今回も見惚れておりましたよ!その美しい肢体で唄と踊りを披露された日にゃあ、おぢさんノックアウトですな!(…。)『好きと言えなくて』とか『恋に落ちたら…』とか割と地味目な出演作品もDVDで持っておりますから!駄目映画の『アベンジャーズ』だってオレは好きですよ!この映画ではスウェーデン出身の脳みそ空っぽ金髪娘を演じておりましたが、ユマ・サーマン姐さんも実際にスウェーデン出身であらせられるとか!くうう!いいですな!女は金髪でスウェーデン出身に限りますよ!オーキードーキー!!(意味不明)


この映画の製作・脚本のメル・ブルックスは、作詞作曲も手掛けているんですね。舞台の『プロデューサーズ』はトニー賞史上最多の12部門受賞、メル・ブルックスアカデミー賞トニー賞エミー賞グラミー賞の4賞全てを制覇したショウビズ界では7人しかいないという快挙を成し遂げているらしい。おまけに『エレファントマン』『ザ・フライ』の製作総指揮を務めた怪奇趣味も併せ持つ趣味の良さ。単にベタベタなコメディばっかり作っているオッサンかと思っていたら全く違っていて、認識を改めた映画でもありました。