彼は私のヒーローだから〜サルマーン・カーン製作作品『HERO』

■HERO (監督:ニキル・アードヴァーニー 2015年インド映画)


ギャングを父に持つチンピラが、警察官を父に持つ娘を誘拐するが、二人には次第に恋が芽生え…という2015年公開のインド映画です。主演は若手新人であるスーラジ・パンチョーリーとアーティヤー・シェッティー。さらにスーラジ・パンチョーリーの実の父アーディティヤー・パンチョーリーが劇中でも父親役で出演しているんですな。監督は『Kal Ho Naa Ho』でデビューしたニキル・アードヴァーニー。そして製作をあのサルマーン・カーンが務めているんですよ。

《物語》ムンバイに住むスーラジ(スーラジ)は滅法ケンカに強いチンピラだ。その日も彼はあるパーティーで娘にからんでいた男を叩きのめす。助けられた娘ラーダー(アーティヤー)はスーラジに興味を示し、スーラジもまたまんざらではない。そんなある日ギャングのボスであり現在獄中にいる彼の父スーリヤカント(アーディティヤー)が、ラーダーの誘拐を命令する。実はラーダーは警視総監の娘であり、誘拐することでスーリヤカントは自らの裁判を有利に持っていこうとしていたのだ。スーラジは警察官に成りすまし、保護の目的だと偽ってラーダーを拉致する。こうして一行は山荘にこもるが、次第にスーラジとラーダーの間に恋が芽生える。だが、スーラジがギャングだということが遂にラーダーに分かってしまうのだ。

とまあこんなお話なのですが、とりあえずまず最初に言いたい。ヒロイン演じるアーティヤー・シェッティーさん、美人は美人なんだけど、顔が派手。最初っからイケイケギャルの役で出てくるのですが、もう見るからに肉食系。なーんてんでしょう、貌のパーツがいちいちデカイ。目元こそソーナム・カプールに似て可愛らしいんですが(それでもデカイ)、アンジェリーナ・ジョリー並みかそれ以上のエラとタラコ唇、さらにランヴィール・シン並みのデカイ鼻を兼ね備えているんですよ。常盤貴子の顔パーツを全て2倍にするとアーティヤーさんになる、という言い方もできるかもしれません。ですからアーティヤーさんが画面に出てくるたびに「なんかスゲエ…」と恐れ戦いてしまい、なんかもう蛇に魅入られた蛙のような気分になってしまうんですね。いやーもしもオレの彼女がアーティヤーさんだったらオレ毎日おびえて暮らすだろうなあ、と思いましたが、万に一つもありえないことだということに気付きちょっとほっとしました。

どちらにしろアーティヤーさんの派手な顔が気になって気になってお話のほうはまるで集中できなかったのですが、とりあえずざっと感想を。物語の出だしはマッチョな色男がスーパーバイオレンスを繰り出し、肉食系の美女がそれに見惚れる、そして二人に愛の炎が!!…という、まあありがちなものですが、こういう展開は結構好きです。ところがそこからがよくない。スーラジはアーティヤーさんのためにもう悪いことは止めて真人間として更生する!とか誓っちゃうんですね。アーティヤーさんはアーティヤーさんで、親に交際を認められず、パリあたりに飛ばされて一人メソメソしてるんです。この辺は二人のつらい気持ちを切なく切なく描写してゆくんですが、バイオレンスアクションだと思って身を乗り出して観てたのに、なんだか急にヒロイン目線の大甘ロマンス大会になっちゃって拍子抜けするんです。タイトルは「ヒーロー」ですが、これは英雄的な大活躍を見せる男の物語、というよりも「私のヒーロー(はあと)」ってな意味合いの「ヒーロー」だったんですね。でもまあ、こういうのって、製作やってるサルマーンさんが好きそうな展開ではありますよねえ。

結局これ、腰の軽い二枚目俳優からマッチョ男に転じて大ブレイクしながら、いろいろ反省しなきゃならない事件が起こり、そこから更生してまたもやマッチョに返り咲きたい、というサルマーンさんの心の叫びがそのまま映画になった物語じゃないのか!?とすら勘ぐってしまいました。なんだか人に歴史ありサルマーンさんの脛に傷あり、って感じですね。そんなサルマーンさんプロデュースの作品ではありますが、どっかにカメオ出演が!?と期待させますが、いや実はとんでもない所で出てきてとんでもない事をやってます!やっぱサルマーン兄貴、只者じゃねえ…。