■Ready (監督:アニース・バーズミー 2011年インド映画)
いよいよ7月26日に公開が迫った『ダバング 大胆不敵』でも主役を務めたサルマン・カーンが、『ダバング』公開の翌年、その旋風の余勢をかって出演したラブコメディです。
主人公の名はプレム(サルマン・カーン)。彼は親戚に、顏も知らないプージャという名の女性との結婚を勧められますが乗り気ではありません。嫌々ながらプージャを空港まで迎えに行き、家族の待つ家に連れ帰りますが、実は彼女はプージャに成り済ましたサンジャナ(アシン)という女性だったのです。一方、ライバル同志であるサンジャナの母方の叔父、アマンとスーラジは、サンジャナを探していました。彼らはサンジャナの家が持つ富を狙い、それぞれの義理の兄弟と結婚させようとしていましたが、サンジャナはガラの悪い彼らを嫌い、逃げ出してきたというわけなんです。プレムはサンジャナの正体に気づきますが、その頃既に彼女の事を愛していました。しかしそんな二人の前にスーラジの一味が現れ、彼女を拉致します。いざ戦いか!?と思ったらさにあらず、プレムはサンジャナにこの騒動をきっと丸く収める、と約束するんです。
この物語、なにしろサルマン・カーンが主演なものですから、結婚を嫌がる女性を無理矢理拉致する悪漢どもを相手に『ダバング』もかくや、といった大立ち回りを演じるのか!?と思ったらそうじゃないんです。アクションシーンも殴り合いもあるけれども、決して力で事態を収める、といったお話じゃないんですね。じゃあどうするのかというと、サルマン・カーン演じる主人公が、巧言令色を巧みに操り、腰の軽さと頭の回転の速さで次々にトラブルを乗り越えてゆく、といったお話になっているんですよ。ある意味あのムキムキのサルマン・カーンが、口先三寸でペラペラまくしたてながら事を収めちゃう、その落差を楽しませる作品ということも出来るかもしれません。物語後半ではサンジャナをさらったアマンとスーラジ両家を嘘八百並べて翻弄し、思うがままに手玉を取っちゃう、という展開を見せたりするんです。
ただし、こういった具合に言葉に言葉を重ねたり、相手の言い回しを変えて答えたり、もってまわった言い方で相手を煙に巻いたりと、言葉の応酬でギャグに持っていくというパターンが非常に多いため、英語力の足りないオレの如き者には相当量の言葉のやり取りについていけてない部分がありました…。いつもなら多少言葉が分からなくとも、その個々の状況やその時のリアクションで理解ができたりもするんですが、この作品は言葉頼みで物語が進んでゆくため、英語字幕をきちんと理解できる人向けかもしれません。また、この作品のレビューを幾つか読みましたが、中盤ダレるという評価があるのも、書割を前に出演者たちがずっと喋くりまくり、カメラがそれを交互に映し出すだけなので変化に乏しいということもあるんじゃないかと思いますね。
とはいえ、サルマン・カーンは脂が乗りきってるし、ヒロインのアシンは小ざっぱりした清潔さが魅力的だし、決して暴力だけで物事を解決しようとせず、きちんと道理を通して事を収めようとするシナリオにはインテリジェンスを感じました。また、この作品はムンバイのみならずスリランカやバンコクをロケーションとして使用しており、よくあるボリウッドムービーと違う雰囲気を醸し出そうとしている部分が新鮮でした。もちろんボリウッドムービーらしい極彩色の歌と踊りも盛り込まれていて、この辺は安心の出来具合です。