バイクドドドでボーン・トゥ・ビー・キル!〜映画『ヘルライド』

■ヘルライド (監督:ラリー・ビショップ 2008年アメリカ映画)


やつらの生き方にルールはない!
必要なのは3つのB!
「バイク」「ビール」「ビッチ」だけ!
3人の標的は復讐すべき外道集団!
復讐の道は地獄への道!

という訳でクエンティン・タランティーノ製作総指揮、往年の"バイカー・フィルム"へオマージュを捧げたというグラインドハウス・ムービー『ヘルライド』である。32年前に殺された女の復讐とバイカー同士の抗争を絡め、血と硝煙、ガソリンと砂埃、男の汗と1ヶ月以上風呂に入ってなさそうな垢の匂いがムンムンしてくるどころか鼻を突いて堪らないといったアクション映画なんである。
この『ヘルライド』、やたら登場人物の名前があれこれ飛び交う上に、ちょっとヒネリでも入れないと持たないと判断したのか無意味に時系列をあれこれいじくっているお陰で、細かい話が見えにくい。さらに裏切りやらなにやらがあって敵と味方の区別が最初判別付かなかったりする。しかし実の所細かい話なんぞどうでもよくて、バイクにまたがり疾走し、復讐と怨念の血で血を洗う抗争に体を張る男の美学をただただ堪能することができればそれでいいという作りの映画になっている。
映画の流れはこの「バイクでドドドと疾走する!」「とりあえずどっきゅんばっこんブチ殺し合う!」あと「オチチゆさゆさオケツへこへこさせたハクいチャンネーとウハウハする!」が何度も繰り返されることによって成立している。とりあえずアウトローの記号を並べてそれに浸ることがこの映画の目的なのである。ボーン・トゥ・ビー・ワイルドだど、なのである。だから「なんでこんなに沢山移動しなきゃならないの?」とか「こいつら何やって食ってんの?」とか、当然のことだが「ケーサツはいないのケーサツは!?」なんて言うのは野暮の極みなんである。
ただどうしても、基本がバイカー・フィルムへのオマージュということからか、そういった記号を並べることで完結してしまい、メリハリや緩急に乏しく、アクションもまるで盛り上がらない映画になってしまっていることは否めない。タランティーノ印の俳優マイケル・マドセン、監督・脚本・製作・主演の4役をこなすラリー・ビショップ、『キル・ビル』のデイヴィッド・キャラディン、さらには『イージー・ライダー』のデニス・ホッパーという配役まで揃え、タランティーノっぽいロック・ミュージックがドジャーンと鳴らされてなんとか雰囲気作りはしているけれども、結局は雰囲気で終わってしまっている。
しかしもともとがB級たれと製作された映画であり、あんまり突き詰めて完成度を求めてもお門違いの映画なのかもしれない。週末の深夜4時ぐらいにこそっとTVでやってて、何も考えずにボーッと見られ忘れてしまえるようなアクション映画。『ヘルライド』はそんな映画でいいのかもしれない。ちなみにアメリカでは2週間で打ち切り、全米がトホホだった!いう映画でもある。
あとオレの場合、「3つのB」といえば「ビール」「バカ」「ブサイク」ということができよう。・・・文句あっかよッ!!