リボルバーの女王が拳銃撃つぜ!バンバンバン!〜映画『Revolver Rani』

■Revolver Rani (監督:サイ・カビール 2014年インド映画)


インドの地方都市チャンバル、ここでは地元の有力者アールカー・シン(カンガナー・ラーナーウト)と政敵トーマル(ザキール・フセイン)がその覇権を巡り血で血で洗う抗争を繰り広げていた。そんな中、アールカーはボリウッド・スターを目指す俳優のローハン(ヴィール・ダース)と恋に落ち、二人は熱烈な関係となる。それを面白く思っていないのがアールカーの補佐役バッリー(ピユーシュ・ミシュラー)。アールカーとバッリーは対立しあい、お互いの溝は深まってゆくばかりだった。

というわけで『Revolver Rani』、タイトルから「ギャング同士の銃弾飛び交う抗争劇なのか!?」と期待して観始めたのだが、確かに銃弾こそ飛び交うものの実際はギャング同士ではなく地元の有力者同士による血腥い政治闘争の物語だった。まあ、ギャングも政治家も変わりゃあしねえぜ!といった意味でカリカチュアされた風刺劇だということなのだろう。そういった部分で肩透かしを食ったのだが、アクション主体だと勝手に思って拍子抜けしたのは自分の先入観のせいだから致し方ないとしても、どうにも煮え切らなさの残る物語であったのも確かだ。

この物語で最大の注目を集めるのは女主人公アールカー・シンを演じるカンガナー・ラーナーウトのキレッキレの演技だろう。アールカー・シンは非常に感情の起伏が激しい女として登場する。彼女は常にリボルバー拳銃を片手に持ち、激高する度にあたりかまわず銃弾を撃ちまくる。なんだか天才バカボンに出てくるおまわりさんのような危ないキャラなのだが、愛しい恋人の前では可愛い女となって猫のように甘えまくる。

この落差の激しさを面白さとして演出したかったのだろうが、実のところ単に情緒不安定でヒステリックな女性にしか見えないのだ。エキセントリックではあっても決してカリスマがあるように見えず、こんな女性がどうして地元の有力者としてやっていけているのかどうにも説得力に欠けるのだ。その為、主人公としての魅力がどうしても見いだせず、「この人なにがやりたいんだろうなあ」とちょっと引いて物語を眺めていたぐらいだ。

ただしこんなちぐはぐさを感じさせるキャラにもかかわらず、主人公を演じるカンガナー・ラーナーウトの奮闘ぶりはたっぷりと感じられた。このカンガナー・ラーナーウト、映画『Queen』で傷心の女性を清楚に演じ、さらにSFアクション『Krrish 3』では主演ヒーローとの道ならぬ恋に苦悩するカメレオン女をミステリアスに演じ、そしてこの『Revolver Rani』では闘争に燃える女と、非常に広い演技の幅を見せてくれた。結局監督の演出の拙さにより、この映画では彼女を上手く使いこなせなかったということなのだろう。

また、この『Revolver Rani』では場面が変わる度に主人公が非常に凝った衣装で現れ、この衣装を楽しむ、といった見方も出来る。後半ではタランティーノの映画『キル・ビル』とよく似たサントラを使い、この作品の監督がどんな作品を目指そうとしていたのかがうっすらと透けて見えてくるのだ。演出の拙さや力足らずな部分はあるにせよ、その物語やアクションのはっちゃけ方、奇妙に非現実的なキャラ設定から、監督はパルプフィクションやコミック的な任侠アクションを作り出そうとしていたのかもしれない。

http://www.youtube.com/watch?v=tMlQpGNZz1E:movie:W620