『ノニ祭り』①〜その歴史

『ノニ祭り』。それは大地の豊壌と人々の健康を願い、太古より日本に伝わりし厳粛なる密祭である。それは古来より宮司として「フモ家」の者が奉る事になっており、その秘儀は一子相伝の技として数百年の歴史があるとされているのである。宮司は神への供物である「ノニ」を奉納した後、神に成り代わりそれを会飲し、翌年の実り多き幸運を祈願するのである。今回、その秘密のベールに包まれていた『ノニ祭り』の一部始終を特別な許可を得、取材することに成功した。そしてそこには人と神の神聖なる対峙が存在したのである。


…って、なんで全身タイツに着替えてるんだよおぉおぉっ!!


さすがオレ、期待ならぬ『奇態を裏切らない男』。

なお撮影場所は後輩であり友人である「う」家で行われた。オレの部屋は撮影場所としてはあまりにもムゴイ事になってるからである。撮影協力も「う」にお願いした。

※なお『ノニ』とはなにかについてはオレの日記のこちらで。「ドブの味がする」「醤油が腐ったようなニオイ」「クレヨンに酢を混ぜたような油すっぱい味」…というえもいわれぬ評判に満ち満ちた楽しく愉快な健康飲料です。

『ノニ祭り』②〜第一回戦

戦いの火蓋は切られた。オレとノニとに睨み合いは既に始まって入る。サイズは小さいながら禍々しい雰囲気を漂わせているノニ。その凶悪さは耳にしているとはいえ、実際の戦力はオレにとってまだ未知数なのである。
正座してノニと向かい合うオレ。緊張が高まる。そしてうやうやしく礼。

ノニの封を切る。「…!!!」早くも異様な香りが空中に漂う!オレの体に緊張が走る。「な、なんだこれは!?」ノニの先制攻撃に怯むオレ。

臭い。こぼしたシチューを拭いた雑巾を、洗うのを忘れて流しの隅で一ヵ月位放置してしまったような臭い。100億匹位の雑菌が元気いっぱいに蠢いて得体の知れない物質を大量生産している時の臭いである。
嫌な汗がオレの額を伝う。駄目だ。負けてはいけない。ここは短期決戦だ!電光石火で瓶を掴んだオレは気合を入れて一気にノニを口に運ぶ!!


ゲロまず。


ワインに酢と醤油と三日間履いた靴下を十足位入れ、魔法使いのおばさんが森の奥深くでトローリトロリと煮込んだような味。写真では減ってないように見えるが、一口口に含んだだけでのた打ち回ってしまったのである。
かくしてオレとノニとの第一回戦目はオレの屈辱的な敗退で終わった!

『ノニ祭り』③〜第二回戦

雪辱を果たすべくオレは新たな方式で戦いを挑む事にした。そう…その名も『混ぜるな危険デスマッチ』。以前鬼太郎茶屋で買った『妖怪汁』を『ノニ』に混ぜて飲む!という命知らずの危険な戦いである!『妖怪』そして『ノニ』。これら異形の物達が化学反応を起こしたとき、そこに何が起こるか想像もつきはしない!あえて険しい道を、茨の道を選ぶのかフモ!命を粗末にするなフモ!

「…男にはな、どうしても戦わなきゃならない時っちゅうもんがあるのさ…。」遠い星を見つめながら(ってか天井だったけど)悟りきった口調で言うフモ。そこには戦い続けてきた男のみが辿り着く涅槃の境地があるのだった…。その時フモの目に映っていたのは、戦い抜いた男のみが行けると言う、伝説の地アヴァロンの情景だったに違いない…。

ホップ。

ステップ。


玉砕。


「だめだこりゃ。」

『ノニ祭り』④〜敗走

負けた。完膚なきまでに叩き潰された。情け容赦ない敗北に全ての自尊心を砕かれたフモ。
負け犬と化したフモの自我は崩壊し、精神は後退し、「うろろろろろろろろ」などと訳の判らない奇声を発しながら床を転がるフモ。「う」の愛娘ちゃんが「お部屋に変な生き物がいる」と思ったらしく、そんなフモをつんつんつつく。「う」と奥さんがそんな様子を見て、「○○ちゃん、負け犬が移るからおやめなさい」とそっと諭す。

 

「やってらんね。」なぜか”赤い羽根のストールみたいなヤツ”を身に纏って放心するフモ。

「駄目だあぁ!オレは駄目なヤツなんだあぁっ!」フモはそう叫ぶと、突然「う」家から飛び出した!「フモさん!」慌てて「う」が追いかける。「オレを…オレを探さないでくれ!」振り絞るような声でそう言って駆け出すフモの目に、涙が光っていた事を誰も知らない…。

『ノニ祭り』⑥〜夜空の向こうへ

フモが辿り着いた場所、そこは東京荒川の河川敷であった。
暮れなずむ空を見つめながら、フモの胸に去来していたものはなんだったのだろうか。
「負けた…。完敗だった…。何一つ望みさえなかった…。オレは…オレは何のためにこんな事をしているのだろう…。何のためにここにいるのだろう…。思えば、はてなを始めて一年余り。嬉しい事も悲しい事もあった。でも、調子に乗ってこんなことまでして、無様で惨めな姿を晒して、もうオレの日記を読んでくれるような人なんて誰もいなくなってしまう…。これから日記に何を書いて行けばいいんだ…。駄目だ…オレは駄目なヤツなんだ…。」暗く冷たくたゆたう水面を見つめながら、フモの意識はどこまでも落ちていった。寒風が身を叩く。「ああ…これからどうすればいいんだろう…。」

「フモさん。」そんなフモに語りかける声があった。

「君は!フモフモさん!!」そう、そこに立っていたのは、フモの分身(?)、フモフモさんだったのである。

「フモさん。結果は残念だったけど、フモさんは良くやったよ。フモさんは勇敢だった。これまでに見たどんな人より勇敢だった。ボクは、そんなフモさんから勇気を貰ったよ。きっと、これを見ているはてなの人達だって、同じ気持ちだと思うよ…。だから、いつまでもいじけてないで、立ってくれよフモさん。」

「でも…でもこれからどうすれば…。」フモは所在無さげに呟く。
「うん。お家に帰ろう。みんなが待っているよ。だから、おうちに帰ろう。」
フモはふと夜空を見上げる。少しずつ星が瞬き始めている。この星々の下に、数多の家があり、数多の家庭があり、数多の団欒があるのだろう。数多の安らぎが、数多の優しさが。
「そうだな…。帰ろうか…。お家に帰ろうか、フモフモさん。」
「うん。」こっくりと頷き、フモフモさんはフモに微笑みかける。
フモフモさん?」
「なあに?」
「…ありがとう…。」

  

お家に帰ろう。戦い敗れた者へ、しばしの休息を与える家へ。そしてまた、明日はやってくるのだろう。明日は、また新しい一日となるのだろう。そして目覚めれば、オレはまた新たなオレへと生まれ変わることが出来る。お家へ、帰ろう…。

『ノニ祭り』を終えて

謝辞。撮影場所に部屋を提供してくれて、撮影までしてくれたあげく、終了後一緒に酒飲んでくれた「う」さん、ノニでくたばったオレにあたたかいケンチン汁をご馳走してくれた「う」の優しい奥さん。オレに暖かく微笑んでくれた「う」の愛娘ちゃん。
最初にネタを提供してくれたニゲラさん、アイディアを出してくれたレンヂャさん、励ましてくれたイトちゃん、アゼッチさん、バナナ牛乳さん。会社でこのアホ企画の事を笑って聞いてくれたキリちゃん。オレにフモフモさんのことを教えてくれたコムスメことオレの心の妹M。そしていつも見てくれているはてなのみなさん。皆さんのお陰でこのアホな企画を実行することが出来ました。本当にありがとうございます。しかし、それにしても、本当に下らない企画だったなあ…。本当にオレ、アホだなあ…。ええとあの、これにめげず、また読んであげてください…。
あと、大ネタやったんで、2,3日日記休みます。ってか休ませてくれ!!それではみなさんお風邪など引かぬよう、お元気に過ごされてください!んじゃまた!