『ノニ祭り』⑥〜夜空の向こうへ

フモが辿り着いた場所、そこは東京荒川の河川敷であった。
暮れなずむ空を見つめながら、フモの胸に去来していたものはなんだったのだろうか。
「負けた…。完敗だった…。何一つ望みさえなかった…。オレは…オレは何のためにこんな事をしているのだろう…。何のためにここにいるのだろう…。思えば、はてなを始めて一年余り。嬉しい事も悲しい事もあった。でも、調子に乗ってこんなことまでして、無様で惨めな姿を晒して、もうオレの日記を読んでくれるような人なんて誰もいなくなってしまう…。これから日記に何を書いて行けばいいんだ…。駄目だ…オレは駄目なヤツなんだ…。」暗く冷たくたゆたう水面を見つめながら、フモの意識はどこまでも落ちていった。寒風が身を叩く。「ああ…これからどうすればいいんだろう…。」

「フモさん。」そんなフモに語りかける声があった。

「君は!フモフモさん!!」そう、そこに立っていたのは、フモの分身(?)、フモフモさんだったのである。

「フモさん。結果は残念だったけど、フモさんは良くやったよ。フモさんは勇敢だった。これまでに見たどんな人より勇敢だった。ボクは、そんなフモさんから勇気を貰ったよ。きっと、これを見ているはてなの人達だって、同じ気持ちだと思うよ…。だから、いつまでもいじけてないで、立ってくれよフモさん。」

「でも…でもこれからどうすれば…。」フモは所在無さげに呟く。
「うん。お家に帰ろう。みんなが待っているよ。だから、おうちに帰ろう。」
フモはふと夜空を見上げる。少しずつ星が瞬き始めている。この星々の下に、数多の家があり、数多の家庭があり、数多の団欒があるのだろう。数多の安らぎが、数多の優しさが。
「そうだな…。帰ろうか…。お家に帰ろうか、フモフモさん。」
「うん。」こっくりと頷き、フモフモさんはフモに微笑みかける。
フモフモさん?」
「なあに?」
「…ありがとう…。」

  

お家に帰ろう。戦い敗れた者へ、しばしの休息を与える家へ。そしてまた、明日はやってくるのだろう。明日は、また新しい一日となるのだろう。そして目覚めれば、オレはまた新たなオレへと生まれ変わることが出来る。お家へ、帰ろう…。